同調圧力という事なら社会心理学者のソロモン・アッシュが行った「アッシュの同調実験」が有名だが、それを引くまでもなく、芸能人の不倫ニュースを見れば真実は分からなくても信じ切って不快感を持つ。もっと単純な現象としても、漫画のスラムダンクを見てバスケを始めたり、不良漫画に影響されてヤンキーが増えた世代があったというように、人間の認知は流されやすいし、書き換えられやすい。
だからこそ危険なのだ。意のままに操りたければ、正義感を煽り、強烈な印象を与え、最もらしい内容を権威ある媒体を通じるか、数を頼りに働きかければ良いのだから。
それが至近ではAIが普及した事で日本語訳も自然な感じになり、また完成度の高い“語りかけ“が可能となった。更に音声や映像までフェイクが蔓延。認知操作がし易くなり、極めて危険な状況だ。何が真実だろう。
日本の言論が海外から操作され、掻き乱されている。日本ファーストを強調しているのはロシアや北朝鮮であり、日本人と外国人の対立を煽ろうとしている可能性だってあるのだ。
ー 日本のタクシー会社が提供しているアプリのなかには、サーバーが中国に置かれているものがあります。データが日本ではなく、中国にあるということは、中国は日本のタクシーのユーザーがいつどこからどこへ移動し、どのクレジットカードが使われたか、その他いろいろなデータを握っているということです。さらに、そのアプリのユーザーが、中国企業によって運営されているティックトックのアカウントに接続していれば、決済アプリとSNSアプリを接続し、ユーザーに関するより多くの個人データを収集できます。そして、中国は、そのユーザーが誰なのか、どこに住んでいるのか、職場はどこか、交際相手はいるかなどさえ把握できてしまうわけです。
イスラエルの元諜報部員が日本の危うさに警鐘を鳴らす。悪名は無名に勝る。そんな風にメディアに登場してくる人たちの狙いは何だろう。最もらしい言論は、全て疑わねばならないのだろうか。
情報がただ氾濫するのではなく、主体的に“仕掛けられる”時代に私たちは生きているのだという事実。アッシュの同調実験が示したのは、個人が集団に流される脆さ。しかし今日の世界では、その“集団”さえも人工的に設計され、演出され、生成AIがつくった言論空間が私たちの感情の方向さえ決めてしまう。
「思考の自衛」が必要だ。外から流し込まれる物語に無抵抗でいてはならない。本書はその覚醒に繋がる。