橋本摂子のレビュー一覧

  • アウシュヴィッツ以後、正義とは誤謬である アーレント判断論の社会学的省察

    Posted by ブクログ

    社会学者が読み解くアーレント。
    実は哲学畑の人の本よりも、ずっとよく整理されていて分かりやすいと感じる。
    ハードカバーで手に取るのを躊躇う人もいるかも知れないが、本当に素人にもどんどん読めるリーダビリティの高い論文。
    院生の知人も書きっぷりを褒めていた。

    中身は、アーレントのカント読解を、筆者が読み解いていく結構。

    もちろん前提としてカントを引用して憚らなかった「無思考の達人」アイヒマンについての考察がある。

    読み筋はあくまでもカント。
    そこから決して離れることなく、しかし粘り強くアーレントの全体像に読者を導いてくれる。
    だから逆に読みやすい。

    震災直後に福島大学に赴任し、数年間をあの混乱を生きた人、ということろも共感できる部分が多かった。
    こういう点ではまえがきとあとがきを読むだけでも意義はある。

    カントの判断力批判、美的判断からアーレントの本丸に斬り込む視点も分かりやすい。

    ただ、アーレントの本文は決してこんな風に簡単に腑分けして納得、という感じでもないわけで、カントを補助線にしながら、私のような初心者をちゃんとガイドしてくれているというところも素晴らしいと思った。
    ただし、もちろん当然のことだが、終章の核災害に対する意見は、私としては同意しない。
    それでよいのだと思う。
    そういうことを研究者は書かなすぎる。
    じゃあ、どう同意しないのか?
    これから考えて、別のところで書かねばならない。

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    2026年01月28日