平野真敏のレビュー一覧
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世界に二人しかいないヴィオラ・アルタ奏者の平野氏がその幻の楽器との出会いから由緒を探してたどりつくまでの物語はさわやかに仕上がっている。残念ながら音楽に例えて表現する能力はない。
クラシックの道に進んだ平野氏は高校進学と同時に上京し、切れたヴァイオリンの弦を買うために有名な木下弦楽器店に飛び込んだ。その楽器はその頃から既にショーケースに並んでいたのだが何と気がつくのは20年後の2003年になってからで、店に来ていた男の子が「こんなに小さいチェロがあるよ」と声を上げたのがきっかけだった。木下氏によるとその楽器はアメリカのオークションを経て数十年前に木下弦楽器に船便で送られてきたもの。つまり、ハ -
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ネタバレあるヴィオラ奏者が幻の楽器、ヴィオラ・アルタと出会い、そのルーツを求めてヨーロッパを旅する話。ワーグナーに気に入られたというその楽器は近代の発明品であるにもかかわらず、非常に資料が少ないのだが、良い出会いと直感と偶然に支えられ、その秘密に肉薄してゆく。
いやはや、ぜひともNHKで取り上げて欲しいくらい良いノンフィクションだった。著者の平野氏を取り巻く音楽界の人々も素晴らしければ、巡り合いのタイミングの良さも素晴らしい。特に世界最大と言われるパイプオルガンを見学し、そこに残されているはずの「ヴィオラ・アルタの音色を作るストップ」を探すくだりは圧巻で、これはもう平野氏の楽器に対する愛情がなせる技と -
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ヴィオラ奏者である平野真敏氏が、偶然に馴染みの楽器店で出合った不思議な楽器、「ヴィオラ・アルタ」の歴史を辿る物語である。
19世紀にドイツ人のヘルマン・リッター氏によって発明されたこの楽器、一時期はリストやワーグナーに愛されるが、急速に歴史の表舞台から消えてしまう。
ヴィオラ・アルタのサイズは通常のヴィオラより7cmほど大きいらしく、ヴィオラ自体もヴァイオリンより一回り大きいことから、相当な大きさの楽器である事がわかる。
まるで楽器に引き寄せられるように、ヴィオラ・アルタの謎を解き明かす旅に出る事となった平野氏であるが、その過程で出合う人々がまた素晴らしい。
木下楽器の木下氏をはじめ、上野 -
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タイトルにある「幻の楽器」として挙げられたヴィオラ・アルタという名前に惹かれて購入。
日本は世界有数のヴィオラ普及国というか先進国なので、ヴィオラ関連の本が出ても不思議ではないと思いつつ読み進めていくうち、ドイツで生まれたドイツ音楽を演奏するための楽器が東洋の演奏家によって発掘され世に紹介されていくという現実にビックリするやら嬉しいやら。それにしても、ワーグナーを始めとして著名な作曲家に重宝され一時期大量に制作されつつも、今では稀有の存在と化した楽器の歴史と音楽的価値を再認識させる良著。アンサンブルからハーモニーがオルガンの響きに近いこと、そして実際にパイプオルガンにヴィオラ・アルタのストップ