小島剛一のレビュー一覧
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トルコ国内の言語と民族を実地調査された小島氏の1970年から1986年までの現地調査の記録と,トルコの民族や言語の当時の現状についての紀行文です。現在でも注目されることが多い,トルコの東部や内陸部の実態についてご自身の体験を中心に記載されており,現在の目から見ても参考になる事象が多いと思います。
今でもどこまで詳細にわかっているかは疑問に思うところがありますが,この作品で触れられているような状態であった地域がますます混迷の度を深めているということについては,いろいろと考えさせられます。やはりこの地域について,いろいろ知りたいと思うものの,難しいなという印象も同時に持ちました。 -
Posted by ブクログ
新婚旅行のためトルコに向かう機内で読んだ。正直、読むタイミングはふさわしくなかったが(なにせ、本文中に「この国の本当の姿は夜中に警察に連行されて尋問されないと分からない」というくだりがあるのだ)、内容は素晴らしい。トルコは多民族国家であり、共和国成立の過程も複雑である(第一次世界大戦後に欧米列強に分割統治されかかったところを、独立戦争をおこし自国を勝ち取った)。トルコは基本的には軍事国家であり、そのかすかな雰囲気は短い滞在中にも感じられた。
筆者のトルコに対する非難は抑制のとれたものであり、また少数民族に対する眼差しは抑えた筆致からも十分心に響く。トルコ人すら理解できない少数民族の言語を操る日 -
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言語学者である著者はトルコ共和国を1970年に訪れて以来、その地の人々と諸言語の魅力にとりつかれ、十数年にわたり一年の半分をトルコでの野外調査に費す日日が続いた。調査中に見舞われた災難に、進んで救いの手をさしのべ、言葉や歌を教えてくれた村人たち。辺境にあって歳月を越えてひそやかに生き続ける「言葉」とその守り手への愛をこめて綴る、とかく情報不足になりがちなトルコという国での得がたい体験の記録である。
タイトル的にクルド人問題とかアルメニア人大量虐殺の話かなーなんて思ってたけど、それどころじゃなかった。近代における民族問題のことが目白押し。トルコってこんなにも色んな民族および言語があるだなんて知 -
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ネタバレ著者:小島剛一
出版社:中公新書
1 トルコ人ほど親切な人たちも珍しい
2 トルコのもう一つの顔
3 言語と民族の「るつぼ」
5 デルスィム地方
5 Y氏との旅
6 「トルコに移住しませんか」
7 トルコ政府の「許可」を得て
P34 クルド人の独立運動家は「社会主義者」「マルクス・レーニン主義」など自ら定義しているが
実際は超党派の民族主義者と呼んだほうがよさそう。
・経済体制と言語政策に相関がない。
ex:言語自治権のある資本主義国:スイス、スウェーデン、フィンランド
少数民族を認めていない社会主義国:ブルガリア、ルーマニア、ベトナム
・トルコ共和国を成立させたのは、第一次世界大戦後 -
Posted by ブクログ
トルコ旅行の予習用として一冊目に手にとったもの。トルコの少数民族の言語の研究者たる著者のトルコ滞在記とでもいったかんじ。
内容としては民族問題といった非常にシビアなものを扱っており、単一言語・民族といった感覚、というかそのような感覚すら意識化することのない日本人にとっては水を浴びせらて目が覚める思いがする一冊。親日国としての側面ばかりでなく、このようなもう一つの顔を持っているということを知っておいても損はないだろう。
ただし、興味深いし読み物としてもおもしろいのはそうなのだが、トルコについて知りたい人のための一冊目としてよいかは怪しいとは思う。 -
Posted by ブクログ
トルコは、親日国だと聞いたことがある。その情報だけで、いい国だな、旅行に行ってみたいなと興味を持っていたところ、出会ったのが本書だ。情報不足なので、なにかトルコについての知識を得られればと思った。
本書は、トルコに魅了された著者が、トルコで話される言語の野外調査を記したものだ。調査結果を書き連ねたものではなく、行く先々でのイベントや、そこで感じたことを時系列に沿って紹介している。「深夜特急」みたいな感じ。
本書を読んで一番よかったことは、少数民族について知れたこと。「トルコって全員トルコ人でしょ?」「全員トルコ語話すんでしょ?」という認識をぶち壊してくれた。事実とは違う教育を受けて育