竹森俊平のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
今(2014年)になって改めて1997年のアジア通貨危機の勉強をしようと思って本書を手に取りました。竹森さんの著作は数冊読んだことがあり、毎回感銘を受けていたので、竹森さんなら大丈夫だろうとは思っていましたが、予想以上にためになる本でした。まず本書が書かれたタイミングが2007年で、翌年にリーマンショックを控えている中、本書の中でも、サブプライムローン危機については示唆されていますし、グリーンスパン前連銀総裁がとった積極的な金融政策が株式バブルを住宅バブルに置き換えて、はたしてこれが吉とでるか凶と出るか?というまさにそれ以後起こることを予言しているような本でした。
内容的にも新書とは思えない -
Posted by ブクログ
2015年に勃発したギリシャ発のユーロ危機に際して、当事者(ギリシャ)とユーロの主要国(ドイツ・フランス)、そしてIMFがどのように動いたかを、時系列で実況している感じの本。詳細な内容をテンポよく記述していて、ライブ感が良い。また、この200年弱の間、ギリシャが国家債務に関していかに杜撰であったかを指摘すると共に、「借金は、金額が増えると借り手が有利になる」という残念な現実を突きつけることも忘れていない。
ただ、日本がギリシャの真似をしようとしても、そうはいかないんだけどね。ギリシャの債権者は70%以上が他国なのに対し、日本の債権者は90%以上が自国民。すなわち、日本国は国民から借金を重ねたあ -
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[内に外にと翻弄の年]日本国内では大型金融機関の相次ぐ破綻、海外に目を転じれば東アジアでの通貨危機と、金融関係で大きな変動を経験した1997年。なぜこの年に危機が集中したのか、そしてこの年を境にしてどのように金融の世界は変貌したのかを記しつつ、キーワードとなる考え方である「ナイトの不確実性」について掘り下げた作品です。著者は、読売・吉野作造賞を受賞した『経済論戦は甦る』などを執筆されている竹森俊平。
現実に何が起きたかという世界と、その背後にある理論の世界を行ったり来たりしながら1997年という年を眺めていく手法はお見事。「ナイトの不確実性」という言葉は本書で初めて目にしたのですが、その考 -
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筆者は「失われた10年」からアベノミクスに至る日本経済の長くて苦しい経験を理解するためには、価格メカニズム(為替レート、長期金利などのシグナル)が正常に作動しなかったからであると言う。であるならば、今後、強力な金融緩和を実施することによって、デフレ克服と円高是正を達成することの意義は、「誤った価格メカニズムを正常な状態に戻すこと」これである。
第2章ではアベノミクス成功の条件を上記の観点から、輸出が重要、つまりはアメリカの経済政策が成功することが、非常に重要なポイントであることを指摘し、後半ではアメリカの政治と経済の複雑なリンケージに話が及ぶ。もちろん、それは日本経済の復活の鍵をも握っている -
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ネタバレ不動産バブルの崩壊、阪神・淡路大震災、東日本大震災のような国家危機が起こった場合に決まって「円高」が起こる。
この現象は海外陰謀説等がささやかれたり、私にとっては大きな謎だった。この原因が海外との事例比較などで、日本経済の置かれた特殊な状況からこの謎が解き明かされる。まるで推理小説を読む醍醐味が味わえる。犯人は・・・。
また、日本の経済学者や政府はこのような現象をどう見ていたのか?
本来「価格シグナル」はその国の経済の実態を発信するが、日本では「価格シグナル」は何もかも滅茶苦茶であるという。
①為替レートを見ていれば、輸出のチャンスがつかめない。
②国債金利だけを見ていれば、財政改革のチャンス -
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現在になって、経済学の分野で注目されるようになってきたフランク・ナイトの不確実性という概念に触れています。
フランク・ナイトは、彼の著書「Risk,Unsernity and Profit(危険、不確実性及び利潤)」で、確率によって予測できる「危険」と、確率的事象ではない「不確実性」とを明確に区別し、「ナイトの不確実性」と呼ばれる概念を構築しました。
不確実性とは、著者の極端な例を借りると、北朝鮮が日本にミサイルを撃ち込んでくる確率です。このように計算できない、起こるかどうかわからない未知のことが、不確実性です。
金融工学は、この不確実性を考慮に入れていないため、どうしても不完全なところ -
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経済学者が、通過としての円の特異性を述べたもの。近年起きた通貨危機や不況時のデータを基に、バブル崩壊によって円安とならない日本の状況を説明している。通常、各国経済は、危機によって価格シグナルが働き、通貨安によりV字回復するはずであるが、日本のような債権国では危機による投資の海外逃避よりも、危機に対応するための海外投資の国内帰還が大きく、それに対する投機と相まって大幅な円高を招いた。これが危機による痛手をいっそう深め、回復を遅らせたと述べている。通貨の動きの一端を理解できた。
「政府が日銀に国債を買ってもらって、国債金利の上昇を妨げるとともに、代金として受け取った「円」を公共事業に使う(国債の -
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2007年秋頃(サブプライム問題発覚、安部首相辞任後)に書かれた本ですが、今日の金融危機へ至るメカニズムを見事に洞察しています。名著に推す人が多いのも頷けます。,後半の97年以降の世界経済安定化の内容が難解で読み返しましたが、非常に示唆に富みます。,,■ポイントとなるワード,・ナイトの不確実性,・エルスバーク・パラドックス,・中央銀行はゴールキーパー, バブル後こそ活躍の場ある。強気の企業家のように振舞わなければならない。,・97年の危機の本当の意味→中国の地位強化,・ペイルアウト、ペイルイン,・量的緩和=非不胎化介入, →円安にさせず、ドルの価値を上げる(少々わからない),・日本の不確実性は
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Posted by ブクログ
ネタバレ前回のユーロ危機(ギリシャ危機)の直後に買ったままで放置していたが、またぞろ「ギリシャ危機」が再発したので、慌てて読み出したが、専門用語がバンバン出てくるし、新書にしては内容もかなり専門的。それなりの専門知識がないと、途中放棄したくなるので、それを覚悟で読んで下さい。例えば、ESM、ECB、BVG、CDU、EFSF、SPM、GIIPS、LTRO、SMP等々皆さんどれだけ答えられますか?
歯応えは十分過ぎて、刃毀れする程の感じで、読み応えのある本だと思いますが、新書ならもう少し易しく書いて欲しかったと思います。
内容は要するに、ユーロについては、
①「最適通貨圏の条件」を満たしていない地域に「