エマ・スタイルズのレビュー一覧

  • 銃と助手席の歌

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     タイトルに惹かれた。邦題も原題も。邦題はまず、それだけでわかるのがロード・ノベルであろうということ。そして原題"No Country for Girls"にもコーエン兄弟の映画を観ている者ならば、意味深であることがわかるだろうということ。実際に読み始めて中盤に至る頃には『ノー・カントリー』というコーエン兄弟の傑作ロードムービーを想起させる物語であることもわかる。その元となったコーエン・ムーヴィーも凄い。非情の殺し屋に追われる恐怖が全面を張りつめさせるが、コーエン映画らしく、独特の静謐さと乗りとを備えた傑作であった。その原作小説がある。コーマック・マッカーシーの『No Country for Men』、日本では『血と暴力の国』(黒原敏行訳)というタイトルで当時の読書界を(同時にコーエン兄弟は『ノーカントリー』で映画界を!)騒然とさせた作品でもある。

     その忘れ難い作品のタイトルを想起させる本書は、オーストラリア発少女版ロード・ノヴェルである。かように興味深い本を手に取らないわけにはゆかない。読んでみて二つの意味があった。過去の傑作の現代版ロード・ノヴェルとして、しかも女性作家によって描かれた二人の少女たちの命を懸けたドラマティックな作品として。二人のそれぞれの視点で章が分けられてスタートする。二人の物語が合流して一台の車に身を寄せることによって、運命共同体となった彼女たちの物語は走り出す。白人のチャーリー17歳と、先住民の少女ナオ。二人を主体にした章が交互に展開するが、そこにチャーリーの姉ジーナの物語が合流することで、物語はより複層的構造を見せる。

     物語は金塊の強奪事件に端を発する。そこに絡む大人たちの犯罪と殺人。事件の裏に潜む悪徳警察官が絡むことで物語はよりきな臭く、暴力的になってゆく。二人の少女がふとした偶然から盗んだ車を荒野に向けて走らせ、それを追跡する悪党たちと、このスリリングで暴力的なロード・ストーリーに絡んでゆく旅人たち。誰が善悪で、罪がどのようなものなのかは、二人の少女とジーナという三人の独白によってしか方向付けることができないまま、物語は車とともに西海岸から北を目指す。

     ミステリーとしての骨格を持ちながら、より視点を走る車によって移動させてゆくことによって、ダイナミズムを産み出し、さらに刻々と明らかになる三人の女たちのそれぞれの独白による物語が、物語に命を吹き込んでゆく。一つには少女たちのそれぞれの個性が魅力的であること、何よりも活き活きとしていること。ふとしたことから手に入れてしまった金塊を手に、逃げる逃げる。そしてオールトラリアの大自然と、乾いたアスファルトを走る少女たちの軌跡。困難な状況下で、彼女らを追うすべての者たちから自由へ向けて走り、そして徐々に絆を深めてゆくヒロインたちの成長や旅立ちを描いているかにも見える骨太のストーリー。

     新鋭作家のデビュー作ならではの大胆な冒険クライム・ストーリーである。ちなみにウィルバー・スミス冒険小説賞を受賞した作品という。なるほど。久々の冒険小説の醍醐味を少女たちが思い出させてくれた。そんなきらきらと輝く小説であり、同時にギャビン・ライアルの『深夜プラス1』に通底する冒険的要素をページを繰る毎に嗅ぎ取れる懐かしいようなアドベンチャー・ノワールにのめり込める極めて印象的な力作であった。

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    2026年01月25日
  • 銃と助手席の歌

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    オーストラリアの内陸部を舞台にしたシスターフッドノワール。
    ハイスクールを退学したばかりの少女チャーリーが金のインゴットの1つを盗んで逃げているところから物語は明ける。姉のジーンとその彼氏のダリルが隠された金のインゴット10キロを強奪し、その一部をチャーリーは盗んできたのだった。
    ダリルを嫌うチャーリーが嫌がらせとして盗んできたのだったが、偶発的に起きたある事件をきっかけにそこに事情があって訪れたアボリジニの大学生ナオを巻き込んだ逃走へと変わっていく。
    対極的な2人がひたすらオーストラリアの荒野をさまよい続けるのだが、視点の切り替えと、その筆致のためか惹き込まれる。
    夢中で読んでしまう瞬間もあって、終盤に差し掛かるまではかなり好感を持てた。
    ただ終盤からはいささかジャンルの枠組みに嵌まりすぎてしまった気がしないでもない。
    原題は『No Country For Girls』と、コーマック・マッカーシーの傑作『No Country For Old Men』のもじり。大金を盗んだ者が、謎の追手から逃れる逃走の物語という構造も似てる気がする。そのせいもあってか終盤をそれほど高く評価出来ないのはどうしても『No Country For Old Men』が頭にチラついてしまって、大きな飛躍を求めすぎてしまったかも。それと個人的に物語にもっと痛みを欲しがりすぎてる部分もある。これはあくまで好みだけど。
    邦題は『銃と助手席の歌』、原題に込められた意味を考えると、さすがにこの邦題は明後日の方向を向きすぎじゃないかな。

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    2026年08月27日
  • 銃と助手席の歌

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    ネタバレ

    本の雑誌のミステリ部門でランクインしていた本。
    金のインゴットを巡ってトラブルに巻き込まれていった二人のロードストーリー。登場人物があまり多くないので読みやすいです。驚くようなトリックはないです。それでも2人が現金がない中、どのくらいの違法行為をしながら追っ手から逃れるか、数々のピンチをどう切り抜けるか、が気になり、引き込まれて一気読みしました。
    ただ、殴られるシーンが多々出てくるので、苦手な方は読まない方がいいと思います。ハッピーエンドになるだろう、と信じて読まないと辛いものがあります。

    何年も前にシドニー(東側)ですが、ワーキングホリデーに行っていました。オーストラリアの壮大な自然を切り拓いてつくられた道路が目に浮かびます。そうそう、郊外には野良カンガルーがいるんですよね。
    オーストラリア人って、男性も女性も『クソ』とか4文字ワードなどなど言いまくりだったので、チャーリーが特に口が悪いとは思えませんでした。チャーリーは強がっているけれどもお姉さん思いの熱い子という感じです。

    強い女性たちの物語です。姉妹の絆や女性同士の絆を感じられる作品でした。

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    2025年09月11日
  • 銃と助手席の歌

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    ネタバレ

    創元推理文庫の表紙とタイトルの美しさ、装丁で買っでしまいました。
    エマ・スタイルズ『銃と助手席の歌』
    No Country for Girls.

    チャーリーは17歳。学校を退学させられ、荒れている。姉のジーナの彼氏・ダリルが見せびらかしていた金の延べ棒を1本盗んでしまう。一方、血と傷を負って、明らかにトラブルを抱えたナオがチャーリー宅に助けを求めやってくる。
    ダリルの襲撃から身を守るため、誤ってチャーリーは冷蔵庫の上にあったナタで彼を殴り、ダリルを殺してしまう。ナオの対応により、2人は死体を湖に沈め、証拠隠滅を図る。その後、チャーリーの家の入り口に誰かがいるのを発見し、2人は、ダリルの車で逃げ出してしまう。ダリルのトラックに金の延べ棒が詰まったバッグを発見した2人は、それを助手席に隠し、本格的な逃走を開始する。舞台は、西オーストラリアのグレート・ノーザンハイウェイへ 。本当に目的も旅支度もなく、成り行きで。
    後を追ってくるものはなにものなのか。黄金はどこからきたのか。性格も立場も違うチャーリーとナオの2000キロに及ぶ逃避行が始まる。

    最初は話になかなか入り込めなかったんですよね。チャーリーとナオの2人に感情移入がうまくできなくて。どちらも少しエキセントリックな性格をしているので。ですが、2人はやがて、旅の中で心を開き、触れ合い、過去を話し始めます。そうすることで、2人に読者もだんだん触れ合い、話にのめり込んでいく形になります。
    話の展開があまりにも突拍子ないけれど、読後感は良いです。あ、これはロードムービーなんだって。

    「やっぱりゴールド・コーストじゃない?
    どう思う、ナオ?ガソリンは満タンになってるけど」
    「いいんじゃない?」

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    2025年07月06日
  • 銃と助手席の歌

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    ロードムービーのバディもの
    それぞれの視点デ語られる物語が良くて
    第三者の視点で物語を楽しめた
    序盤の面白さは凄くて一気に惹き込まれましたが
    中盤が少し似たような展開が多く中だるみ感が否めなかったかな
    伏線が回収されていくラストは良かったです!

    表紙の美しさに見惚れてジャケ買いしましたが
    間違いなかった!

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    2025年06月04日
  • 銃と助手席の歌

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    中盤までの重苦しい雰囲気に気圧されながらも、終盤にかけて全ての点が繋がりエンディングまで駆け抜けていく展開は、犯罪小説としても青春小説としても良かった。
    オーストラリアの歴史を知っていると更に楽しめたのかもしれない。

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    2025年04月16日
  • 銃と助手席の歌

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    オーストラリアを舞台にしたロードノヴェル。何でも挑発的で汚い言葉しか使えないチャーリー。金の延棒を盗んだ事で姉の恋人を殺してしまったが、ひょんなことからその場に居合わせたナオと死体を捨てハイウェイを北に走る羽目になる。本文はチャーリーとナオの視点から描かれる。全く違う面を持つ2人の女性、そして乾燥したオーストラリアのクリスマス時期の暑さ、正体不明の追手、と見所が満載。女の子が主人公だから読者を選ぶかもしれないが私は大満足だった。

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    2025年03月24日
  • 銃と助手席の歌

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    ぶつかり合いながらも相手を思いやり、自身を乗り越えていく犯罪&青春ロードノベル #銃と助手席の歌

    ■あらすじ
    高校を退学になった少女チャーリーは姉の彼氏ダリルのことが大嫌い。チャーリーはダリルから金のインゴットをこっそり盗み出してしまう。

    チャーリーが帰宅すると見知らぬ大学生の女性ナオがいた。彼女は何かこの家に用事があるようだが、正体も理由もよくわからない。自宅には姉の彼氏ダリルが待ち構えており、インゴットの件で言い争いになってしまう。

    勢いあまってダリルを殺害してしまった二人は、ダリルの車を奪いハイウェイを北へと向かう。しかし彼女たちを追ってくる者がいて…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    まだ世間を知らない若い少女たちが図らずも事件を犯してしまう犯罪小説。そしてオーストラリアの西海岸を逃げながら、同乗者と心の痛みを交わしていく青春ロードノベルでもあります。

    本作メインの登場人物である女子三人、彼女たちがしくしくと胸に刺さるんですよ。ひとりひとりすんごく尖っていて、まさに触るものみな傷つける的な感じ。私にも息子がいるんですが、今まさに反抗期気味でして、ちょっと似てるんだよなー

    ○チャーリー:妹
    世間知らずで粋がってる若者、口が悪く向こう見ず。いつも衝動的な行動をとるため、頻繁にナオを怒らしてしまう。きっと悪い娘じゃないんだけど、必死に生きてる感じが痛々しい。

    ○ナオ:大学生
    先住民アボリジニの血を引く女性、法律を学ぶ大学生で生真面目。しかし言えない秘密があり、チャーリーに隠し事を繰り返してしまい、全く信用を得られない。知恵は多少あるけど圧倒的に経験不足な女の子。まぁ20代なんてみんなそうだよね。

    ○ジーン:姉
    いつも良くない連中とつるんでいる悪ガキな娘。でも妹思いのお姉ちゃん、特に両親が居なくなってからは、いつもチャーリーのことを気にかけているイイ奴。なんでこんな生活してんだって思うけど、実は彼女こそ必死に生きてきたんだよなー。個人的には一番好き。

    チャーリーとナオは、全編ずーっと二人きりで逃走し続けるんですが、この二人の性格が全く合わなくていつも喧嘩ですよ。

    最初はチャーリーの粗野っぷりが気に入らなかったけど、読んでいくとナオにも原因があるんですよね。もちろんそこには言えない秘密、理由があるからなんですが、読者視点からすると仲良くやりなよって思っちゃう。

    しかし、ここが本作の一番の読みどころなんです。チャーリーではなく、ナオがいかに自分を乗り越えていくか、というところが成長のポイントなんですよね。

    そして姉ジーンと妹チャーリー、姉妹の関係性も良く描けていて切なかった。すでに両親がいない二人は、お互いに寄り添って生きようとしている。姉は母親代わりになるように妹を想い、妹は姉のことを少しでも支えよう、助けようとするんです。二人ともやり方は幼稚なんだけど、愛情の深さは手に取るようにわかるんですよ。

    ひたすら逃げ続けるロードノベルですが、中盤辺りからストーリーが一気にサスペンス風味を増してきます。そしてナオの過去には何があったのか、彼女たちを追ってくる者は何者なのか、そしてインゴットに関する秘密など、徐々に分からなかったの謎も明かされてきて… 終盤からラストは一気読みです。

    途中イライラしたことが何度もあったんですが、最後はすっかり彼女たちを応援しっぱなしでした。そしてラストは、もう完全に号泣でした。

    ■ぜっさん推しポイント
    本作をまるごと振り返ってみて、なんで未来のある若い女性たちがこんなことになってるんだと問いたい。

    彼女たちの奮闘ぶりの影に、身勝手な大人たちに腹が立って仕方がありませんでした。もっと悪者たちが報いを受けるシーンを入れてほしいですっ

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    2025年03月04日
  • 銃と助手席の歌

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    背表紙にある「帰る家なき少女たちの共闘を描くクライムストーリー」という魅力的なワードと「ジャケ買い」を誘う真っ赤な夕日を背景にしたロードムービー風の表紙。確かにその通りの内容なんだが、今一つ没入できずに読み進めてしまったな。
    少女2人のキャラクターに魅力を感じられるかどうかが試されていたのかも。残念ながら背景含めて深く共感することができずに、マイナス点ばかり目についてしまいました。
    作品の中にも出てきますが、確かに「テルマ&ルイージ」的ではあるので、お好きな方にはオススメします。

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    2025年12月10日
  • 銃と助手席の歌

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    ネタバレ

    西オーストラリアを舞台に、二人の少女の逃避行を描いた一週間の物語。なぜ二人の少女は逃げなければならないか、追っているのは誰なのか。徐々に明らかになっていく真実、そして逃避行も最終地へ収束していく過程が楽しめる。あと西オーストラリアの景色を感じられる。見ず知らずの二人の少女が同行することになる理由が巧く設定されていて、違和感なく読めた。ただ、途中で車を盗んだジェズらとのやり取りや、ウォーレンの行動は不自然な感じがした。

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    2025年04月20日
  • 銃と助手席の歌

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    タイトルと装丁に惹かれ購入

    オーストラリア西部が舞台で、雄大な自然の中での冒険譚を期待してたが、小説自体が逃亡劇なのでそういった趣向はあまりなかった

    タイトルが腑に落ちてなかったがラストまで読むと、翻訳本ならではの良さを感る

    ただ、この本のターゲットはどこなのだろうと思う。オーストラリアの原住民の人や、舞台近辺の人は面白く読めるだろうけど、舞台に馴染みのない日本人にとっては中々没入して読むのは難しいのではと思った。

    解説で言語化されている部分だけで、小説自体の面白みの大半はわかってしまうような本。

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    2025年03月11日