吉原英樹のレビュー一覧
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グレシャムの法則ーー「悪貨は良貨を駆逐する」
日常業務は、いつまでにしなければならないという納期がはっきりしている。その時間に間に合わないとペナルティを覚悟しなければならない さらにやるべき仕事の内容は決まっており、あれこれ迷うこと無く直ちに着手できる
これに対して企業を大きく変えるような計画を立案して実行することは、納期や評価がいずれも明確にきまっていない。
そのため、ついつい日常業務に席をゆずり、後回しにされやすく「10年遅かった」になるのである
松下電機の山下前社長はつぎのように語っている。「社長の仕事は、みんなが納得する危機感を探し出して、全員に自覚させることですよ。 それも第 -
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戦略とは何か?
という 源流ともいえる 書。
昭和63年(1988年)に書かれたにもかかわらず、
そこにある 問題意識は 極めて新鮮。
会社をマネージする原理は、あまり変化がないのだ。
情報化、国際化、ハイテク化のなかで、企業はどう対応するのか?
企画とは 『バカな』(違い;差別化)を明らかにする作業であるが
それだけでなく、『なるほど』(合理性)がなければならない。
その二つがあって、着地できる。
違いだけでは 理解がされない。
『べき論』は 現状を維持し、保守的な思考である。
トレンドに基づいた『将来論』が 必要となる。
なぜ 失敗は 隠蔽されるのか?
『失敗』が 会社にとってのイノ -
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自然科学における物理法則や数学定理のように、
およそ一般的に正しいと言える規約が、
人工的なモノに対しても存在するのだろうか?
というのが本書の根源的な問いかけである。
これまでは、組織や建築デザインなどは、経験則だけが頼りで、
科学的に分析できない、というのが当たり前であったが、
今日のコンピュータの進歩によって、モデリングしてシミュレーション
することにより、科学の対象として扱える可能性が高まってきた。
デザインにおいては、モジュール化、自己組織化、などが
キーワードになってくる。
など、結論だけ書くとありきたりな感じだが、
本書の洞察は、30年以上前のものとは思えないほど新鮮で、 -
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成功していている企業の一見「バカな」と思える非常識な経営判断が、よく考えられていて「なるほど」と思わせる合理的なものであったりする。
そんな企業のケーススタディを紹介している本です。
第一部の思考法の章が参考になりました。
「計画グレシャムの法則」のために企業のイノベーションが阻害されるといいます。”悪貨は良貨を駆逐する”という現象を組織論に応用すると、企業は往々にして日常業務という悪貨を優先しイノベーションをための計画業務は犠牲にされてしまうということ。
これに打ち勝つには
・期限や納期を明確にし
・期限などに間に合わなかった時の評価もあらかじめ明確にする
・注意の焦点もはっきりさせる
加 -
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楠木先生の「ストーリーとしての競争戦略」の核となる概念の着想は、本書から得たとのこと。1988年に初版が出版されたものだが、「ストーリーとしての競争戦略」の影響もあって復刊となった。
「…成功する戦略には二つの条件がなければならないことを教えている。差別性と合理性である。
差別性とは、多くの企業がとっている常識的な戦略とちがう戦略、つまり非常識な戦略である。平たくいえば、『バカな』といわれるくらい他者とちがう戦略である。
もう一つの条件は、合理性である。よく考えられていること、理屈に合うこと、論理的であることである。平たくいえば、『なるほど』と納得のできることである。」
「…『バカな』戦 -
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優れた競争戦略の2大要素である差別性と合理性を『バカな』と『なるほど』というシンプルかつ本質的な表現でまとめてある。確かにこれは合理的な考え方だ。
それ以上に感心したのは、いくら精緻に計画しても絶対に予測できない事態が生じること、人の考え方を変えるのは絶望的であって戦略にあった人材を選ぶことしかできないこと、継続的に会社を発展させるためには多角化しかないが、新事業の成功率はせいぜい30%程度であること、などどれもいわれてみれば当然と思えるものの、(特に大企業の)リーダー達が無視しがちな真理が豊富にちりばめられている。ただし海外進出に関しては、今となってみれば全く認識が間違っているように思われる -
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【星:3.0】
タイトルからはわかりづらいが経営学の本である。
そして、この本を読む前に楠木建「ストーリーとしての競争戦略」を読んでからの方がいい。
この本で言っているのは、企業の戦略は「バカな」と思われるような一見して非常識だが、よく考えてみると「なるほど」理にかなっている、というものが良いということである。
何となく当たり前のことを言ってる感じである。
この本がちょっと売れているのは、結構売れている「ストーリーとしての競争戦略」の内容を思いつくきっかけとなった本として楠木健が紹介したからである。
なので前記著書を読んで「良かった」と思う人出ないと感じるところは少ないと思う。 -
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楠木建教授の働きかけによる復刻本、ということで期待して読んだ。
初出が1980年代後半だけあって、さすがに挙がっている事例は古いのだけど、当時絶賛された企業が今現在どの程度競争優位を維持しているか確かめられる、という点では、公平に読めた。イビデンとか、ちゃんと高収益のまま生き残っている。
この手の、「エクセレント•カンパニー絶賛」系の本は、選択バイアスが綺麗にかかっていて、上手く行った会社の検証を一生懸命やるけど、同じことをやって上手くいかなかった会社の検証は為されないことが大半で、この本もその点は同様なのだが、著者の代わりに歴史が証明した感じでしょうか。
バブル前、バブル期も、企業は生 -
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バブル直前の時期、果敢な戦略で急激に成長した企業がいくつか取り上げられています。
平成30年にもなると、その選択はその後の環境に適応できず、倒産しているケースも多いです。
やはり30年以上企業を続けることは並大抵のことではありません。現在のビジネス本で流行っていることも、30年たてば恐らくほとんど通用しないでしょう。
そんな中、女性の力を活用しなくては、という点、これだけは30年ほど遅れてやっと現実になってきた感じがします。
考えてみれば当たり前。
今になってみれば当たり前。
では、30年先の当たり前を、今見つけられるか。
変化を求めること以外に、未来の当たり前をつかむ方法はないと思い -
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「ストーリーとしての競争戦略」の楠木健さんが薦めたことで再び脚光を浴びた、経営戦略の古典。
本書まえがきでも、楠木さんのおかげでまた売れてうれしい的なことが書いてあり、偉い先生なのに謙虚で面白い。
最近の経営学は、科学的というか、金融工学や統計学的アプローチで、ある程度客観的に評価できる理論でないと評価されにくいのだろうが、どんな理論の前にも直感的洞察・コンセプトメイクは必要なはずで、本書の「バカな」と「なるほど」理論は良い観点を提供してくれる。
経営戦略と言うと、すぐにSWOTだのPESTだの、誰がやっても同じような切り口の分析をして、出てくるのはおよそ戦略とは呼べない既存の延長だった