木野寿彦のレビュー一覧

  • 降りる人

    Posted by ブクログ

    期間工である宮田と浜野の友情と一年を描いた小説、というと何だか爽やかなイメージをされそうだけれど、アダルトビデオだとか変なオナホだとか自慰指南書といったものがストーリーの歯車として使われていて、全体の空気感は猥雑でじっとりと湿っている。ただその部分と淡々と書かれる文章ががっちりと噛み合っていて読み心地は不思議と良い。粗雑な職場環境で作業をこなしていく陰鬱な日々の中で、ふと垣間見る浜野のとぼけ具合やおかしみが、意図以上のものに増幅されることなく受け取れるサイズで宮田に届いているのがしみじみとした余韻を読後に残す。まったくタイプが違う小説ではあるけれど、私は読んでいて『成瀬』シリーズの成瀬のことを

    0
    2025年10月22日
  • 降りる人

    Posted by ブクログ

    ​静かに魂を揺さぶられる、生の哲学が凝縮された一冊。

    ​この物語は、社会の競争から疲れ果て、「他に生きられる場所がない」と諦観した宮田の内面を、極めて繊細に描き出します。華やかな展開は一切ありません。あるのは、単調な工場の流れ作業と、絶望と「まだやれる」という抗いが、静かに終わりと始まりを繰り返す主人公の心の声だけです。

    ​心身を「透明な存在」にすることで安息を得ようとしたはずが、友人・浜野のユーモアと哲学は、逃げ込んだはずの場所で、かえって「生きることの責任」を強く突きつけます。最も困難な選択、それは「自らの生を能動的に選ぶ」こと。彼の心は常に、自己の罪悪感と、凡庸な日常に潜む「大したこ

    0
    2025年10月20日
  • 降りる人

    Posted by ブクログ

    一貫して変わらない筆者の温度感と主人公・宮田の温度感。36℃を下回ることも上回ることもなく、それが心地よい。期間工として働く宮田に起こる事象を、レッテルという名の囲いで限定するのでなく、付箋を貼ったまま読者の手に委ねる書き方は計算された巧さだなと感じた。ただ同時に、冲方丁が選評に書く通り、食器棚の上に置かれた煙草などの小道具の必然性が煮詰まりきっていないというのは全体を通して思うところ。これからの作品を楽しみにしたい。

    0
    2025年10月11日
  • 降りる人

    Posted by ブクログ

    淡々とした工員の日常が描かれる。大きな事件も起こらず、アパートと工場を行き来し、休日が終わればまたその繰り返し。それなのに読むことをやめられないのは、時折キラリと光が見えそうになるからか。実家での母とコロッケを作る場面やアパートの駐輪場での女性とのやり取り、病気の友人を見舞うために粥を作るときに見える彼の気持ち。見えそうで見えないものを見つけたいと読んでしまったのだろうか。余韻の残る作品。彼に寄り添ってくれる人がどうかこの先いてくれますようにと祈らずにいられない。

    0
    2025年09月30日
  • 降りる人

    Posted by ブクログ

    心身ともに疲弊して仕事を辞め、山の中の工場にて期間工として働く30歳。つくっているのはベルトの部品。一日中同じところに立ち、流れて来る製品を同じ手順でチェックするというだけの、圧倒的流れ作業の単純労働。現状に満足している人は社員を含め誰もおらず、だから、社員と期間工の間で、残業前に支給されるパンを巡る、本当にクソほどどうでもいい小競り合いが勃発する。自転車が盗まれたり、それがきっかけで女の人と知り合ったり、ほのかな恋心を抱いたり、それがずたずたに引き裂かれたり、寄ってくる期間工がいたりの一年。あることがきっかけで、退職に追い込まれる。

    哀しみしかない期間工の生活を、淡々と描写している。ただた

    0
    2025年09月29日
  • 降りる人

    Posted by ブクログ

    作者が同郷と知り読んでみた
    年齢は10歳ほど私より若い

    工場勤務の二人
    社員ではなく淡々とこなすだけの仕事
    大きな事件はそれほど起こらず
    終始淡々としている

    にも関わらず退屈せずに読めたのは不思議だ
    作者氏の筆力だろう

    男性の自慰にまつわる表現が
    たびたびというか全編にわたって出てきて
    げんなりはしたが
    それすら湿度が低く
    そういったサラッとした感じが
    この二人の物語には合っているように思えた

    0
    2026年06月25日
  • 降りる人

    Posted by ブクログ

    心身ともに疲弊し前職を辞めて山奥の工場の期間工になった宮田と、同じ期間工で唯一の友人である浜野のなんでもない毎日。

    スキルアップなど望めず、いくらでも取り替えがきき、もはや人間での扱いですらない工場での労働の日々。不満エネルギーの解消のために他人を消費する者たち。考えることをやめ、ただ刹那的に日々を生きる姿は閉塞感しかない。

    これもプロレタリア文学と呼べるのだろうか。かつて読んだプロレタリア作品は、もっと怒りややるせなさに満ちていて、それでも必死に這いあがろうとするエネルギーを感じて胸が熱くなったものだけど、この作品は登場人物にそんな熱量を感じなかった。これも時代なのかな。

    自らを「降人

    0
    2026年06月10日
  • 降りる人

    Posted by ブクログ

    なんだろうか
    特になにも大きなことは起こらないが
    二人のやりとりが
    ゆるく面白い
    浜野みたいな隣人は
    伊坂幸太郎作品に出てきそうな感じで
    リアルな友達だったら
    面倒なやつだが
    誘われたら飲みに行くだろうなと
    思える作品だった

    0
    2026年03月31日
  • 降りる人

    Posted by ブクログ

    始めは素人くさい文章だなと思いながら読んでいたら中盤からグイグイ引き込まれた。後半は普通に名作。書きながら急成長してるのがよく分かった。

    0
    2026年02月19日
  • 降りる人

    Posted by ブクログ

    喜多川奏氏の作品と違ってそのままでもいいんだよと隠な感じと淫な感じが混ざってどんどん引き込まれていく。性的描写が多くて最初は苦痛だったのがゆるい感じで進むので気にならなくなり男友達とはこんな感じなのかと新たな発見。

    0
    2025年11月06日