森田さちさんの当事者研究の聞き手として上野千鶴子さんが選ばれて対談するという形式で書かれたもの。
2人の関係性が希薄なまま、森山さんの自己開示がなされていくので、最初は上野さんが突き放す感じでハラハラしながら読んだ。(最後はやはりとっても優しいのだけど)
森田さんの自己開示を上野さんと共に読者も聞いていくことになるのだが、私には今ひとつ森田さんがどんな人か芯のところがわからなかった。希死念慮の出所や、第四第五子を欲するところや、夫との関係性など、どこか腑に落ちない感じがし続けたし、今もそれは変わらない。
鈴木涼美との往復書簡のような腹の底から抉りあって、血が出るような自己開示は、残念ながら今回は味わえなかった。
森田さちさんって、一体どういう人なんでしょうか…。
とはいえ、上野さんの言葉の中に印象に残るものはあったので記録に残しておく。
上野「あなたにとっての出産や子育てって、第一に私は子どもには自分みたいな悲しい思いさせないっていう『母に対する批判』であり、『リベンジ』ですよね。第二は、子どもを生き直しの手段に使う、エゴイズムとしての子育てだと私には思えたな。子どもたちには『ごめんね、私の都合で産んで』『育てさせてもらってありがとう』って言っとけばいいしゃない。」
「どうもメンヘラ系の女って、出産に賭けるところがありますね」
上野さんは優しく諭している。また出産を利用してはダメだよと。
家事のアウトソーシングについて
上野「あなたの場合は夫が払って私的に解決したという結末だけど、多くの家庭はそうはできない。そうなると家事サービスの安い値段で提供してくらるチープレイバーーしばしば移民労働者や農村女性ーの存在が必要となる。これでは女性たちの間の賃金格差は無くならない。だから、本当にケアの問題を解決しようと思ったら、ケアを市場から買ってくるんじゃなくて、公共のサービスとして国や自治体が背負う必要がある」
確かに!
専業主婦になりたい女の子が増えていることについて
上野「20代の女性でわずかに増加傾向にあると言われています。それを保守回帰だと言う人もいるけれど、私はそう思わない。彼女たちの本音は夫や子供に尽くしたいと言うより競争社会から降りたいだと思う。」
当事者研究について上野さんが引用した熊谷晋一郎さんの言葉
「自立とは依存先の分散である」
優しく諭したり仄めかしたりしてくれてる言葉、森田さんに届いているのかな。申し訳ないけど、きっとまだ子どもを産みたいと思い、エイジングケアをし続けるような気がしてしまう…。