吉原英樹のレビュー一覧
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グレシャムの法則ーー「悪貨は良貨を駆逐する」
日常業務は、いつまでにしなければならないという納期がはっきりしている。その時間に間に合わないとペナルティを覚悟しなければならない さらにやるべき仕事の内容は決まっており、あれこれ迷うこと無く直ちに着手できる
これに対して企業を大きく変えるような計画を立案して実行することは、納期や評価がいずれも明確にきまっていない。
そのため、ついつい日常業務に席をゆずり、後回しにされやすく「10年遅かった」になるのである
松下電機の山下前社長はつぎのように語っている。「社長の仕事は、みんなが納得する危機感を探し出して、全員に自覚させることですよ。 それも第三者の目には順調にいっているように見える時に、危機感を持たせないと、何の効果もない。」(日経ビジネス 1986年1月6日) -
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戦略とは何か?
という 源流ともいえる 書。
昭和63年(1988年)に書かれたにもかかわらず、
そこにある 問題意識は 極めて新鮮。
会社をマネージする原理は、あまり変化がないのだ。
情報化、国際化、ハイテク化のなかで、企業はどう対応するのか?
企画とは 『バカな』(違い;差別化)を明らかにする作業であるが
それだけでなく、『なるほど』(合理性)がなければならない。
その二つがあって、着地できる。
違いだけでは 理解がされない。
『べき論』は 現状を維持し、保守的な思考である。
トレンドに基づいた『将来論』が 必要となる。
なぜ 失敗は 隠蔽されるのか?
『失敗』が 会社にとってのイノベーション。
しかし、『失敗』を報告することで、
しかられたり、罰せられる仕組みであれば
当然、隠されてしまうものである。
会社の仕組みは、失敗によって、カイゼンできるという
当たり前のことを マネージメントしておらず
犯人探しや 責任論に終始することで、
会社は失敗しつづける。
グレシャムの法則(組織慣性がある)
ルーチンワーク(日常業務)と革新業務は、
革新業務が 評価され難いし、駆逐される。
特殊化、差別化。
その中で 人事とは どうあるべきか?
2年ごとに 人事を経験させる。
キープ ヤング。
それは 情報化 国際化 ハイテク化に対応するため。
多角化戦略は どう構築するのか?
海外への進出への気構え
女性をわからないで 経営ができるか?
継続は悪であり 変化は善である。
どのような変化をしていくのか?
他人依存ではなく自力。
セレクトが 重要となる。
ハンディを克服するのは、技術力である。
『中国人が得意とするところは、お金であルトか、数量であるとか、目で見える問題については日本人よりはるかに敏感な本能をもっている。品質、時間と言った目に見えないものについては弱い。』
→ここにある 時間というのが 重要なポイント。
いまでも 通用する いい本である。 -
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自然科学における物理法則や数学定理のように、
およそ一般的に正しいと言える規約が、
人工的なモノに対しても存在するのだろうか?
というのが本書の根源的な問いかけである。
これまでは、組織や建築デザインなどは、経験則だけが頼りで、
科学的に分析できない、というのが当たり前であったが、
今日のコンピュータの進歩によって、モデリングしてシミュレーション
することにより、科学の対象として扱える可能性が高まってきた。
デザインにおいては、モジュール化、自己組織化、などが
キーワードになってくる。
など、結論だけ書くとありきたりな感じだが、
本書の洞察は、30年以上前のものとは思えないほど新鮮で、
現代に通用する普遍的なものがある。 -
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ネタバレノーベル経済学賞受賞のハーバード・A・サイモンによるシステム(人工物)にについて解き明かした本
サイモンは、昨今注目されている経営理論である「エフェクチュエーション」を提唱しているサラス・サラスバシーの師匠でもある。
人工物は、外部環境と内部環境の接面(インターフェイス)としてみることができる
記憶は内在化した外部環境の一部
人間の意思決定において
完全合理性のもとに、最適解を導くのは多くの場合不可能で、
限定合理性のもとに、満足解を導くことを提唱している
この考え方を用い、目的-手段分析と探索をすることによって複雑性の高い世界の中でも都度フィードバックを受けながら常に解を出して行くことができるし、現実的な組織行動はこのように行われている。
複雑なシステムは、階層によって整理できる。
いくつかのサブシステムの階層に分けて考えれば、複雑さは理解できる。
この本を読んで、サラスバシーのエフェクチュエーションは、まさにサイモンの組織行動を多分に下敷きにしていることがわかった。
またAIの大規模言語モデル(LLM)もサイモンの考え方をベースにしていることもよくわかった。
日本語版への序文において、
日本社会が人工物と自然環境を調和させていることに言及している。
盆栽を例に上げ、自然物と人工物の見事な混合の例として高く評価していることも興味深い。
かくて「システムの科学」の中心テーマは、いかなる適応システムもーそれが人間であれ、コンピュータであれ、さらにはまたしゃかいそしきであれ、自然物と人工物の調和的混合物に他ならない(日本語版(第2版)への序文)
これは私の個人的テーマである「自分とは何か」を探究する上でも大きな示唆になった。 -
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成功していている企業の一見「バカな」と思える非常識な経営判断が、よく考えられていて「なるほど」と思わせる合理的なものであったりする。
そんな企業のケーススタディを紹介している本です。
第一部の思考法の章が参考になりました。
「計画グレシャムの法則」のために企業のイノベーションが阻害されるといいます。”悪貨は良貨を駆逐する”という現象を組織論に応用すると、企業は往々にして日常業務という悪貨を優先しイノベーションをための計画業務は犠牲にされてしまうということ。
これに打ち勝つには
・期限や納期を明確にし
・期限などに間に合わなかった時の評価もあらかじめ明確にする
・注意の焦点もはっきりさせる
加えて、定期的に現状を見直し、新しいやりかたに変えること。人は「変えなければならない状態になればいつでも変えられる」という錯覚に陥りやすいものだが、変化に慣れておかなければ必要な時に変化を生み出したり変化を受け入れることはできないものである。とにかく新しいことをするのが当たり前の状態にしておくのが大事。これはプライベートの活動でもそうでしょう。 -
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楠木先生の「ストーリーとしての競争戦略」の核となる概念の着想は、本書から得たとのこと。1988年に初版が出版されたものだが、「ストーリーとしての競争戦略」の影響もあって復刊となった。
「…成功する戦略には二つの条件がなければならないことを教えている。差別性と合理性である。
差別性とは、多くの企業がとっている常識的な戦略とちがう戦略、つまり非常識な戦略である。平たくいえば、『バカな』といわれるくらい他者とちがう戦略である。
もう一つの条件は、合理性である。よく考えられていること、理屈に合うこと、論理的であることである。平たくいえば、『なるほど』と納得のできることである。」
「…『バカな』戦略の場合、模倣がおくれやすい。競争会社は『バカな』『あんなことをしたらおしまいだ』などと思っているから、じっとみている。その間、『バカな』戦略の企業は、足元を固め、創業者利潤を享受できる。やがてそのうちに、他者がその『バカな』戦略の成功に気づく。しかし、どう考えてもおかしいということで、なかなか模倣しようとはしない。」
先日日経新聞の記事で、エア・ウォーターがバイオマス発電所を福島に建設するとの記事があった。インドネシアやマレーシアのパーム油生産工場から出る廃棄物のヤシ殻のほか、東南アジアや北米などから輸入する木質ペレットを燃料に使うとのことで、ちょっと事情を知っている身からすると、これまでだったら、「バカな」で片づけてしまうところだが、何か特別な「なるほど」があるのでは、と考えるようになった。これは収穫である。
「業界間の落差を利用して戦略を発送するという方法からすると、遅れた業界の企業は幸せであるということができる。進んだ業界には答えがいくらでもあり、その答えをみながら、遅れた業界のなかにいる自分の会社のために戦略を発想することができるからである。」
「『バカな』といわれるくらいユニークな戦略を考え出すためには、一般には創造的な思考が必要ということができる。しかし、…ユニークな戦略を考えだすためには、かならずしもとびぬけた創造的思考能力が必要なわけではない。外国の答えをみながら、また進んだ業界の答えをみながら、自分の会社のために戦略の答案を書けばよいからである。」
「戦略を伝達する手段として、六つの方法をあげた。(1)口頭、(2)文書、(3)人事、(4)予算、(5)組織、(6)日常の言動の六つである。」
「…企業には既存事業を維持・拡大させようとする強い組織慣性という力があり、その反対に新しい事業など変化にたいして抵抗する力がある。新事業は、そういう変化への抵抗を克服して、ある意味で無理をして実行される。…新事業を育成し、軌道に乗せるためには、この社内の批判派の抵抗や批判に打ち勝たなければならない。そのときにも、社長などのトップのリーダーシップが重要な役割を演じるのである。」 -
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優れた競争戦略の2大要素である差別性と合理性を『バカな』と『なるほど』というシンプルかつ本質的な表現でまとめてある。確かにこれは合理的な考え方だ。
それ以上に感心したのは、いくら精緻に計画しても絶対に予測できない事態が生じること、人の考え方を変えるのは絶望的であって戦略にあった人材を選ぶことしかできないこと、継続的に会社を発展させるためには多角化しかないが、新事業の成功率はせいぜい30%程度であること、などどれもいわれてみれば当然と思えるものの、(特に大企業の)リーダー達が無視しがちな真理が豊富にちりばめられている。ただし海外進出に関しては、今となってみれば全く認識が間違っているように思われる。何のために海外に出るのかという所がすっぽり抜け落ちている。これさえなければ★5つ。 -
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【星:3.0】
タイトルからはわかりづらいが経営学の本である。
そして、この本を読む前に楠木建「ストーリーとしての競争戦略」を読んでからの方がいい。
この本で言っているのは、企業の戦略は「バカな」と思われるような一見して非常識だが、よく考えてみると「なるほど」理にかなっている、というものが良いということである。
何となく当たり前のことを言ってる感じである。
この本がちょっと売れているのは、結構売れている「ストーリーとしての競争戦略」の内容を思いつくきっかけとなった本として楠木健が紹介したからである。
なので前記著書を読んで「良かった」と思う人出ないと感じるところは少ないと思う。 -
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楠木建教授の働きかけによる復刻本、ということで期待して読んだ。
初出が1980年代後半だけあって、さすがに挙がっている事例は古いのだけど、当時絶賛された企業が今現在どの程度競争優位を維持しているか確かめられる、という点では、公平に読めた。イビデンとか、ちゃんと高収益のまま生き残っている。
この手の、「エクセレント•カンパニー絶賛」系の本は、選択バイアスが綺麗にかかっていて、上手く行った会社の検証を一生懸命やるけど、同じことをやって上手くいかなかった会社の検証は為されないことが大半で、この本もその点は同様なのだが、著者の代わりに歴史が証明した感じでしょうか。
バブル前、バブル期も、企業は生き残りを賭けて、試行錯誤を繰り返していて、漫然と成長した会社なんてないんだなあ、と、いま成熟産業にいる身としては、勉強になった。
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「ストーリーとしての競争戦略」の楠木健さんが薦めたことで再び脚光を浴びた、経営戦略の古典。
本書まえがきでも、楠木さんのおかげでまた売れてうれしい的なことが書いてあり、偉い先生なのに謙虚で面白い。
最近の経営学は、科学的というか、金融工学や統計学的アプローチで、ある程度客観的に評価できる理論でないと評価されにくいのだろうが、どんな理論の前にも直感的洞察・コンセプトメイクは必要なはずで、本書の「バカな」と「なるほど」理論は良い観点を提供してくれる。
経営戦略と言うと、すぐにSWOTだのPESTだの、誰がやっても同じような切り口の分析をして、出てくるのはおよそ戦略とは呼べない既存の延長だったり、あるいは競合との差別化だけを強調したものだったりすることがありがちだ。
「バカな」と「なるほど」を読むと、(SWOTとかもやっているのかもしれないが)大切なのは経営者の先読みと意思であることがよく分かる。
古典なので事例が古く、(ストーリーとしての…と違って)人にしゃべりたくなるような内容ではないが、分析マニアになる前に読んでおくべき一冊。