石井哲也のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
副題にもある通り、作物からヒトに至るまでの「ゲノム編集」について問題提起している。農作物→家畜→ヒト、と議論は段々重くなっていく。筆者はゲノム編集技術の向上を評価しつつ、食糧の生産効率向上や医療への応用については非常に慎重な立場を取っている。
その背景として、生態系への影響の未知数、「例え人が食べることになる」動物であっても人の都合だけで動物の命に手を加えることへの抵抗感、そして遺伝子治療によって取り返しがつかない事態を起こした海外の例などが挙げられている。
長い世代に渡る影響がどのように発生するかわからない状況下で「今、目の前の」都合だけで命に手を加えるのはやはり恐ろしく感じる。「デザイナーベビー」の話題では、生まれてくる本人への同意が無い中で親の希望だけで決めて良いのか、という言葉に説得力がある。
古今東西、生命改造を伴う悪の物語は事欠かない。数多くこれらが描かれて来たのは、「人は技術を持つと必ず悪用する者が現れる」という警告なのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレノーベル賞確実と言われているCRISPR/Cas9に代表されるゲノム編集技術。
著者の石井氏はゲノム編集技術の乱用について警鐘を鳴らしている科学者の一人。
おおよそ3割が技術的な話に、残りは倫理的な話に分けられており門外漢が読むにはちょうどよいバランス
「交配」は同じ種同士で行う。エンドウ豆同士とか
「遺伝子組み換え」では遺伝子を導入するので種を越えた組み換えが可能。インスリンなどはかつて、患者一人が一年間に必要な量を得るためには70頭のブタを必要としたが、今では遺伝子組換えによって大腸菌がインスリンを作ってくれる。ただし、遺伝子を放り込んだあと、実際に組み換えが起こるかどうか、それも望んだ場所に起こるかどうかは運任せになるため、年単位の作業になることが多く、高等動物になるほど時間がかかる。マーカー遺伝子を使うため、マーカー遺伝子が他の遺伝子の発現に影響を与えたりするため安全性が脅かされることがある。
ゲノム編集ではナビ付きのDNA切断酵素を使う。これまではジンク・フィンガー・ヌクレアーゼ
(ZFN)やターレン(TALEN)が使われてきた。DNA切断配列認識部位と切断酵素が一体となった人工酵素であったが認識部位がタンパク質であったため、その設計に相当な熟練を要した。CRISPR/Cas9では認識部位がガイドRNA(gRNA)になっており、設計が簡単。
ゲノム編集のリスクとしては、オフターゲット変異がある。間違った部分のDNAを改変してしまい、がん抑制遺伝子に変異が入って腫瘍が形成されたという事故もこれまで何度か報告されている。著者は、ヒトのゲノム編集に対してもなんでも反対、というわけではないがリスクベネフィットをよく検討すべきだし、美容目的や生殖細胞の編集はそういう意味で無理だろうという。知能や身長など、100近い遺伝子が関連しているような形質をゲノム編集で操作しようとするのも現実的ではないという
ただし、現在、生殖細胞系の編集が明確に禁じられている国は7割程度にすぎない。残る三割程度は国の「指針」として禁じているに過ぎず、違反しても国の研究費助成が受けられない程度の罰則しかないそうなので、こうした国が一つでもある限りはデザイナーズベイビーの時代は不可避だろう。受精卵を冷凍で送るとPGDを行なってくれるサービスも既に存在しているようだし -
Posted by ブクログ
若干古めの本だが、知りたかったゲノム編集作物の具体例が書かれてあったのでよかった。個人的にはノックアウトとノックインどっちもの形式でゲノム編集を農作物に使うことは賛成派の人間だ。だけどなかなか市場に流通しない原因として、消費者のゲノム編集という技術に対する認識、理解があまり浸透していないこと、遺伝子組み換えの作物では消費者に利益のあるような技術ではなかったという事例からゲノム編集に不信感を持ってしまうことが挙げられていた。こうした課題に対して、研究者と消費者の間にあるゲノム編集への理解のギャップを埋める、すなわち知識の共有と、消費者にメリットのある形質を持つ作物をゲノム編集で可能にする(例えば変色しにくいリンゴをつくるなど)を提案していた。長所と短所のある技術だから、短所だけを見て拒むのではなく、長所にも目を向けて段階的に導入できえう世の中になってほしいなあと思った。