いつか読みたいと思っていたよ!
あの、最後死んじゃうやつね…!と思ってたら違った。夫人違いだった。(なんのネタバレよ)
原題は"LADY CHATTERLEY'S LOVER"、初出は1928年。木村政則訳。
最初に訳者まえがきがあることで、だいぶとっつきやすくなっていると思う。個人的にはメラーズの
...続きを読む訛りはもっと方言ぽくてもいいと思うけれど、このへんは翻訳の限界ともいえそう。
舞台は第一次世界大戦後のイギリス。
准男爵夫人であるコニー(チャタレー夫人)は、若くして結婚するも、夫が戦争で下半身不随となり、性生活を営めなくなる。子供が欲しいと思いながらも夫の世話をする喜びのない日々を送っていた。
そんなときコニーは、屋敷の森番メラーズに心を奪われ、秘密の逢瀬を重ねるようになる…。
本作は100年もの間、世間をざわつかせてきた作品である。1928年に作者が不謹慎承知で、私家版として出版し、酷評もされつつ、一部では人気を博する。
イギリスで無削除版(という言い方が既にエロい)が公刊されたのは1959年。猥褻文書として告訴されるも、結果は無罪となる。
日本で初めて無削除版が出たのはそれに先立つ1950年。当局からは発禁処分を受け、出版社と訳者がわいせつ文書頒布罪で起訴され、有罪が確定する。これが、かの有名な『チャタレー事件』である。言論の自由とは、わいせつとは何かということが、何人もの著名人が出廷して証言し、法廷で真面目に論じられたのである。
一度は絶版という憂き目にあった完訳だが、社会通念の変化という(猥褻に寛容になった?)世の流れや、本国イギリスでの無罪も受けて、現在は完訳が普通に流通している。
急に濡れ場になっていたり(ぼんやり読んでたら、「はっ、何、もう始まってる!」と驚く)、コニーが性の悦びにふけり、やたらと子宮に注意を向けたりするし、セックス前後の男根の有様がリアルに描写されたりするもんで、なるほど、こりゃ1950年代なら『猥褻文書頒布』とか言う奴いるんだろうなと少し納得もする。(今では考えられないけど)
いや、でも面白かったです。確かに男女の性愛を描いているのだけど、主題の描写に必須だっただけで、殊更にエロを描こうとしてるんじゃないよね。読めばそれはわかる。夫も妻も、どこかしら、身につまされることがあるのではないかな。
やはり良きも悪きも、話題になるロングセラー作品には、普遍性が感じられる。
小説は読んで面白いと感じられるかどうかで、わいせつかどうかなんかを考える前に、純粋に作品として楽しんでほしいなと思う。たぶんロレンスもそう思っていたはず。