山下慎一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
父親の介護が必要になったことに加え、私も離職を経験し、社会保障に関心を持つようになった。
本書は、社会保障の歴史的背景を語りつつ、憲法上の勤労の義務や倫理観が及ぼす影響について、考察している。非常に面白かった。
そもそも、私も憲法上に規定されている勤労の義務とはなぜ存在するのか?と常に思っていた。では、生存権に基づく生活保護とは?みたいな素朴な疑問が湧く。
現状の法解釈においては、国民は勤労の義務を負う見返りとして、社会保障が存在するという解釈が一般的なようである。しかし、その”勤労”とは、主に会社に雇用される「労働者」であり、そもそも「自営業者」はあまり考慮されてこなった背景を知った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ日本の社会保障は制度が複雑。
意識がブレーキになる可能性がある=憲法27乗の勤労の義務既定が邪魔をする。
社会保険では、傷病手当金と出産手当金が国保と違う点。
雇用保険は自営業者にはない。求職者支援制度がある。
労災時は、治療費はゼロ、自営業者は健康保険だから3割負担。
労働者と自営業者の差異は大きい。
もともとは1941年の労働者年金制度が始まり。1959年に自営業者の国民年金ができた。
自営業者は、就業の形、所得の形が違うという理由で傷病手当金がない。
家族経営の農業が多く、失業を想定していない。非自発的な失業を想定しているので、雇用保険はない。
労働者中心の社会保障が確立した。
社 -
Posted by ブクログ
社会保障制度が分かりにくい。分かり難すぎて、社会保険料と混同したのか説明がしどろもどろで炎上した政治家がいたくらいだ(皮肉)。分かりにくいという事は、使いにくいという事。これが意図的だというので、ややこしい。
社会保険料は半ば強制加入、強制徴収。対して社会保障は、自ら給付を申請しなければならない。その給付条件を満たしているかという確認や手続き、そもそも認知されていない補助金などもある上、一定期間行使しなければ権利消滅してしまう場合もある(時効消滅)。
知らないのは誰が悪い?知ろうとしない国民か。知らせない行政側か。情報提供義務という論点があり、義務違反をめぐるトラブルについても本書が解説し -
Posted by ブクログ
20241025-1106 本書は日本の社会保障制度が何故使いづらいのかという疑問を制度成立の歴史から追って、現在の制度に至るまでを解説している。日本の公的年金制度は軍人や官吏に対する恩給から始まるが、1941年の労働者年金制度の成立が、現在の公的年金制度に直接つながるものである。戦前は雇用者より自営業(家内制手工業など)や農業従事者が多く、企業等に努めているいわゆるサラリーマンは労働者の多くを占めてはいない。そのため、失業、離職、老齢になって働けなくなることは無産者である雇用者にはリスクが大きすぎるため、年金制度が先に成立したのだといいう。この戦前の仕組みを基本的には現在でも受け継いでいる、