徳田秋聲のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
望太郎は山奥から、一株の白百合を持って帰った。
どんなに清らかだろうと思える場所に植え替えても、擬人化された白百合が夜な夜な枕元に立ち、其の場所でかつて起こったらしい陰鬱で悲痛な物語を語って聞かせてくる。
目が醒めて白百合を確認に行くとやはりそのたび萎びているので、結局はもともとの山奥の滝の麓へ返すこととなる。
最後の「流や丘や森や、有りとあらゆる、人類が棲むべく選んだ地の、すべて惨禍や罪悪や、悲哀の迹を印するに過ぎぬのであろうか」という一文に、妙にうなずかされた。
徳田秋聲の作品は初めて読んだけれど、泉鏡花とともに尾崎紅葉の門下であったそうで、なるほど情景描写の美しさに惚れ惚れとしました。