更地郊のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ヘンテコな形の座りにくそうな椅子、と思ってちょっとずつ座っていくと、ふわりと受け止めてくれる。思わず笑み。そして今、この物語という椅子にヨギボーのように気持ちよく座っている。……
もうすぐ都落ちする野中の身に、思わず笑ってしまう謎の出来事が次々と降りかかる。当惑していちいち変な行動を起こす彼を、追体験していく。
いかにも寂しそうで底辺な彼の最後の東京の日々。そんな影にしか咲かない小さな花はあるんだね、やっと見つけた、って思った。
徐々にわかってくる格ゲーの世界感と、彼の「択る」生き方が重なっていく。彼の不自由な人生がユーモラスに描かれていき、なぜか深く心を打った。
──どうにかなる。そうであってくれ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ佐川恭一を感じた。当たりのはてなブログを読んでいる時なような読み心地で好きだった。
コロナ禍に社会人になり挫折し、メルカリの売れ行きやMBTIやビットコインに翻弄されているの、私すぎると思った笑笑笑、唯一ストファイだけわかんないけど世代ドンピシャだろうな。
“あってほしかった愛も豊かさもなく、主に怠惰とたまにある勢いだけの日々”あまりにも今の私の生活を表した言葉で刺さってしまった。
主人公とメッセージの主との接触するかしないかの攻防とか、全てを諦めて実家に戻らされる諦念の間に起こす急な思い切った行動の緩急が面白かった。
主人公、生気がなく、みみっちい方法で小銭稼いでたり嘘ついたりする割に、自販機オーナーの言葉遣いを制したり、高校生の言葉遊びの感性を擁護しようとしたり、やらせユーチューバーやAI作曲に羞恥し怒ったり、本人なりの正しさに則って生きているのが人間味があって良かった。
側から見たら意味がわからない
粉瘤を絞って謎メッセージの書かれたテープをメルカリで売る野中も、
現実の鬱屈を、承認欲求の外側の身近な自販機で晴らそうとする高校生たちも、
内圧を減らすためひたすら人生のサブクエストを消化する忍も、
別に誰に知られるともなくする当たり前の枠から外れた変な行動って、その人をおもしろい人間たらしめてて愛おしい。
流行りや世間を揶揄い、そんな自分を馬鹿にしながら生きるのは確かに先細るだけの人生かもしれないけど、どんなことでもいいから謎の達成感に生かされて、自分の生き方を肯定できたら、こういう人間が一番最強になるだろうなという確信がある。
全然忍のように努力もなしに運だけでfireしたいけど、ああこういう虚無に襲われる可能性もあるのかと、冷静になれた笑。
もっと自分に新しい価値観と、多くのものを面白がって深く楽しめる感性と、人と違う生き方を愛しめる図太い神経を養っておかなくてはと思っちゃった。 -
Posted by ブクログ
底辺青春小説‥‥まさしく。
うまくいってない人達のお話です。
会社を辞めた主人公も、色々あって知り合った高校生達も、うまいこと社会に馴染めていないのですが、おそらく自分には自分の道があって、あちら側に敢えて迎合しないという意志を持っていると思うのです。
でも、大人になっている主人公は、それではお金は手に入らないということも理解している。
けれど心身が元気でなければ動けない。
面白おかしい展開で読ませてくれますが、私は笑えなかったな(悪い意味ではなく)。
主人公は都落ちはしますが、そのために動く決断をしたということです。ラストはなんだか爽やかな感じがして、嫌いではない一冊でした。 -
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ネタバレ読書系のyoutubeで進められているのを見て購入。随分前に読み終わったのに、忙しさにかまけて感想を書けずに放ってあった。残っている印象としては、仕事でうまくいかず東京から実家へと戻っていく主人公の心持ちを描いているのだけれど、とてもわずかな心の動きを丁寧に面白く書いている。
落胆とおかしみとか寂しさとかモヤモヤとした思いが落ち着いた声のトーンで伝わってきて、面白く読んだ。小さいけれど大切な感情の揺れを描写している、という感じ。ビットコインで使いきれないほどの大金を手にしてしまい、人生を持て余して逆にきつい状況にある友人の話など、すごく丁寧に人生の充実と裏寂しさの機微を見つめている作品だったように思う。
若者言葉、ゲーム用語、若い世代の文化の描写も多く、私には感じ取れていない言葉の面白みがたくさんあるのだろうと思う。若い世代が読むともっとビビッドに楽しい読み物なのかもしれない。付箋を貼ったところを読み直してみても、なぜここに付箋を貼ったんだろう、、と思うばかりで、やはり読みながらのドライブ感で感じるものがある作品なのかなと思った。またしばらくして読み直してみようと思う。 -
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ネタバレへんなの、と思いながら読んだ。面白い。
東京の何もかもがあって何も無い絶望感と主人公の空虚さがマッチしていて引き込まれた。
「まだ若いからなんでも出来るね」と言われましても僕たちは既に疲れている。
そう言ってくる大人の方がよっぽどエネルギーに溢れているように見える。
SNSのせいなのか時代のせいなのか原因は分からないけど、とにかく僕らは疲れている。
この小説の登場人物も皆、若いがそれぞれ疲れている。
主人公より若い学生も疲れている。
モラトリアムを打破するような大きなイベントでは無く、当たり障りのない、可もなく不可もない出会いやコミュニケーションの方がよっぽど自分たちを癒してくれるのかもしれない。
コミカルな文体と粉瘤や引きこもり時の描写のリアリティさにくらくらした。
宇多田ヒカルなどの固有名詞の使い方も面白い。
物語終盤、グッときた。
なんでヤクザのふりしてんだよ。とか本で防御する姿のシュールさを想像しながらもグッときた。
自販機にテプラを貼るささやかな抵抗。
都落ちした野中の今後も気になる。
「俺、就職したくない」と言いながらいつもマウンテンデューを飲んでいる友人の姿を思い浮かべながら読んだ。 -
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忍とのサイゼでの会食場面から始まる、地元に戻る"都落ち"までの日常。こういった社会人以降も続く閉鎖的な友人関係に憧れる。
ストリートファイターを大学時代からの共通トピックとしているものの、その他日常で巻き起こる騒動やら周辺人物との関わりもどこか温かみを感じる。こういったやり取りをして、それを最後に東京を離れる哀愁も、最後になる忍との別れも、その後の主人公・野中の生活も気になるところ。
文章としては読みやすいのに、破綻しないレベルでギャグやユーモアが散りばめられていて、作者の名前然り町田康のような趣がある。
状況は芳しくないものの、生命をなんとか維持して復活・更生したような希望がある。
すばる文学賞の太田ステファニー氏の作品もだが、固有名詞が多いし、ユーモアや技巧が凄かった。
こういう妙齢期の遅い青春小説みたいなの良い。
「オマトゥマヘーオマヘマンヘー」の文言の謎の伏線回収。 -
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東京の西の方に住む、鬱からの無職男野中と、その腐れ縁の友人忍。忍は内圧の分散と言って野中に毎月十万を送り、通信ゲームを一緒にプレイするように言った。
そんな生活を送っているうちに、父親の病状悪化を機に、これで俺も都落ちか、と九州に帰ることにする野中。しかし帰る前、灰色の日常の中に異変が飛び込んでくる。
最後までくだらない。めちゃくちゃドラマチックでもない。けれど灰色に少し色味が加わったような、そんな読後感。
ゲームを通じた腐れ縁、ベタベタに仲良いわけじゃないけれど、とりとめのないくだらない話変な話が出来る気のおけない関係の野中と忍。
底辺青春小説とは言うけれど、眩しかないけど羨ましい。 -
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第49回すばる文学賞受賞作品の本書を私が読みたいと思ったのは、金原ひとみさんと岸本佐知子さんの選評に興味を惹かれたからであり、特に岸本さんに関しては、海外の作品ではなく日本のそれを推しているのが、また珍しいなと思ったことも大きかった。
物語の印象として、岸本さんのエッセイに書かれているような奇妙ながらもクスッと笑えてしまう感覚があり、それは一見、意味不明ながらも読んでいく内に「なるほど」と腑に落ちるタイトルや、『あり得ない』と思える部分と『あり得るかも』の狭間に佇む絶妙さが魅力のエピソードに潜まれた、くだらなさの中にも漂う人間味が魅力となっている。
旧友で雇用主の「忍」(27歳)の存在が、パワハラにより無職となった「俺」の人生を変えてくれた、と書くと美しき友情の物語に感じられるかもしれないが、二人の間に漂うのは、どちらかといえば好き放題にツッコミし合える腐れ縁的な関係性で、そうした常に笑いを引き寄せるような雰囲気が、彼らに降りかかる奇妙でありながらツボにハマりそうな出来事とよく合っている。
物語の設定上、対戦格闘ゲーム「スト6(ストリートファイター6)」の専門用語の登場頻度の多さには戸惑いこそあるものの、それでも岸本さんのエッセイが好きな方には一読をおすすめしたく、それは時に笑いの裏に切実な思いが潜まれた共通点だけではなく、最新のものとレトロなものが共存する令和の文化の素晴らしさが、物語で見事に表現されているからであり、それは『マウンテンデュー』を同じ自販機でずっと買い続けるルーティン自体が、後に大変思い出深いものとなることからも分かるように、『異形の底辺青春小説』と呼ばれる本書ではあるものの、「俺」本人にとってはきっとこれはこれで悪くないと実感できるような、どんな環境に於いても自分自身の生き方に肯定感を与えてくれる物語こそが、本書最大の魅力なのだと思う。 -
Posted by ブクログ
都落ち択って何⁉︎っと思って
本を開いたら
久々に読んでいて笑ってしまうし、
その中で微かな青春も感じ取れる
不思議な本でした。
メンタルを病み、落ち込んでいた主人公に
スト6の練習に付き合ったら10万円
くれると話す友人。
こんなストーリー初めてで読む手が止まらなかった。
そんな中で主人公が地元に帰る(都落ち)までに
起きる謎の事件とそれに対しての
主人公の行動は想像の斜め上を超えていて
笑えた。
今度からメルカリで呪物的なのを
見てしまったらこの本を思い出すかもしれない。
そして主人公と友人の友情もよかった。
こんなふうにしょうもないことで笑ったりできる
友人欲しいね。