大橋鎭子のレビュー一覧
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朝ドラのヒロイン=お節介焼きという設定は定番化していますが、とと姉ちゃんのモチーフである実在の大橋鎭子さんも例外ではなかったようです。
鎭子さんの人生は、実に冒険心と、良い意味で目的のためなら手段を選ばない意志の力に満ちたものです。本文ではそれらの悲喜こもごものエピソードが、陰りのない率直な、品のある文章でひたすら明るく綴られています。
「暮しの手帖」編集部の、凛として読者にも取材対象にも、そして誰より自分達にも妥協しない一方で、生活の中に息づく何気ないしなやかな美しさを大切に保ち続ける姿勢は、このしなやかに強い鎭子さん、創刊後30年近く立役者であり続けた名編集長の花森さん、そして彼らを支え続 -
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大橋さんの文章には、品がある。
母が私に「すてきなあなたに」を渡してから、どれだけたったことか。しかしその品は、今読み返しても色あせることもなくかえって輝きを増すようである。
彼女の文章は、優しくやわらかく、しかし芯が通っている。激務の中で作られる雑誌であろうはずなのに、いささかの乱れも慌ただしさもない。
キャリアウーマンの先陣を切っておられたはずの彼女なのに。
仕事の乱れを見せない。しかし精魂を傾け、甘さを排除した結果は、今も尊敬される業績になっている。荒々しさのない、端正な生き方が結果を生んでいる。
私はこの後塵を拝する女になれるだろうか。 -
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「暮らしの手帳」が花森安治氏という名編集長によって創刊・発展していったことは知っていたけれど、暮らしの手帳社の社長である筆者のことは何一つ知らなかった自分。
でも、この本を開いてすぐ気がついた。
ああ、この文は「すてきなあなたに」と同じ匂いがしている。石井好子さんの「巴里の空の下オムレツの匂いは流れる」とも共通した匂いだ。
つまりそれは戦前の教養ある女性たちが自然と身につけていた品であり、心意気であり、自負心でもあったのだろう。
編集者としての心意気、よいものを作り上げていくための心構えが、上品な文章で綴られている。ありがちな「これみよがしな苦労話」「手柄話」は一切語られていないのに -
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NHK朝ドラ「トト姉ちゃん」を観ていたので興味をもった。今回この本を開いたら最初に出てきたのが私が敬愛する「石井好子さん」からのメッセージだった。胸がキュンとした。時を同じくして活躍していた人がつながっていたという事実に、なんとなく心が弾むような思いがした。
花森安治さんの頭抜けたセンスや信念に応えた鎭子さん。出会うべくして出会った二人なのでしょうね。花森さんの話も読みたくなりました。トト姉ちゃんで出てきた恋のお相手星野さんに該当する方の話は今回出てきませんでした。鎭子さんのロマンスにはきっとロマンスだけじゃない何かがありそうで知ってみたいな。いやただのやじうまか(笑)
あと、今回ドキリと -
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上品な文章…ああ、この方が「素敵なあなた」を書いていた方だったのか。
根っからの編集者タイプだなと思った箇所。P152「台所拝見のときは、これぞと思うお宅の裏口に回って、「この近くに○○さんというお家がありませんか。道に迷ったらしいんです」と話しだし、チラッと台所を見て、「いい台所ですね、じつは、私は『暮しの手帖』という雑誌をやっている大橋鎮子といいます。ぜひ見せてください」と上にあげていただき、「あらためてカメラマンを連れてきますから、写真を撮らせてください」とお願いするんです。」
暮しの手帖も、小倉遊亀さんの挿絵を使っていたんだ!
P156「「幸田文さんの随筆には小倉遊亀さんの挿絵だ」と -
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とても面白かった。「暮しの手帖」といえば名物編集長花森安治さんのことがいつも語られるが、花森さんと二人三脚のようにして、この特異な雑誌を生み出し育ててきた人がいたことを初めて知った。しかも90歳の今なお現役で日々「タネ探し」にいそしんでおられるとは!
肩書きは社長である大橋さんが、ゆったりとした語り口で、自らの生い立ちから「暮しの手帖」の草創期を中心に花森さんの死までを綴っている。幼い頃の父の死、女学校の思い出、花森さんとの出会い、暮しの手帖が世に出るまでの苦闘、戦前から戦後を必死で生きた女性の軌跡として心を打たれながら読んだ。大変な苦労だったことは想像に難くないが、悲壮な感じはあまりない。 -
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長く暮しの手帖社の社長を務めてきた大橋さんの手記。暮しの手帖との日々を綴ったもの。御年九十あたりとのことだが、今でも出社してはプランを考えることを楽しみにしているという。暮しの手帖というと花森安治さんが立役者とされることが多いが、なかなかどうして……というか大橋さんこそ、まさに影の立役者なのだ。戦後すぐに、女の自分が稼いでいける仕事をと思いついたのが出版業で、会社を作ってしまったのだから。
書かれている話の数々は、理想の職場、理想の雑誌、理想の人生のように思える。それは丁寧な文章から薫ってくるんだけど、いろいろ大変なことはあったんだろうな。こういう一見おっとりしていそうで、バリバリ成果を出して