マンのレビュー一覧

  • ヴェネツィアに死す
    濃厚な死の気配。
    老作家、アッシェンバッハを魅了して止まなかった青白い顔をした美少年タッジオ。彼は、性別や生死をも超越したような存在に思えた。
  • 詐欺師フェーリクス・クルルの告白(上)
    素敵詐欺のような感じのふれこみだったので手に取ってみましたが、これは私の判断ではすれすれで詐欺でないと思います。
    でもあり。

    フェーリクスが少し尊大なところがありながらやはり魅力的だし、彼が出会っていく人たちも彼の引力がそうさせるのか、やはり素敵。
    にしても、これ一応下巻まで読んだのですが、ここで...続きを読む
  • 詐欺師フェーリクス・クルルの告白(下)
    大風呂敷を広げながら未完の自伝風小説というと即座に「トリストラム・シャンディ」を思い出す。
    あちらよりも、より物語的でより狙いが明確。
    マンは面白いものとどうにも読み進められないものとの差が激しい。
  • だまされた女/すげかえられた首
    Title: Die Betrogene, 1953. Die Vertauschten Köpfe, 1940.

    緊迫感のあるプロット、微細な情景・心理描写、トーマス・マンの小説家としての技巧の高さをうかがわせる中編二本が収められている。

    「だまされた女」はドイツを舞台に閉経後の年齢の女性が、...続きを読む
  • だまされた女/すげかえられた首
    ●だまされた女
    自然に従順に、感覚に誠実になった女。幸福を手にしたにもかかわらず、結果それは死に至らしめることに。なんとも。

    ●すげかえられた首
    精神か肉体か。
    精神が肉体よりも高尚であるという仮説は年齢の積み重ねを成長と捉える前提のもとで有効であって、僕はそちらを選択したい。
  • だまされた女/すげかえられた首
    表題作2篇、いずれの作品も高橋義孝訳で新潮文庫から出ているはずですが、手に入れにくいのでこの新訳で読みました。帯には、「エロスの魔力これぞ物語を読む醍醐味!」とあります。これはまた「ヴェニスに死す」(光文社古典新訳文庫では『ヴェネツィアに死す』)に関しても同じことでしょう。2作品の饒舌さ、は、この訳...続きを読む
  • ヴェネツィアに死す
    これは…なんというか…おお…(せんりつ)。
    圧倒的な耽美と官能と退廃に酔います。
    指先ひとつ触れないのに、瞳しか見てないのに、しっかりうしろぐらいエロスが存在するんだもの。
    古びるなんてとんでもない、これぞ古典と言うべきなのでは。
    ずっと読みたい読みたいとは思ってたんだけど、読んでよかった!
  • ヴェネツィアに死す
    劇的で美しくて破滅的で準古典ならではの明快さ。題材には時代を感じるけどこの美しさは普遍だと思う。ってか個人的にこういうお話は大好き。
    新訳読みやすかった!でもなんとなく味がなくてさっぱりした感じ。話はよく分かったから重厚な古い翻訳で読んでみたい。
  • 詐欺師フェーリクス・クルルの告白(下)
     原著1954年刊。
     トーマス・マン(1875-1955)が35歳で書き始め、永らく中断して書き終えたのは何と79歳。
     このインテリジェントな(大)作家については、北杜夫さんを通して畏敬の念を持ちつつも、近年は全く関心を寄せることなく、『ブッデンブローク』あたりも結局読んでないのだが、最近になっ...続きを読む
  • ヴェネツィアに死す
    平野啓一郎の「マチネの終わりに」に「≪ヴェニスに死す≫症候群」という言葉があり、それに触発されて(たぶん)再読。原文がドイツ語だからかもしれないが、観念的な耽美を湛えた表現の中であっけなく破滅(死)を迎えるような印象。現実の破滅の方がはるかに恐ろしいぞ。一番驚いたのは、主人公が50歳にして晩年の老小...続きを読む
  • ヴェネツィアに死す
    マチネの終わりに出てきた、小説が気になって読んだ。

    ポーランドの作家が一定に疲れ、癒しを求めてイタリアのヴェネツィアへやってきた。そこで出会った美少年に恋をする、実らぬ恋もの、ショタ・ゲイもの。

    ストーリーに共感できるところが少なかったが、伝染病(コレラ)が蔓延しロックダウン直前の社会不安が描か...続きを読む
  • だまされた女/すげかえられた首
    マンは(新井素子が好きだった関係で)昔から興味があった作家ではあるのだが、実はほとんど読んだことがなく、岩波で「トニオ・クレーガー」を読んだのと、これと同じ光文社古典新訳で「フェーリクス・クルル」を読んだくらい。

    『だまされた女』(原題は "Die Betrogene" で、ドイツ語にはよくあるこ...続きを読む
  • ヴェネツィアに死す
    高名な小説家が運命に引き寄せられて旅した先のヴェネツィアでの滞在で出会う美少年への恋と破滅。
    主人公が織りなす内なる感情は持てる知識を以て飛躍し、混乱の域に達するが如し。同性への愛情がこの時代にあって相当にインパクトがあったと思われるが現代のマイノリティを肯定する風潮ではその驚きは失いつつも、あまり...続きを読む
  • ヴェネツィアに死す
    アッシェンバッハは、才能があり決して怠惰を覚えなかった作家です。

    そんなアッシェンバッハは、散歩中に異様な風采の男を見たことで、新奇な異郷への憧れ、解放と負担の軽減と忘却への欲望を感じ、“そうだ、旅に出よう(p16)”と考えます。

    そして、ヴェネツィアに訪れます。そこで、ポーランド人の、高貴な時...続きを読む
  • 詐欺師フェーリクス・クルルの告白(下)
    未完の遺作だったようで、出版時は売れたらしい。上巻を読んでからだいぶ時間が経ってしまった。ほんっとにね、クルルのことがいけすかなくてね、なんとか何やっても許される超絶イケメンに変換しようとしたが、こういうタイプの男はなかなかイメージできなく、若い頃のアランドロンに置き換え、なんとか頑張って読みました...続きを読む
  • ヴェネツィアに死す
    トーマス・マンの代表的中編のひとつ。
    ヴィスコンティの映画でも有名。映画はテレビでちらっと見たことがある。

    内容は、よく知られているとおり、確固とした名声を築いた初老の小説家が、避暑地のヴェニスで美少年に魅せられるというもの。
    20世紀を代表する大小説家であるトーマス・マンが、堅実で緻密な描写で、...続きを読む
  • だまされた女/すげかえられた首
    「だまされた女」は面白かった。
    でも女性の主人公は苦手に見える。
    「すげかえられた首」は何度も挑戦したが、どうにも読み進められず断念。
    同じ作者でこうも違うとは。
  • だまされた女/すげかえられた首
    2編の短篇集。どちらも人間の肉体と精神の相克について、饒舌に語り尽す。その過剰なまでの饒舌さは、登場人物の対話であっても作者の自問自答であり、閉塞的でブラックジョークのようである。

    読み手が、世界や人間について真摯に求めている時は、マンはあまり向かないかもしれない。
  • ヴェネツィアに死す
    一度以前の訳のものを読みかけたのですが、訳が古いこともあり挫折してしまったことがありました。原本自体が古いというのもあってやはり少し古さを感じる文章ではありましたが、この新訳は非常に読みやすかったです。タッジオの美しさの描写が尋常じゃなく美しかったです。色々な詩歌からの引用が散りばめられた散文ですね...続きを読む