19世紀フランスの女流作家ジョルジュ・サンドによる田園小説。双子の兄弟と野生の少女の美しく繊細な恋愛物語。
女流作家ということもあり、どことなく少女漫画チックで心理描写が繊細。この時期の恋愛小説には悲劇的なものも多いなか、こちらはティーンの頃の気持ちに戻ってニヤニヤできる場面もあり、田園風景も相ま
...続きを読むって少し癒やされる感じがした。
とはいえ、展開にはそれなりに起伏があって引っ張られる。10代半ばから後半あたりの女の子には、花が開いたように急に綺麗になることがあるものだが、そういった瞬間をヒロインの設定によってさらに深く掘り下げ、劇的に描いているのは見事だった。後半、父親との衝突と兄弟の嫉妬の問題で感情が揺さぶられるし、ヒロイン無双とでも言いたくなるようなファデットの活躍が痛快で、気持ちの上がり下がりが激しい。少し都合が良すぎるようにも思えたが、各人物の心の動きが丁寧に描かれるので感情移入できた。最後のオチが心に沁みる傑作。