睦月準也のレビュー一覧
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「ゴウダトオルを探してほしい」
正体不明の依頼人“アリス”からの依頼を受けた探偵。ゴウダが滞在するという4日後に100年の歴史に幕を閉じる老舗ホテルに乗り込んだ探偵は、ある遺体を発見し殺人事件に巻き込まれてしまう。
ゴウダトオルは何者か?殺人事件は依頼内容と関係があるのか?警察、記者を巻き込んでの探偵の調査は戦後の闇にまで踏み込んでいく。果たして探偵はゴウダトオルを見つけられるのか…。
逆クローズドサークルで起きた殺人事件を解き明かすミステリの面白さと、心に傷を持つ探偵の姿を描くハードボイルドとしての魅力、そして歴史の舞台にまで広がりを見せるスケール感、一粒で三度美味しい作品。
ホテルという限られた場所、少ない関係者、閉館までのタイムリミット。事件と調査が並行して進むにつれて小さな伏線が真相を明らかにしていく面白さ。
そして何より探偵の優しさが魅力的。
「優しくなければ生きていく資格はない」というフィリップ・マーロウのセリフを思い出す。
満月とチェス盤が読後に余韻を残す極上のハードボイルドでした。 -
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あることがきっかけで警察を辞めた元刑事の探偵の私に「ゴウダトオルを探してほしい」とアリスというハンドルネームから依頼があった。ゴウダは4日後に閉館する老舗ホテルに滞在しているという。
私はそのホテルに部屋を取り、聞き込みを開始するが、ある殺人事件の第一発見者となってしまう。
早川書房のSNSでこちらの本を紹介していて、これは期待できるぞ!と即購入。めちゃくちゃ面白かった。
殺人事件のネタバレまで右往左往して、何度も足踏みするので、こちらも焦るけど、その解決にも納得。そして、ゴウダトオルなる人物についても、老舗ホテルが舞台だけあって、なかなかの広がりがあり、そこへ到着するのかと、感心しきり。アリスの正体など様々な伏線回収もお見事。
最後まで一人称の探偵が名を名乗らないのもまたいい。
これは何かの賞を取るぞと期待大。
しかし、〝ゴウダトオル〟を〝ゴウダタケシ〟と何度も読み間違えた。ドラえもんの見過ぎだな。 -
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―ゴウダトオルを探してほしい―
4日後に百年の歴史に幕を下ろすことが決まっている「東亜ホテル」。
探偵は正体不明の人物〈アリス〉の依頼によりこのホテルを訪れる。
閉館までの4日間このホテルに滞在しているということしかわからない、ゴウダトオルという人物を探すために。
超超超超面白かった。
国籍も性別も年齢も不明、名前しかわからない幽霊のような存在。
日比谷公園の向かいに位置する、国家を代表する高級ホテル。
クローズドな舞台の中、正体不明の人物の手がかりを求め濃霧を歩くようにまるで筋道の見えない調査を進める探偵。
そこで起こる殺人事件、関与が疑われる巨大企業グループの一族、背景に浮かぶ国家規模のプロジェクト。
幾度も展開され、その度に盤上の駒の様に敗れ散っていく推理の数々。
あまりにも壮大で複雑なドラマが描かれていくのに、物語の抑揚に反し徹底して温度感を排しているように感じられる文章。
主人公の一人称視点で書かれるその端的で、淡泊で、知的で、気の利いた文章がとにかく好みでした。
読者を物語に引き込む強い引力がありながらもとても静かなその主人公の視点が、百年の歴史に幕を下ろす高級ホテルという舞台の、華やかさや厳かさ、そしてそこにいる主人公の場違いさなどを小説全体に漂わせている。
そんな、一人称でありながらどこか客観した語りだからこそ、無数の人間の人生が絡み合いやがて百年近い時代に渡る群像劇の様相を呈してくる壮大過ぎるこのストーリーが、すっと自然に飲み込めてくるのだと思う。
筆致も、トリックも、伏線も、心情描写も圧巻。
個人的には今年読んだ本の中で一番好きです。 -
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名前しか分からない謎の男を追う怪しい依頼… 人間の欲望と愚かさが絡み合う、読み応え抜群の本格ミステリー
■あらすじ
警察や興信所も扱わない事件を引き受ける探偵のもとに、奇妙な依頼が舞い込む。探す相手はゴウダトオルという名前のみで、詳細な情報は一切ない。判明しているのは、ここ数日は〈東亜ホテル〉に滞在していることだけだった。
探偵がホテルで調査を始めると、ゴウダを知るという人物から電話が入る。指示された約束の場所に赴くと、その人物が…
■きっと読みたくなるレビュー
頑張りましたね~、探偵小説×本格ミステリーの力作! これほどの重厚感&読み応えもある作品が書けるとは。デビュー作『マリアを運べ』でポテンシャルを感じてましたが、やっぱり強力なパンチを繰り出してきましたね。
さて本作はどこかで見たような偏屈でニヒルな探偵が主人公のハードボイルドです。私立探偵ものといえば何はなくとも人探しなんですが、本作でもゴウダトオルという謎の人物を追うことになる。
興味深い設定だったのは、人物の詳細はわからないけど東亜ホテルに滞在しているはず。という奇妙な情報。当然そのホテルとその人物はどういう関係性があるのか、というのも気になるところです。
そしてゴウダトオルの捜査を開始するのですが、いきなり殺人事件が発生。もちろんゴウダ氏との関連も疑われることになり、セットで謎解きをしていくという筋立てになっています。
まずイチ推しなのは、昔ながらの私立探偵小説の世界観を踏襲してるところですね。外連味たっぷりのセリフ回し、同族経営の大企業のイザコザ、いかにも背景がありそうなキャラクターなどなど。ハードボイルド小説のファンもしっかりと楽しめる品質になってます。
さらに本作は本格ミステリーでもあるのです。想像以上に濃密なアリバイトリックに立ち向かうことになる。これについては、解法までのアプローチが好きだったなー。昭和平成のミステリードラマを観てるかのような臨場感なんすよ。犯人に対して結構ドギツイカードを切っていくんですが、これには手に汗を握りましたね。素晴らしかった。
そして謎解きメインディッシュ、「ゴウダトオル」は見つかるのか? その人物にはどんな背景があるのか? 登場人物との関係性は? いやー、きれいにまとめましたね~。よく練られていました。
いつの時代も、どこの誰でも人間の欲望と愚かさってのは変わらないな… と切なくなる物語でした。
■ぜっさん推しポイント
本作は第一章がめちゃくちゃ引きが強いんすよ、上手だったなー。謎の人物から、怪しい条件付きの人探し依頼、引き受けるのは変な探偵。こんなの読まずにはいられないでしょ。どんどん腕をああげてると思うので、今後の作品にも期待しちゃいます! -
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正直あまり期待せず読み始めたのですが、とても良かったです。
「ゴウダトオル」という人物を探してほしいという依頼を受けた元刑事の探偵は、その人物が泊まっているという閉館間近の高級ホテルに宿泊して、殺人事件に遭遇します。しかも、被害者も「ゴウダトオル」を探していたのです。ゴウダトオルとは何者なのか?事件となんの関係があるのか?という謎を調べていく物語です。
ミステリとしての建付けは非常にシンプル。犯人の完璧なアリバイをいかに崩すか…を考えるハウダニット物。アリバイ崩しをする過程で何度も事件をなぞってくれるので、解決編の前に大体トリックは分かりました。関係者に何度も接触し小出しにされる情報から事件の謎を解いていく過程がとても丁寧。
正統派のミステリでとても面白かったです。
最後に明らかになる「ゴウダトオル」の正体も、歴史的にこういうことがもしかしたら有り得たのではないか…と思えるリアリティがあって、納得しました。 -
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帯に釣られて購入したのだが、誇張ではなくなかなかの傑作であった。
人探しを依頼された探偵が、閉館までのタイムリットがある中で事件の真相に迫るクローズドミステリー。
驚くような仕掛けというより、犯人が大方わかっているなかで、その動機と目的、そしてトリックを突き詰めていく感じが王道の謎解き感であっと言う間に読み終わった。
ちょっとした違和感や、不思議が最終的にはしっかり見事に繋がり腑に落ちる瞬間がとても良かった。
個人的には少しドライな主人公が、個性が出過ぎず読者目線を損なわせないのがむしろ邪魔をせず謎時に集中出来て良かった。
何より何回か失敗をするあたりが、現実的かつ自分も考えたことが違っていたかと一緒に失敗体験出来た喜びになり、もう一回考えなおす楽しみになった。
そううまくはいかないが、何かあるだろうと探る気持ちはまさに没入体験だ。
結果割と単純であり、最終的にはあーそういうことかと納得出来た。 -
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ネタバレ運び屋の風子は17歳で“無免許”。彼女に持ち込まれた新たな依頼は、開発中に盗難された医薬品と研究データ、そしてそれを盗み出した研究者本人、志麻を、長野県諏訪まで翌朝5:00までに運ぶこと。3時間程度で終わる簡単な依頼のはずが、医薬品とデータを狙う暴力団や某国スパイが追撃し、警察が検問で風子の駆るスバル・フォレスターの行く手を阻む。風子はタイムリミットまでに依頼品と依頼人を運ぶことができるのか。第14回(2024年)アガサ・クリスティー賞大賞受賞作。
依頼者とその品を、追撃や妨害を掻い潜ってタイムリミット前に無事届けられるか、というシンプルなストーリーが全編を貫く。その中で、暴力団や警察、さらに某国工作員までが執拗に追ってくる理由、依頼人が危険を冒してまで運ぼうとする医薬品の正体、そして依頼人の意図は……といった謎が徐々に明かされていく―というもの。
17歳で無免許ながら卓越したドライビングスキルと、一度走った道を映像的に記憶するという特殊能力を持つ主人公の風子をはじめ、護衛役の元自衛隊員の殺し屋仁、研究中の薬品を自ら盗み出した依頼人の志麻、ギャンブル好きな運び屋の社長、その他敵味方ともキャラとして魅力的な設定なのに人物描写や掘り下げが粗い―という評もあるようだが、余分な人間ドラマや個々人の心理描写を避けて「どう辿り着くのか」を描くことが前面に出ている分、疾走感とスリルに溢れるエンタメ作品として振り切れていたようにも思う。
医薬品=MARIAの正体は……荒唐無稽だが、万が一実現しても人類にとっていい結果にはならんだろう、な。
いわゆるハードボイルドものは普段ほぼ読みつけない自分だが、深夜プラス1、運び屋、車が活躍etc……といったキーワードが並ぶと手を出さないわけには行かなかったw
中央道や東名高速、各SAやPAなど普段自分がよく利用する道や場所が、風子が辿るルートとして描かれているのも個人的にとても楽しい。
ただ、今作では喫煙キャラがやられ役のヤクザだけってのが何とも寂しい。このご時勢、ハードボイルド作品でも煙草は必須の小道具ではなくなり、むしろ喫煙者=悪ってことなんですか、ねぇ。