ニューヨークにおける中国、アイリッシュマフィア抗争版ドン・ウィンズロウ的ストーリー。
父はカトリックのアイルランド系アメリカ人、母はプロテスタントのイギリス人、アイルランドで生まれたが、半ば自暴自棄の流れで香港警察に身を置き、そこでの破滅一歩手前のやらかしを挽回すべく、アメリカの地で潜入捜査に身を賭す主人公カラム・バークの緊迫感尽きぬ日々。
ニューヨーク進出を狙う香港マフィア、チャイナタウンを牛耳る堂(とん)、ヘルズ・キッチンでの勢力を広げようとするアイリッシュマフィア。
NYPD(ニューヨーク市警察)とDEA(アメリカ麻薬取締局)が手を組み、取り組む界隈の麻薬組織一網打尽計画の行く末は。。
ビル&リディアシリーズでお馴染みのニューヨークのあの辺り(全然行ったことないけど)を舞台としたところだとか、『ほんのささやかなこと』で気になったアイルランドの風味漂うところだとか、直近で読んだ本との繋がりが強くて興味深かった。
そうか、アイルランドといえばマフィアというイメージもあるな。
小国ながらイタリア、ロシア、中国と肩を並べる意外な存在感だ。
さて物語自体は潜入捜査がうまくいくのか、いかないのか、ばれるのか、ばれないのかの緊張感の連続が読みどころ。
主人公カラムと香港マフィアのボスとの秘密の因縁とにじり寄ってくる恐怖を背景とした最終盤の絞り上げは、ほんとドキドキした。
もうばれただろ、いやまだか。さすがにこれは、あーかすったーほんとギリギリーみたいな。
途中カラムが連絡役のNYPDのいけすかない刑事に対して、手柄優先にしてんじゃないの?的な問いかけをしたときの刑事の答えに胸を打たれた。
警官の給料は安いし、家族もないがしろにしてしまう。文句も言わず、なんなら精神的に追い詰められながらもなんとかやってくれている家族には感謝している。だから子どものズボンの皺くらいは伸ばしてやりたい。
ただ、それでもはびこる悪は放っておけない。この気持ちは同じくらい強い思いで両立する。
そこそこ長いシーンなので、抜き書きできるものではなかったので自分の理解でまとめるとそんな感じ。
あ、凄い良い奴じゃん。
混沌の中に諦めない矜持がある。
そういう信念を持てる境地に立ちたいものだ。