小島剛一のレビュー一覧

  • トルコのもう一つの顔

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    最近気になる中東の文化を紹介している本かと思ったら、言語学である著者によるトルコの旅の記録でした。めっちゃ面白い。言語学者による旅行記がこんなにもアドベンチャラスなものになるのか!観光ガイドブックのような表面的なものではなく、少数民族に焦点をあてながら自らの体験として紹介しているのです。それもそのはず。1970年当時トルコに魅せられた著者による少数民族調査旅行だったのです。強大なオスマン・トルコ帝国が西洋諸国によって分断されたのち単一民族国家という幻想で統一しようとしていた時期で、少数民族の虐殺・弾圧もある危険な時期。言語もばらばら、宗教もばらばらであることを認めない時期に少数民族の調査目的を

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    2024年02月14日
  • トルコのもう一つの顔

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    本書はフランス在住でトルコの少数民族が話している言語を研究している日本人の手記ですが、一貫して本人の体験談をもとに記述されているため非常に生々しい本です。題名にもあるように、イスタンブールやトロイ、カッパドキアなどとは違う、一般の人の目にはまず入ることのないトルコの側面を紹介しています。日本には方言こそあるものの基本的に日本語を皆が話していますし、方言は個性的なものとしてむしろ近年は良いものという風潮が大きくなっている気がします。一方本書が描かれた1980年代のトルコでは言語、方言というものが政治に密接に関係し、自身の話す言語次第では逮捕されることがある、という事実は衝撃的でした。民族、言語、

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    2023年04月24日
  • トルコのもう一つの顔

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    言語学者である著者が単一民族国家を標榜するトルコで体験した少数民族迫害の真実についてまとめた本。

    政府によって隠蔽されてきたトルコの暗部を暴くというのがこの本の趣旨だが、著者の旅行記の側面も併せもっており、この部分がすごく面白い。

    行く先々で出会う少数民族とは毎度毎度あっという間に打ち解けてしまうし、トルコ人学者の誤った歴史認識を巧みな弁舌で言い負かしたかと思えば、警官に捕まり投獄されて窮地に陥ったり、とにかくノンフィクションの旅行記としてはおそらくこれ以上にないほど濃いエピソードに溢れている。


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    2022年04月10日
  • トルコのもう一つの顔

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    ものすごい言語能力とコミュニケーション能力を持つフランス在住日本人言語学者によるトルコでの言語調査旅行記。とても面白い。
    トルコ政府に怪しまれてどこにいくにも随行員がついてきたり、数日前に出会った官僚が心臓麻痺で死亡したりと普通の旅行記より読んでいてハラハラした。
    著者の言語に対する真摯な態度と飽くなき探求心が伝わってきた。

    また、当たり前に母語で本を読み、母語で会話できる当たり前の現状をありがたく思った。

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    2022年03月20日
  • トルコのもう一つの顔

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    ネタバレ

    新書は評論文のようなものが殆どであるが、この本は読んでる途中、2回ほど本を閉じ、表紙を見て、「これ、本当に中公新書なのかな」とかやったほどだ。どう言うジャンルと言って良いのか分からないが、紀行文のような印象を受けた。新書にあるような内容ではない。

    著者の小島剛一は、フランス在住の言語学者で、特に偏執的とも言えるほどトルコに入れあげ、トルコの少数民族の言語研究を、十数年とフランスからトルコに通い詰めつつやってきた人だ。この本の出版は1991年とかなり古いが、著者が旅行していた1970年代から1980年代末期に至るまで、トルコ共和国はトルコ人の単一民族国家であり、言語もトルコ語以外は存在しない

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    2018年01月14日
  • トルコのもう一つの顔

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    新書は研究者が論文内容を一般向けにしたものが多いがこの本はエッセイのようで、しかも文章が上手くて読ませる。時に現地語や言語学の用語が出て気ても苦もなく読ませてくれる。それどころか早く続きを知りたくて出かけるときは鞄の中、寝るときはベッドと、読書中はほぼ食事とお風呂以外は近くから離さず持ち歩いていた。
    これだけのフィールドワークを重ねた見事な研究内容が、研究対象地域の政策を脅かしかねないことで最終的に著者が実質的な国外退去処分となってしまったのはまことにもったいない。本人にとっても研究対象地域にとっても学問においても悲劇。現在少数民族の言語が滅ぶ危険性が訴えられており、いかに保存するかを国際機関

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    2017年09月03日
  • トルコのもう一つの顔

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    [見てしまった者の言]親日国と知られ、近年では経済成長も目覚しいトルコ共和国。言語学の専門としてトルコに文字通り「はまって」しまった著者が、少数民族の言語を調査する過程で、外側からは決して知ることのできなかった裏の一面を明らかにした作品です。著者は、本調査の末にトルコ共和国から国外退去処分を受けることになった小島剛一。

    数々の言語を操りながら少数民族の苦悩や知られざる実情を調査する様子は、まるで一級のスパイ・フィクションを読んでいるかのよう。1990年に執筆された作品ではありますが、今日でも民族問題や言語問題を考える上で、非常に参考になる一例だと思います。クルド人問題やキプロス紛争など、日本

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    2016年05月23日
  • トルコのもう一つの顔

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    傑作。尊敬。こういう方が本当の学者だと思う。読み物としても素晴らしいサスペンスで一気呵成に読みきった。中東問題の根深さは到底日本人に想像できるものではない。

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    2016年03月08日
  • トルコのもう一つの顔

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    ネタバレ

    おそらく私たちは、表面のトルコ…
    「優しい人が多い」ぐらいしか知らないと思います。

    ところがどっこい、そういう面だけではなく
    暗黒面があるのです。
    以前ニュースでも出ていた「クルド人」に関してです。
    そもそも彼らの言語は「ない」のです。

    それと異色の宗教(イスラム教徒は違う)も
    迫害の対象になっています。
    同じ人なのに…
    そして…

    著者はその研究が広いのもあり
    結局国外追放(実質帰国予定でしたが)
    となってしまいます。
    いずれ隠し通せなくなる日がきていたことでしょう。
    いや、隠せなくなりましたね。

    新書ではたまにある読むべき本。
    トルコへの見方が変わります。

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    2015年07月20日
  • トルコのもう一つの顔

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    心に炎が燃え移った。10代で読んでいたら、もっと人生変わったかも。いや、酸いも甘いも知った今だからこそ共感できるのかも。若さって保守的な傾向をもつこともあるから。

    トルコが舞台だが、同じようなことはいくつかの国にも当てはまるのでは。日本も例外ではない。「普通」に生きていると社会や国家、教育内容に疑問を持つことは少ないかもしれない。しかし、一歩はみ出たときに果てしない荒野が急激な崖が見えてくるのだ。

    トルコを知る格好の書物だが、問題意識をトルコに終わらせないことが大事な本だと思った。

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    2013年05月24日
  • トルコのもう一つの顔

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    自分が知らない世界が完結にではあるがしっかりと描かれていることで、知らぬ間にどんどん引きこまれていった。
    民族・宗教・言語が当事者同士で複雑に絡みあっている。

    宗教なんて関係なくていいじゃん、言語共同体なんて、とか考えていた自分が恥ずかしくなってくるくらい。

    次も早く読みたい。

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    2012年07月03日
  • トルコのもう一つの顔

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    トルコに対する認識が改められる本。
    少なくともトルコに関する知識が貧弱過ぎた自分には、インパクトが強かった。

    現地視点からのクルド問題の提起、言語学者として「隠れ民俗」「忘れ民俗」など足を使って(時には妨害されながらも)調査、分析した筆者の功績はとても大きい。

    アレウィー教徒を扱った章では、マイノリティに対する差別と自民族のアイデンティティに対する誇りの間で生きる人達の姿が、印象的なエピソードで綴られていて、考えさせられた。

    続編の「漂流するトルコ」を早く読みたい。

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    2012年06月17日
  • トルコのもう一つの顔

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    読む前はイスタンブールやカッパドキアなど観光地としてのイメージしかもっていませんでした。言語学者の筆者の紀行文の形式で書かれていますが、すごい旅です。トルコをくまなくトルコ人より多くの地を回っているようです。多言語、他民族国家なのに、政府はそれを認めず土着の言語を話すだけで逮捕拘留、拷問など知らないトルコが現れてきます。
    登場する地方の人々などの登場人物がまた魅力的です。
    読んでいてぐんぐん引き込まれます。
    現在のトルコはEU加盟をにらんで少しかわってきているようです。
    2011は少数民族出身の人が大統領?になったというニュースがありました。
    詳しくはどの程度変わったかわかりませんが。自由に固

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    2012年05月30日
  • トルコのもう一つの顔

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    ネタバレ

    トルコは多民族国家で、度々クルド人問題がニュースになる程度は知っていました。
    クルド人問題は氷山の一角で、それ以上にもっと民族問題があることを本書から学べました。
    トルコ語を話さないと罰せられたり、すべての言語はトルコ語から派生していると学校で教えているという事実には驚きました。

    トルコは旅行で訪れたこともあり、好感を持っている国ですが、真実はこうであったとは思いませんでした。続編も読むつもりです。

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    2012年04月03日
  • トルコのもう一つの顔

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    知人が「これは名著だ!」と言っていたから読んでみたが、なるほど確かにこれは名著だ。まず単純に刺激的で面白い。そして、他の国を知るとはどういうことなのかということを伝えてくれる本でもある。

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    2012年03月26日
  • トルコのもう一つの顔

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    「トルコにはトルコ人しかいない」を国是として、クルド人の存在を公式に認めないトルコ。トルコは何度も行って好きな国だけに、複雑な思いもあるのだけれど、とにかく面白い!(カテゴリは「冒険譚」にしようかと思ったくらい。)フィールドの言語学をやりたくなる。

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    2011年12月18日
  • トルコのもう一つの顔

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    最近、在日トルコ人と親しくする機会が増えてきたのだが、トルコの文化や歴史を殆ど知らないことに思い至り、トルコ関係の著書を読んでみようと。

    オスマン帝国、ペルシャ絨毯、ターコイズ、ケバブ
    この辺りくらいの知識しか持ち合わせず、親しくするならば、まず学ぼうと。

    本書は言語学を生業とする著者がフィールドワークで得たトルコ事情について書かれたもの。

    一口にトルコ人と言っても、実に多くの民族がいることを知る。

    トルコ人、クルド人、ザザ人、アラブ、アルメニア、アッシリア、アルザス、チェルケズ、トラキア、ラズ、アブゼフ...と、実に多い。

    本書の出版が1991年であり、30年近く前のトルコなので

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    2025年11月19日
  • トルコのもう一つの顔

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    トルコの建前と少数民族の迫害。今日本にクルド人問題が立ち上がっているが、クルド人のなんたるかを思いがけず知ることができた。

    関連書籍も読みたい。

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    2025年04月22日
  • トルコのもう一つの顔

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    小島剛一氏の「トルコのもうひとつの顔」について語っていく。氏はトルコ政府に対して直に影響を与えた言語学者として有名であり、本書は続編まで作られるほどになったベストセラーである。内容を要約すると、氏が30~40の間(西暦1970~1980年代)に行ったトルコの少数民族に向けた言語研究の成果と、それに対する政府の対応について語られている。当時のトルコ政府は「トルコ国内に住む人間は皆等しくトルコ人であり、国内言語はトルコ語以外ない」という姿勢だった。しかしトルコという国は多民族国家であり、全員が全員トルコ人というわけでは当然なかった。しかしトルコ政府はそれを隠蔽し、弾圧や法的措置を施した末に、先述の

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    2024年11月27日
  • トルコのもう一つの顔

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    クルド人とかジプシーとかオスマントルコとかのイメージが掴めた。日本人による論評ということが私には重要でした。トルコの人たちが状況を記述しても僕にはわからなかっただろうと思う。そして、こういった歴史的な紛争のことを考えると、やっぱり戦わないことが一番と思います。ウクライナもこのような地域。で、アラビアのロレンスとかを見ると、そもそも帝国による武器供与って問題しかないのでは?とか、民族自決みたいな話ってそもそもがフィクションでしかない。とか、そういった想像をします。日本は海によって区切られていることで、こういったフリクションから比較的守られている。それがいいとか悪いとかじゃなくて、比較的守られてい

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    2022年02月15日