高木光太郎のレビュー一覧
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人の記憶の脆さと、その脆さに頼らざるを得ない裁判。
記憶は体験を発酵させ、少しずつ変化させていく熟成庫のようなもの、蓄積されて動かない倉庫ではなく、いろいろな情報を複雑にリンクさせていく開かれたシステムだといいます。
ウォーターゲート事件でのジョン・ディーンの事例。自民党本部放火事件で「電磁弁」を購入した人物について販売店員の「善意で生まれた」記憶。甲山事件の園児証言に関するフィールド実験。
いかに、人の記憶が、無意識に悪気なく「変化」して、生まれて、定着してしまうかがわかりました。
事件からしばらくたって、日常的な出来事について思い出すよう求めて話された「記憶」は、あやしい。
「じゃあ物証な -
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会社の飲み会(年配のおじさん多い)は面白い。毎回毎回必ず「例」の話が出てくる。例えば皆んなが受けた地獄の様な研修の思い出話、皆んなが尊敬していた同僚が突然亡くなった後の故人との思い出話。毎回ほぼ同じストーリーで語られ、同じ所で笑いや懐かしさに襲われる。考えてみたら、それ程同じ話を変わらず繰り返せる話者も凄いが、いかにも初耳であるかの様に笑える聞き手も凄い。双方の記憶力の対比を数ヶ月間隔で定期体験している。
私も同じ研修話をするが、最早何度も話をしてるうちに、自分が体験した事なのか、他人の経験を自分事として話してるのか怪しくなっている。
それ程に日常的にも周囲とのネットワークで記憶は作られていく -
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ネタバレ[ 内容 ]
人は嘘をつこうとしていないのに、体験していない出来事を見たり聞いたりしたと証言してしまうことがある。
証言の聴き手が、それと気づかないうちに虚偽の証言や自白を生み出す手助けをしてしまうこともある。
人間の記憶は脆く、他者の記憶とのネットワークによって成立している。
これを法廷という非日常の「現場」に生かすことは果たしてできるのか。
興味深い実例を交え、心理学研究の最前線をわかりやすく説明する。
[ 目次 ]
プロローグ 三つのキーワード
第1章 記憶の脆さ
第2章 ネットワークする記憶
第3章 正解のない世界
第4章 ギリギリの挑戦―目撃証言への実験心理学アプローチ
第5章 内 -
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10冊目です。
この本はいかに人の記憶があいまいでかつ不確かなものかということを教えてくれます。例えば普段の生活でも「おとといの
夕食なんだったっけ?」ということなどよくありますね。その程度であれば当たり前のことのように思えますが記憶の怖いところは
体験していないことでも勝手に加工されあたかも体験したかのように思ってしまうことです。どういうことかというとあまり覚えていない
ことについて(前述の夕食のことについてなど)、人から「おとといはカレーじゃなかったっけ?」などと言われてしまうと「あ、そうだったな」
などと思ってしまうようなことです。これがまだ日常生活の範囲内であればよいのですが犯罪にお -
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記憶というものがいかに脆く、また取り調べや法廷という非日常的なコミュニケーション場面であることもあいまって、いかに事実と離れた創作された事実が生み出されるか、といった問題について述べられている。「法心理学」という分野での研究者のジレンマや、具体的な研究法などの紹介が、実際に起こった事件をもとになされている。序盤は記憶の一般的な性質について、中盤は法心理学という分野の特異性、終盤は主に1990年に起こった「足利事件」の容疑者の供述をめぐる具体的な分析について。
最近、生徒相手に何してたの、誰がその場を見たの、何て言ったの、なんて警察まがいのことをやることがあって、その証言を聞きながら、記憶が -
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「証言」を検証することによって、人の記憶の脆さを明らかにする。もともと記憶はいい加減なところがあるのではないか、という漠然とした思いがあった。本書では証言を心理学的に検証することによってそのことを明確にし、記憶が変遷する要因分析を紹介している。結局記憶とは人間の解釈にすぎない不安定なものであり、それを共同想起や外的記憶装置によって補っている。しかしその場合でも解釈・想定・常識・仮設・社会的圧力が入り込んでしまい、たとえ善意の人通しであっても間違いが増幅される可能性があることを示している。「普遍的知識」を持つ心理学者が、「不確かな断片」を手掛かりに過去を再構築することがいかに困難であることか。さ