あらすじ
「ゲノム編集」とは何で、何が問題なのか。――〈狙った遺伝子を〉〈痕跡残さず〉改変できるこの技術は、生命のありようをどう変え、そしてどこまで変えることが許されるのか。規制と推進とで揺れる中、対話のために、作物や家畜の品種改良、そしてヒトの医療におけるその可能性と課題をあぶり出し、いかに向き合うべきかを真摯に問う。
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Posted by ブクログ
副題にもある通り、作物からヒトに至るまでの「ゲノム編集」について問題提起している。農作物→家畜→ヒト、と議論は段々重くなっていく。筆者はゲノム編集技術の向上を評価しつつ、食糧の生産効率向上や医療への応用については非常に慎重な立場を取っている。
その背景として、生態系への影響の未知数、「例え人が食べることになる」動物であっても人の都合だけで動物の命に手を加えることへの抵抗感、そして遺伝子治療によって取り返しがつかない事態を起こした海外の例などが挙げられている。
長い世代に渡る影響がどのように発生するかわからない状況下で「今、目の前の」都合だけで命に手を加えるのはやはり恐ろしく感じる。「デザイナーベビー」の話題では、生まれてくる本人への同意が無い中で親の希望だけで決めて良いのか、という言葉に説得力がある。
古今東西、生命改造を伴う悪の物語は事欠かない。数多くこれらが描かれて来たのは、「人は技術を持つと必ず悪用する者が現れる」という警告なのかもしれない。
Posted by ブクログ
農業から医療まで幅広い分野に応用できる画期的なゲノム編集技術。急速なバイオ技術の進展に驚くばかりだが、その一方で残るオフターゲット等の技術課題や倫理面を含む問題点に対して丁寧な解説がなされ大変勉強になった。
Posted by ブクログ
若干古めの本だが、知りたかったゲノム編集作物の具体例が書かれてあったのでよかった。個人的にはノックアウトとノックインどっちもの形式でゲノム編集を農作物に使うことは賛成派の人間だ。だけどなかなか市場に流通しない原因として、消費者のゲノム編集という技術に対する認識、理解があまり浸透していないこと、遺伝子組み換えの作物では消費者に利益のあるような技術ではなかったという事例からゲノム編集に不信感を持ってしまうことが挙げられていた。こうした課題に対して、研究者と消費者の間にあるゲノム編集への理解のギャップを埋める、すなわち知識の共有と、消費者にメリットのある形質を持つ作物をゲノム編集で可能にする(例えば変色しにくいリンゴをつくるなど)を提案していた。長所と短所のある技術だから、短所だけを見て拒むのではなく、長所にも目を向けて段階的に導入できえう世の中になってほしいなあと思った。
Posted by ブクログ
医療や食物などに関わるゲノム編集は、
恩恵を受ける相手が一般消費者なので、
技術が浸透するためには、一般消費者の理解が重要。
曖昧でわからなく、危険がありそう...という理由で
避けるのではなく、何がリスクで、どんな論点があるのかを理解することが求められる。それを促すための一冊によい。