三冠達成から30年という節目に出版されたナリタブライアン本。著者はサンスポ記者/Gallop編集長などを歴任している。
大久保調教師・山路オーナー(そして言及はないが清水英次騎手)は亡くなっているが、南井騎手をしっかり取材している。ほか3名の(元)騎手のほか、最後には早田光一郎氏の刑事事件のエピソードも。村田さんとは連絡取れなかったのかな?
戦績や血統などが一切載っていないのは、スマホで簡単に検索できるからだろうな。それでいて、400ページ弱もあるんだからびっくりする。
時代を反映しているのが、「マル外」に注釈がついたり、シャドーロールが画期的だったことが説明されていること、大久保氏が香港にいながら短波ラジオで朝日杯の結果を聞いていたことなど。ほほえましく読んでいたら、サンスポが田原氏と関係が悪い、という話を見て一瞬「あれ、なんでだっけ」と思ってしまった。直前に佐藤洋一郎氏の文書まで載ってたのに。
基本的には、鈴木氏の主観が出ているノンフィクションルポのような形式。立場をフルに活用し、現役当時のサンスポやGallopからの引用もふんだんにある。木村幸治氏がGallopに載せた文章も引用されている。
ナリタブライアンの高松宮記念出走について語る南井・田原元調教師の話も興味深いし、岡部元騎手が清水英次氏の話題から入ったのもびっくり。また、森秀行調教師がノーザンポラリスの菊花賞回避に言及していた話題が載っているのも嬉しい。
三冠から30年ということで、上述の早田氏の栄枯盛衰や、ナリタブライアンの種牡馬成績などにも触れられているし、ナリタブライアン記念館のその後も出てくる。
このタイミングでブライアンの本を出そうと思った出版社も凄いが、きちんと当時の取材ノートを残しつつ新たに取材もおこなって重厚な本を仕上げた鈴木氏も素晴らしい。
なお、1点、95年天皇賞の妄想実況だけは明確に余事記載だと思う。