小島剛一のレビュー一覧
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最近気になる中東の文化を紹介している本かと思ったら、言語学である著者によるトルコの旅の記録でした。めっちゃ面白い。言語学者による旅行記がこんなにもアドベンチャラスなものになるのか!観光ガイドブックのような表面的なものではなく、少数民族に焦点をあてながら自らの体験として紹介しているのです。それもそのはず。1970年当時トルコに魅せられた著者による少数民族調査旅行だったのです。強大なオスマン・トルコ帝国が西洋諸国によって分断されたのち単一民族国家という幻想で統一しようとしていた時期で、少数民族の虐殺・弾圧もある危険な時期。言語もばらばら、宗教もばらばらであることを認めない時期に少数民族の調査目的を
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本書はフランス在住でトルコの少数民族が話している言語を研究している日本人の手記ですが、一貫して本人の体験談をもとに記述されているため非常に生々しい本です。題名にもあるように、イスタンブールやトロイ、カッパドキアなどとは違う、一般の人の目にはまず入ることのないトルコの側面を紹介しています。日本には方言こそあるものの基本的に日本語を皆が話していますし、方言は個性的なものとしてむしろ近年は良いものという風潮が大きくなっている気がします。一方本書が描かれた1980年代のトルコでは言語、方言というものが政治に密接に関係し、自身の話す言語次第では逮捕されることがある、という事実は衝撃的でした。民族、言語、
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ネタバレ新書は評論文のようなものが殆どであるが、この本は読んでる途中、2回ほど本を閉じ、表紙を見て、「これ、本当に中公新書なのかな」とかやったほどだ。どう言うジャンルと言って良いのか分からないが、紀行文のような印象を受けた。新書にあるような内容ではない。
著者の小島剛一は、フランス在住の言語学者で、特に偏執的とも言えるほどトルコに入れあげ、トルコの少数民族の言語研究を、十数年とフランスからトルコに通い詰めつつやってきた人だ。この本の出版は1991年とかなり古いが、著者が旅行していた1970年代から1980年代末期に至るまで、トルコ共和国はトルコ人の単一民族国家であり、言語もトルコ語以外は存在しない -
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新書は研究者が論文内容を一般向けにしたものが多いがこの本はエッセイのようで、しかも文章が上手くて読ませる。時に現地語や言語学の用語が出て気ても苦もなく読ませてくれる。それどころか早く続きを知りたくて出かけるときは鞄の中、寝るときはベッドと、読書中はほぼ食事とお風呂以外は近くから離さず持ち歩いていた。
これだけのフィールドワークを重ねた見事な研究内容が、研究対象地域の政策を脅かしかねないことで最終的に著者が実質的な国外退去処分となってしまったのはまことにもったいない。本人にとっても研究対象地域にとっても学問においても悲劇。現在少数民族の言語が滅ぶ危険性が訴えられており、いかに保存するかを国際機関 -
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[見てしまった者の言]親日国と知られ、近年では経済成長も目覚しいトルコ共和国。言語学の専門としてトルコに文字通り「はまって」しまった著者が、少数民族の言語を調査する過程で、外側からは決して知ることのできなかった裏の一面を明らかにした作品です。著者は、本調査の末にトルコ共和国から国外退去処分を受けることになった小島剛一。
数々の言語を操りながら少数民族の苦悩や知られざる実情を調査する様子は、まるで一級のスパイ・フィクションを読んでいるかのよう。1990年に執筆された作品ではありますが、今日でも民族問題や言語問題を考える上で、非常に参考になる一例だと思います。クルド人問題やキプロス紛争など、日本 -
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ネタバレおそらく私たちは、表面のトルコ…
「優しい人が多い」ぐらいしか知らないと思います。
ところがどっこい、そういう面だけではなく
暗黒面があるのです。
以前ニュースでも出ていた「クルド人」に関してです。
そもそも彼らの言語は「ない」のです。
それと異色の宗教(イスラム教徒は違う)も
迫害の対象になっています。
同じ人なのに…
そして…
著者はその研究が広いのもあり
結局国外追放(実質帰国予定でしたが)
となってしまいます。
いずれ隠し通せなくなる日がきていたことでしょう。
いや、隠せなくなりましたね。
新書ではたまにある読むべき本。
トルコへの見方が変わります。 -
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読む前はイスタンブールやカッパドキアなど観光地としてのイメージしかもっていませんでした。言語学者の筆者の紀行文の形式で書かれていますが、すごい旅です。トルコをくまなくトルコ人より多くの地を回っているようです。多言語、他民族国家なのに、政府はそれを認めず土着の言語を話すだけで逮捕拘留、拷問など知らないトルコが現れてきます。
登場する地方の人々などの登場人物がまた魅力的です。
読んでいてぐんぐん引き込まれます。
現在のトルコはEU加盟をにらんで少しかわってきているようです。
2011は少数民族出身の人が大統領?になったというニュースがありました。
詳しくはどの程度変わったかわかりませんが。自由に固 -
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最近、在日トルコ人と親しくする機会が増えてきたのだが、トルコの文化や歴史を殆ど知らないことに思い至り、トルコ関係の著書を読んでみようと。
オスマン帝国、ペルシャ絨毯、ターコイズ、ケバブ
この辺りくらいの知識しか持ち合わせず、親しくするならば、まず学ぼうと。
本書は言語学を生業とする著者がフィールドワークで得たトルコ事情について書かれたもの。
一口にトルコ人と言っても、実に多くの民族がいることを知る。
トルコ人、クルド人、ザザ人、アラブ、アルメニア、アッシリア、アルザス、チェルケズ、トラキア、ラズ、アブゼフ...と、実に多い。
本書の出版が1991年であり、30年近く前のトルコなので -
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小島剛一氏の「トルコのもうひとつの顔」について語っていく。氏はトルコ政府に対して直に影響を与えた言語学者として有名であり、本書は続編まで作られるほどになったベストセラーである。内容を要約すると、氏が30~40の間(西暦1970~1980年代)に行ったトルコの少数民族に向けた言語研究の成果と、それに対する政府の対応について語られている。当時のトルコ政府は「トルコ国内に住む人間は皆等しくトルコ人であり、国内言語はトルコ語以外ない」という姿勢だった。しかしトルコという国は多民族国家であり、全員が全員トルコ人というわけでは当然なかった。しかしトルコ政府はそれを隠蔽し、弾圧や法的措置を施した末に、先述の
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クルド人とかジプシーとかオスマントルコとかのイメージが掴めた。日本人による論評ということが私には重要でした。トルコの人たちが状況を記述しても僕にはわからなかっただろうと思う。そして、こういった歴史的な紛争のことを考えると、やっぱり戦わないことが一番と思います。ウクライナもこのような地域。で、アラビアのロレンスとかを見ると、そもそも帝国による武器供与って問題しかないのでは?とか、民族自決みたいな話ってそもそもがフィクションでしかない。とか、そういった想像をします。日本は海によって区切られていることで、こういったフリクションから比較的守られている。それがいいとか悪いとかじゃなくて、比較的守られてい