不確実性のなかで、いかに個人が、そして組織が意思決定を行うのか、というのは、私の長年の問題意識なのだが、その際の重要な前提となるのが、人間の認知能力の限界と組織が生み出すバイアスといったもの。という観点から、ハーバート・サイモンの限定合理性という考え方には、大きな影響を受けている。そのサイモンの組織論に関する古典的名著がこれ。
長らく読みたかったのだが、絶版状態が続き、古書も1万円を超える価格で取引されていて手が出なかったところ、ついに新訳で登場。さらには、4th editionをベースとして、大幅なコメンタリーが加えられて、分量的には2倍になっているのではないかな。
と、本の厚さに圧倒されつつ、読み始めたが、これがまたとても読みにくい。ある意味、当たり前というようなことが、非常に厳密な論理で書かれている訳で、また現状分析がほとんどで、処方箋的なものがほとんどないので、結構、フラストレーションがたまってくる。
サイモンの「システムの科学」を以前に読んだときも思ったのだが、著者の知識の広範さと深さは、ほとんど超人並みで、なかなか、当たり前のことを書いているのか、すごく深いことを書いているのか、判別がつかない。
最初に書かれたときには、人間の合理性をベースとする従来の考え方に対するアンチテーゼとして新鮮だったんだろうなー、と思いつつ、今となっては、なかなか、どう読んだら良いのか、難しい本であった。
というわけで、前半の個人の意思決定にかかわる所はそれなりに読んだけど、後半の組織論的なところは、ざっと流し読みしてしまった。。。
ある意味救いは、90年代に書き加えられたコメンタリーの部分で、これを読む事で、最近の理論の発展や現実(コンピューターの進歩)などとの関連性を見出す事ができるし、また書き方もこちらのほうが、ややインフォーマルで読みやすい。