清水久典のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
不況の影響で工場の経営も苦しくなり、しかも知り合いの連帯保証人になったため、その借金までも
背負い込んだ筆者。
自分の今の状況をなかなか受け入れられないダメさかげんはきっと誰もが持っているもののように思います。
本当は自己破産しなくてはいけないのに
小さな頃のお母さんとの約束を気にして、なかなかそれに踏み出せない・・・・・
読んでいて、歯がゆさも感じながらも愛さずにはいられない朴訥とした筆者の姿がそこにはあります。
そして、がんを患って、手術を終えた後の奥さんとの車での旅。
生活が軌道にのっていた頃には、通いあわなかった夫婦としての気持ちが
この9カ月の旅の中で徐々に通 -
Posted by ブクログ
ネタバレ実際にあったことを、手記とした書かれたものです。月刊誌「新潮」に連載されたのを、多くの方の希望で1冊の本として出版されました。
亡き妻への哀惜の手記。
会社が傾き、自己破産への道をたどった夫。妻は一回りも年下。一緒に縫製の仕事をしていたが、妻の体はガンに侵されていた
手術をしたが、早ければ3カ月で再発の可能性があると言われます
夫は金策と妻の病気から逃れるように、一時期行方をくらましてしまうのです。
夫の帰りを待つ妻は、心細い思いをし、家を出た夫は全てを捨てて死のうとまで思います。
しかし、結局は妻のところに戻ります。そして、今度は妻を連れて、逃亡の日々を送ることになって行き -
Posted by ブクログ
まだこんな事を考える年齢ではないのかもしれないけど、私は時々自分の最期を考える。
誰に看取られ、誰に支えられ、どんな最期を送るのだろう。
けど、どんな最期であれ、大好きな人に見守られて逝きたいと思う。
このお話は本当のお話です。
高度成長期、縫製一筋に生きてきた私は小さな工場を経営し、苦しくも充実した日々を送っていた。
長引く不況、膨れ上がる借金。万策尽きた時、妻のガンを知る。
「これからは名前で呼んで」呟く妻、なけなしの50万円、古ぼけたワゴン。二人きりの最後の旅が始まった。
このお話の中の私は、結局妻を病院に連れて行かなかった―。
正しくは連れて行けなかった… -
Posted by ブクログ
この著者は別に作家でもない素人の人。奥さんとの旅を書くためだけに筆を取った人。
そんな人のわりに(言い方わるいけど。。。)、とってもよく書けてると思います。
ただ、たまに昔の回想シーンが突然紛れ込んでくるので、ちょっとわからなくなる時があったけど、
奥さんに対する思いがヒシヒシと伝わってきました~。
ただね、本編が始まる前に、作家の高山文彦氏の解説が載ってあって、それを先に読むようになってるのよ。
はじめの解説で大体の本筋がわかってしまうし、それを読むだけで涙が出そうになるのよね。
だから、本編を読みすすんでも、ストーリーが分かってしまってたので感動がかなったのよね。
ほんとは、涙が出る本な -
Posted by ブクログ
ネタバレ小さな縫製工場を経営していた平凡な夫(著者)と末期がんに侵された年若の妻とが、借金苦と病苦という現実から逃れるために、なけなしの現金(50万円)を持って、古いワゴン車で日本各地を逃げ回った軌跡が描かれています。この出来事は1990年代後半に起こった特殊な死体遺棄事件として当時結構話題になったらしいです。
日々衰弱していく妻に対する夫の想い、借金返済のために東奔西走する様子は、読んでいて切なくなったりしますが、それ以上に感じたのが、彼ら(特に著者)に対する焦燥感でした。
現実と正面から向き合う事を避け、ひたすらダラダラとその日を暮らしてしまう、その凡庸さ。
困難に対して立ち向かわなければな -
Posted by ブクログ
心の奥から絞り出す様な切なさと悲しさ。自らの人生の回想と妻への懺悔。借金と病からの逃避をするけれど、旅路で、あらゆるところで過去の記憶と現実と病の陰につきまとわれる、夫の苦悩。夫に置き去りにされる妻の心細さ。
奥さんの最期は幸せだったのかな。愛する人に側にいてもらいたかった望みが叶ったけれど。
漠然とだけれど、ヘッセの「幸福」という詩と重ねてしまった。
失ったものを惜しんで嘆き、
色々の目あてを持ち、あくせくとしている間は、
お前はまだ平和が何であるかを知らない。
すべての願いを諦め、
目あても欲望ももはや知らず、
幸福、幸福と言い立てなくなった時、
その時はじめて、出来事の流れがもはや