上坂昇のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この本が出版されたのは1994年である。
今から20年前の本だが、この当時、おそらく著者が抱いていたであろう「分離主義の危険」は今もより根深い問題として残っているのではないだろうか。
「キングが唱えた非暴力による公民権運動によって、今日の黒人の発展がもたらされたことは、だれも否定できない事実である。しかし、その発展の恩恵を受けていない貧困層が厳然として存在することも明らかである…貧困層の絶望が深まれば深まるほど、白人との統合を拒否し、分離主義が強まっていく危険性が高くなる。黒人の児童を白人の児童から切り離し、黒人だけの学校をつくろうとする動きもある。黒人の児童に劣等感を感じさせないようにするに -
Posted by ブクログ
題名の通り、キング牧師とマルコムX、両者の生い立ちや思想、そして比較研究など、かなりわかりやすく述べられた歴史書。
概してキングとマルコムは、非暴力思想と暴力思想との対比が強く、一般的には相いれないように思われているが、僕は個人的にはそうした対比より、彼らが最終的に何を目指していたかの方向性に注目すべきだと思う。
本書にもある通り、キングの人種統合はアメリカ国内の人種問題として限定的だったのに対し、マルコムXの場合は第三世界を中心としてインターナショナルな視点で統合を考えるという、世界的な意味を持っていた。厳密に彼らの目指す方向性にも微妙な差異があったのである。
とはいえ、生前彼らがもう -
Posted by ブクログ
キング牧師とマルコムXという対照的な2人の生い立ちや思想を解説し、両者を比較し、検討したもの。
これまで何となくキング牧師と言えば公民権運動、「私には夢がある」のスピーチで、マルコムXと言えば暴力的な人、くらいのことしか知らなかったが、この本を読んで、ぐっと世界が深まった感じがする。特に高校の英語の教科書や、児童向けの伝記なんかでも、あの有名なスピーチの一節ばかりが取り上げられて、とにかくすごい人なんだ、というイメージだけはしっかり植えつけられたが、その中身については何も知らなかったということが分かった。キング牧師に関しては、モントゴメリーへのデモ行進が公民権運動の頂点であって、それ以後運 -
Posted by ブクログ
戦後すぐのアメリカにおいて、黒人の人権を守るために積極的に活動した2人の宗教家(?)を比較考察した本。
一方は、「アメリカの夢」とたとえられたマーチン・ルーサー・キング。
もう一方は、「アメリカの悪夢」とたとえられたマルコムX。
彼らの違いは明々白々。
キングは白人の罪を許し、黒人と白人が共存できるアメリカの建設をめざした。
マルコムは黒人と白人を分離し、黒人だけのアメリカを理想とした。
彼らは時期を同じくして活動し、生涯に一度だけ対面し、
そしてその直後にマルコムXは暗殺された。
今日でも黒人の英雄と謳われているキングと、
過激な活動家としての印象の強いマルコム・・・。
今日ではマルコ -
Posted by ブクログ
ネタバレ表面的に分かりそうで根っこは違うらしいと感じたので、その点について解説されていないかと読んだ。
が、この本だけでは不足するだろう。
あくまで宗教がアメリカ社会へ与える影響であって、アメリカにおける宗教ではない。回心体験や教派の説明など、影響力は大きそうだが宗教に属するものについては度々カットされているからだ。各章立て自体はコンパクトなので、ここで大枠を捉えて、より詳しく知りたいものは別途進む使い方になるだろうか。
西洋文明が宗教への抵抗で進んだのに対し、アメリカはカトリックの拘束から抜け出すために始まった。国の礎を成し、心理的不安の度にキリスト教に舞い戻るのは、宗教に縋らぬ時代においてなおそれ -
Posted by ブクログ
題名とおりキング牧師とマルコムXのそれぞれの生い立ちや活動などが簡潔にまとめられていて、また2人に共通する思想とは何か(反対にどういう部分では相容れなかったのか)、などが書かれている。基本的には、数々の2人に関する書籍を筆者が分かりやすく編集して読者に伝えるというような構成。だから、初めて彼らに興味を持った人が読むのには適していると思う。ただ彼らのことについて、初歩の部分は知っておりもっと踏み込んで思想を理解したいと思っているような人には物足りない内容だと思う。そういう人は、巻末の筆者が引用した書物を読みすすめていくとよいと思う。2008-12-12