京都新聞取材班のレビュー一覧
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青葉は統合失調症を病んでおり、そのせいで問題行動を起こしてしまい、周囲から見放されさらに孤独になる…という悪循環に陥っていた。事件前も死刑判決後も現実と妄想の区別がついていないらしく、いまだに「応募した小説を京アニにパクられた」と思っている。京アニ事件以前に前科二犯。いわゆる「無敵の人」だった。
「人とのつながりがなくなったとき、犯罪行為に走る」
「この年になって思うのですが、叱ってくれる人は大切だな、と思います」
青葉自身がそう述べている。人間関係の大切さ。
京アニの事件から数年後、大阪の心療クリニックで起きた放火殺人事件の犯人のスマホには知人の連絡先は1件も登録されていなかったという。 -
Posted by ブクログ
京アニ事件の真相を探ったノンフィクション。
知りたいと思う気持ちもありながら、あまりのむごさにその記事を見るたびにおぞましさと憎悪を感じて遠ざけたいという気持ちが同居します。
犯人の青葉被告の暴挙に至るまでの道筋には少しだけ、それこそほんの少しだけ同情の余地もありますが、自分勝手な妄想にとりつかれた末のとても理不尽な犯行です。
この本を読んでも犯人に理解を示すことなど到底できません。寛大な心をもって犯人と接しようとする被害者の遺族に驚き、敬意を持つばかりでした。
死刑によって何も解決されることもないと思います。が、それでもこの制度が無ければ納得できない心情も、ものの摂理もあるのではない -
Posted by ブクログ
被害者、遺族の方々、青葉の幼少期~生い立ち、青年期~事件を起こすまでの人生、友人から見た青葉など多方面からの見解が書かれた内容でした。
青葉は高校の頃が一番輝いていて、人間らしい充実した生活が送れていたように思う。
その後、社会にうまく適応できず、事件を起こすまで人生が転がり落ちるように転落していった人生。
そこには元々被害妄想の性格があり、自分の中の凝り固まった考え方が妄想を増幅させ、一人よがりの妄想に取り憑かれた結果、このような思考回路になっていったのではないか。
確固たる確証もないのに、それがあたかも真実と決めつけるのは本当に恐ろしい事。
自分一人の思考だとそこで完結してしまうんだろう。 -
Posted by ブクログ
【目次】
はじめに
1.暴走
現場近くの公園/惨劇/逃走/娘との対面
2.喪失
愛されたアニメーターたち/涼宮ハルヒにそっくり/奪われた「未来」/『氷菓』に託した青春/それぞれの名前
3.遺族
メディアスクラムのなかで/風化への思い実名か匿名か/こんな息子がいたのだと/名前は誰のもの?/歳月の流れ/
4.半生
初公判/「バオウ」と呼ばれた少年/離婚、そして貧困/青葉の青春/東京での夢/父の死、そして母との再会/真面目にやっても報われない/流転の日々/共鳴/紙一重の怖さ
5.執着
京アニとの出会い/「LOVEであります」/ナンバー2/京アニ大賞/包丁を突きつけて/無差別殺人/京都への -
Posted by ブクログ
絶対に許せない事件だけども、自分の周りの世界がどうにもこうにもいかないで、自暴自棄になった人は何を起こすかわからなくて怖さを感じた。
犯人の生い立ちを考えると、生活保護や福祉施設などのセーフティネットは絶対になくてはならないと再認識されられた。それがないと、同じような自暴自棄な人が増えて、犯罪率が上がっていき、治安が悪化すると感じた。
親ガチャという言葉が一時期話題になったが、親がどんなに悪くても、踏ん張って社会で成功している人はいる。そうではない人との差は何か、親からの支援なし、ましては暴力を振るわれるなどの劣悪な家庭環境の下で育ってもぐれずに大人になれるのか。難しさを感じた。 -
Posted by ブクログ
京都アニメーション放火殺人事件について、被害者、その遺族、犯人である青葉真司、メディアスクラムや死刑制度、事件から裁判、そして判決に至るまでを追ったルポ。250頁ほどだが、丁寧にまとまっている。
読んでいて心痛いのは、やはり被害者らの人生とその遺族たちについての箇所。本書は多角的に検証しているとはいえ、力点として置かれているのは被害者遺族の部分のように思われる。いちばん取材がしやすいというのもあるだろう。
本事件の報道においては被害者らの名前が公表されたり匿名であったり、統一がされていなかった。これは本書内でも説明されているが、匿名は遺族の希望によるものであり、報道だけでなく裁判においても