Posted by ブクログ
2021年08月08日
楠木先生の「ストーリーとしての競争戦略」の核となる概念の着想は、本書から得たとのこと。1988年に初版が出版されたものだが、「ストーリーとしての競争戦略」の影響もあって復刊となった。
「…成功する戦略には二つの条件がなければならないことを教えている。差別性と合理性である。
差別性とは、多くの企業...続きを読むがとっている常識的な戦略とちがう戦略、つまり非常識な戦略である。平たくいえば、『バカな』といわれるくらい他者とちがう戦略である。
もう一つの条件は、合理性である。よく考えられていること、理屈に合うこと、論理的であることである。平たくいえば、『なるほど』と納得のできることである。」
「…『バカな』戦略の場合、模倣がおくれやすい。競争会社は『バカな』『あんなことをしたらおしまいだ』などと思っているから、じっとみている。その間、『バカな』戦略の企業は、足元を固め、創業者利潤を享受できる。やがてそのうちに、他者がその『バカな』戦略の成功に気づく。しかし、どう考えてもおかしいということで、なかなか模倣しようとはしない。」
先日日経新聞の記事で、エア・ウォーターがバイオマス発電所を福島に建設するとの記事があった。インドネシアやマレーシアのパーム油生産工場から出る廃棄物のヤシ殻のほか、東南アジアや北米などから輸入する木質ペレットを燃料に使うとのことで、ちょっと事情を知っている身からすると、これまでだったら、「バカな」で片づけてしまうところだが、何か特別な「なるほど」があるのでは、と考えるようになった。これは収穫である。
「業界間の落差を利用して戦略を発送するという方法からすると、遅れた業界の企業は幸せであるということができる。進んだ業界には答えがいくらでもあり、その答えをみながら、遅れた業界のなかにいる自分の会社のために戦略を発想することができるからである。」
「『バカな』といわれるくらいユニークな戦略を考え出すためには、一般には創造的な思考が必要ということができる。しかし、…ユニークな戦略を考えだすためには、かならずしもとびぬけた創造的思考能力が必要なわけではない。外国の答えをみながら、また進んだ業界の答えをみながら、自分の会社のために戦略の答案を書けばよいからである。」
「戦略を伝達する手段として、六つの方法をあげた。(1)口頭、(2)文書、(3)人事、(4)予算、(5)組織、(6)日常の言動の六つである。」
「…企業には既存事業を維持・拡大させようとする強い組織慣性という力があり、その反対に新しい事業など変化にたいして抵抗する力がある。新事業は、そういう変化への抵抗を克服して、ある意味で無理をして実行される。…新事業を育成し、軌道に乗せるためには、この社内の批判派の抵抗や批判に打ち勝たなければならない。そのときにも、社長などのトップのリーダーシップが重要な役割を演じるのである。」