猫でお馴染みの(?)"あの文豪"と猫が織りなす物語。
「夏目家どろぼう綺談」
「内田家うらない綺談」
の、中編二話が収録されております。
思えば、私の"動物視点モノ好き"のきっかけは、若かりし頃読んだ漱石センセの『吾輩は猫である』だったな~・・。
と、一話目「夏目家どろぼう綺談」冒頭の"名無しの猫"の語りにムフムフしながら読み出しましたが、その後は少年・ロク視点、夏目金之助(漱石)視点、細君の鏡子視点・・と主体がクルクル変わっていき、どうやら猫が主役ではないらしいと気づいて、ちょっと拍子抜けした次第です。
とはいえ、貧しくて文字も読めなかったロクが、泥棒目的で侵入した夏目家に何だかんだで居座る内に、次第に金之助と馴染んでいき、学ぶ喜びを覚えていく過程は心温まるものがありました。
そして、金之助がロクに文字を読ませるために"あの名作"が誕生するという着地も良かったですね~。(勿論フィクションですけど)
そして二話目「内田家うらない綺談」は、愛猫のノラが行方不明になってしまいパニック&憔悴してしまう内田百閒と、それに巻き込まれる周囲の様子がコミカルに描かれています。
偶々ノラを拾ってしばらく面倒を見ていた出戻りお嬢様の君江が、いざノラを百閒に返そうとした矢先にノラがまた失踪してしまったことに責任を感じて、なぜか占い師"君姫"と名乗って百閒に接近・・そこから奇妙な交流が育まれて、この騒動が『ノラや』の誕生秘話に繋がっていく流れでございます(こちらも勿論、フィクションでやんす)。
二話とも、漱石や百閒のクセツヨだけど憎めない、人間味あふれるキャラが上手く描かれていて、楽しんで読ませて頂きました。
個人的には、もうちょい"猫目線"が欲しかったところですが、全体的に微笑ましい仕上がりだったので良しとします~。
因みに、「夏目家どろぼう綺談」は、「第14回テレビ朝日21世紀シナリオ大賞」を受賞した脚本がベースとの事で、桐谷健太さんが金之助(漱石)役でドラマ化されたそうです。
どんな感じだったのか視てみたかったですね~。