御輿哲也のレビュー一覧

  • 灯台へ

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    非常に独特の文体で、使っている言葉や世界観が難しいわけではないのに難しく、何度も戻って読み返す必要があった。視点が非常に流動的で、誰視点での文章なのかを見失いやすい。しかし感情の表現が非常に繊細かつ美しく読んでいて飽きない。
    事前知識をあまり入れずに読んだので、第一部の時点ではどういった物語なのか掴めず、第二部に入った瞬間に急に物語が一転し驚いた。
    ドラマティックな出来事は作中のシーンでは描かれず、物語のプロローグとエピローグだけを切り出したような作品だ。そうすることで平坦でありながらも衝撃的であり、静かで落ち着いた作風でありながらも飽きさせない名作だった。

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    2026年02月10日
  • 灯台へ

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    灯台のそばの屋敷と、そこに滞在する人々の物語。ラムジー夫妻の関係性は陰影に富み、非現実的ながら極めてリアル(こういう夫婦、どこかにはいそう)。ほかの登場人物も違う時代のイギリス人なのになんだか知り合いのような気がしてくる。美しいものをどこか醜悪に、なんでもないものを美しく描き出す、本筋とは関係ない描写も見どころ。読み終わるのが悲しく感じた。

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    2024年10月06日
  • 灯台へ

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    第一次世界大戦というそれまでの歴史に類を見ない惨劇が世に暗い闇を落とし、そのことが当時の人々の中に道徳的な葛藤や、生きることへの哲学的な思索を促したであろうことは想像にかたくない。そうした闇のような世界の中で「灯台へ」というタイトルはとてもシンボリックであり、実際darknessとlightningは本書に繰り返し用いられるフレーズで、作品の重要なテーマのひとつとなっている。
    本来、人が人のことを理解することは容易な作業ではなく、どこまでいっても推測の域を出ないものである。それは例えると、自己と他者の間には常に暗闇があるようなもので、とくにここでは、戦争という時代背景がその闇をさらに深くしてい

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    2023年09月02日
  • 灯台へ

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    こんなに長いのに、一日の物語。
    風景描写がただただ美しく、よく知らないまま思い浮かべていた風景と、読後に調べてみた時に見たスカイ島の風景がそこそこ合致していて慄きました。
    文章だけでこれだけ伝えられるってすごい。

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    2023年05月17日
  • 灯台へ

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    「明日、灯台へいく」その約束をした家族が崩壊し、その約束で再度集まるような物語。
    3部構成の1冊。同じ感情を持たずとも一緒にいる家族。そこからの崩壊と最後の描きが強烈。すべてを理解できてはいないけれど、ラストの風景、ヤヴァイ、泣く。

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    2023年01月28日
  • 灯台へ

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    小説はやっぱり素敵だなと思う。
    焦点をあてているのが、何か大きな出来事ではなく、折り重なり揺れ動く人の感情であるところが好きだった。誰もが人との関わりの中で、意識と記憶を織り交ぜて生きてる。その絶妙なバランスが表現できる方なのだと思う。

    また、リリーが真に自立を得る様子の描写が素晴らしかった。

    私は、こういう作品に小説の醍醐味が詰まっていると思う。

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    2021年03月12日
  • 灯台へ

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    第一部ではたった1日の出来事を意識の浮遊と比喩の連鎖にたくして語りが進んでゆく。第二部になると嵐のなかで急速に時間がながれ、第一部でも絶えずちらついた灯台の影が妙な主体性を帯びるように感じる。個人的にはこの章が最も好きだった。そうして10年の月日がながれると、第三部では幻想と現実がおおいに入り乱れる。静かながらも重みのある小説だった。

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    2018年01月26日
  • 灯台へ

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    小説であるが小説ではない。言葉も展開も見事。さまざまなところに意識がいきわたりそれを言葉にすることをどこまでも追求しているのがわかる。本当に面白かった。

    作中言葉の無力さを嘆く場面、ラストの場面などから筆者の葛藤や決意が見て取れる。芸術に対する態度についてしっかりと作中で言及し表明していることは、彼女の人生を写しとった作品だからこそ顕在化した父の影響なのであろうか。

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    2017年02月21日
  • 灯台へ

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    わずか400ページに凝縮された10年の歳月、でもその遠隔が確かな重みをもってこちらに伝わるのは構成の妙ゆえか。時の流れの描写が展示品のように端正だった

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    2015年11月22日
  • 灯台へ

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    非日常を書く作家は数多くいるが、なんでもない日常を書く作家は少ない。
    事実を書いた作品は山ほどあるが、心を書いた作品は少ない。
    これはなんでもない日常、その場にいた心を書いた作品。ウルフさんまじ半端ねぇ。

    いつもと違う物語を読みたいという方へ。

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    2015年08月14日
  • 灯台へ

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    なんて美しい小説なのだろう。波の満ち引きの様に押しては返す内面の機微、それを優れた知性と洞察力によって掬い取り、繊細に言葉を紡ぐ事によって日常に寄り添う幸福や憂鬱を情景豊かに描き出す。家族と友人たちの一日の風景と瞬く間に過ぎる10年という歳月、そして再び描かれる一日の風景。内面描写の主体を次々と移しながら表象には出てこない感情のひだまで丁寧に描き出すその文章は、雪の結晶の微細な美しさに触れた時の感覚に似ている。だからこそそれはどこか儚く、触れてしまえば粉々になってしまいそうな危うさも感じさせてしまうのだ。

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    2013年06月06日
  • 灯台へ

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    読み終わった後、自分がなにを読んだのかよくわからなくなってまた繰り返し読んでしまうような本。
    文章の力のせいかどんどん読めてしまう。書いている内容はある意味ほんとうに生々しいのに、どことなく清潔ですらすらと読める。

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    2011年12月10日
  • 灯台へ

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    今まで読んだことがないタイプの小説。独特の読みづらさがあり、不快では決してないものの、終始違和感を抱えながら読み進めた。
    この小説には明確なストーリー性はほとんどなく、主要な登場人物の意識の微妙な動きがひたすら描写されている。意識は浪々と流れる。まだここにいるのかと思えば、突然別の場所に飛んでいく。だから、中々ついていけない。自分自身の意識でさえ追いつくのが難しいのに、架空の人物の意識となると、なおさらだ。意識の早さ(あるいは遅さ)についていけない感覚が、読んでいる間じゅう抱き続けた違和感の正体なのだろう。
    このような小説も存在するのだという事実は新鮮で、貴重な読書体験となった。

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    2024年12月29日
  • 灯台へ

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    すごく面白かった。
    第一部「窓」では8人の子どもをもつ良妻賢母ラムジー夫人から見た1日の出来事が描かれている。ラムジー夫人は美人で、気分屋の夫ラムジーをよく観察してケアし、バラバラな人達を繋ぎ止め、誰からも好感をもたれる魅力があるが、結婚することが女の幸せという古い価値観に疑問をもたず、牛乳や水道のような取るに足りない生活の話題ばかりをする点から、一部の人からは愚かしいとも思われている、一つの理想の母親像を体現している人物である。しかし、ラムジー夫人は女性として求められた役割を果たしていることに自覚的で決して頭が悪いわけではなく、一人で灯台を見つめる時間を必要としており、典型的な母親像をはみ出

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    2024年01月21日
  • 灯台へ

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    こんな小説は初めて読んだ。

    人物の視点で、意識の流れる様子を整理したりせずそのまま映し出したような文章。
    人から人へ、するすると視点が切り替わっていく。
    それでも置いてけぼりにはならず、実際の人間の頭の中ってこんな感じだよなあ、と自然に感じられた。

    【印象に残った表現など】
    ・哲学者のラムジーが妻の同情を求める様子。
    「生命の輪に参入して励まされ宥められることを求め」

    ・ラムジー夫人「いろいろ人に与えたい、助けてあげたいと思う自分の気持ちも、虚栄心にすぎないのではないか」
    (これは考えたことある。)

    ・普段の生活での人間性と学問における偉大さの乖離。
    (これも実感としてわかる。)

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    2023年07月02日
  • 灯台へ

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    ネタバレ

    思考の大間違い(たとえば、世界が自分ひとりのために完結しているというような)を冒しているときに読み直したい本。人びとが、さまざまの視点からさまざまのことを、物語がばらばらになりそうなほど語るけれど、それはその実細い糸で丁寧に縫い合わされて、読者を場から離さない。……かと思えば時はあっという間に過ぎ去る。そうして最後は、印象的な場面(シーン)の数々をひとりの人物のもとイメージのもとに残して幕を閉じる。こんがらがっていた真珠のネックレスが、糸をするするとただされて、終わりにかちりと留金をされたよう、でもあって、奇妙な充足感とともに、裏切りを成し遂げたみたいなおかしな達成感を見た。

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    2022年08月07日
  • 灯台へ

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    イギリスの女流作家。初期の“Jacobʼs Room”(1922)あたりから伝統小説のプロットや性格概念に対して実験的再検討を試み、”Mrs. Dalloway”(1925)や”To the Lighthouse”(1927)などで刻々と移り変わる人物の意識の流れを叙述していく方法を確立

    ウルフは外側のリアリズム、すなわち人間の外面的なものをいかに現実らしく書くかを重視した19世紀のリアリズムを否定し、独自の新たなリアリズムを作り出そうとした。

    いわゆる実験小説と呼ばれる彼女の三つの作品、『ジェイコブの部屋』『灯台へ』『ダロウェイ夫人』を比較してみると、それぞれの作品における客観的時間の長

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    2022年02月22日
  • 灯台へ

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    きっと多くの作家がウルフの作品から、神の啓示ではないけれど影響を受けたのではないかと思う。
    だってそういうイマージュを引き起こさせるものがありすぎる小説だもの。

    はじめ、とりかかりは難しいなーと思った。
    意識の流れが登場人物のあの人この人に飛ぶものだから、
    人物関係がぼんやりとして戸惑い、いらいらさせられたのだけれど、
    慣れてくるにつれ心地よく全体の流れに身をゆだねていた。

    古き良き時代、美しき良妻賢母のラムジー夫人は哲学者で気難しきラムジー氏と
    8人子ども達と仲良く別荘暮らしをしていたそうな。

    そこはイギリススコットランド北西岸沖、ヘブリディーズ群島のひとつの島。
    別荘に招くお客も多く

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    2021年09月04日
  • 灯台へ

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    ”百年の誤読”から。最近専らそればかり。それはさておき、これは言ってみれば、灯台へ行くだけの小説。何じゃそらって感じだけど、内容のことを表現するとしたらそうなんだもの仕方ない。文章の美しさに心酔するって読み方が、いまひとつ身についていない自分だから、きっと本書も味わい切れていないんだと思う。美しい文とか、素敵な表現とか、そういうのを目いっぱい味わうための小説だと思う。人物描写とか物語の内容だけでいうと、これより没頭できる作品は数多あると思うもの。でもウルフ作品、他にも挑戦したい。もう少し分かりたい。

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    2017年10月20日
  • 灯台へ

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    ヴァージニア・ウルフの小説は、読んでいる時は淡々と進むのだけど、読後、時間が静かに、澱が重なるように残っていて好き。

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    2017年07月30日