稲垣武のレビュー一覧
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終戦後の中国北部の日本人の戦い。
相手が米英ならまだしも、ソビエトの占領下では日本人居留民の安全な帰国は難しい。そこで古来からある要衝に立てこもってソビエトを足止めし、張家口の民間人が脱出する時間をかせいだ日本兵の話。
日本兵、ソ連軍、国府軍、八路軍の四つ巴の争いはややこしく、ある程度の基礎知識が要る。中国では基本日本兵は国府軍に投降することになっていたが、八路軍も隙あらば日本兵を取り込もうとする。中国の2つの陣営はもう国共内戦の準備段階に入っている。蒋介石の「以徳報怨」は八路軍との戦いで日本兵を味方につけることも意図している。どちらの軍も結局、多くの日本の武器で戦う(両陣営にある程度の日 -
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終戦時の満州からの引き上げの悲劇はよく知られているが、内蒙古からの引き揚げを、体験者の聞き取りから繋ぎ合わせてドキュメンタリーにしている。私はほとんど知らなかったが、蒙古駐留軍が決死で旧ソ連の侵入を防いでくれたおかげで、在留邦人4万人を救ったという。体験者の証言がもとになっているだけあり、その時に人々の生活ぶりや、日本のために死んでいった兵隊の心意気や覚悟がまざまざと記載されており、現代人としては重く受け止められる。それだけでも本書を手に取る価値はある。
ちなみに、武装解除命令に従わず、在留邦人の避難完了まではソ連に対して防戦する英断を下した人物、根本博陸軍中将は、その後に台湾に渡って中華民国 -
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山本七平の著作からの引用と、それに対する著者のコメントによって構成されています。
著者は山本の仕事を総称して「山本学」と呼びます。山本学の中心は日本人論であり、「日本人のものの考えかた感じかた見かたにはどういう特徴があるのか、その日本人が群れ集っている日本人社会は、どういう見えざる原理で動いているのか、その日本人社会の運行原理に対処するにはどうすればよいのか」という問題が、考察されました。
山本は、日本人の心性について大理論を振りかざすようなことはしなかったと著者は言います。本書は、「おだやかに、静かに、いくぶん低い声で、ささやくように」語られた山本の著作から、そのエッセンスを抜き出し、分