ニックハーカウェイのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
★5 SF、ミステリー、ハードボイルドの良いとこ取りをしたエグ味のある優秀作 #タイタン・ノワール
■あらすじ
近未来の大都市が舞台、私立探偵キャルは警察から依頼されて殺人事件を追っていた。その遺体は大柄の男で年齢は40代にしか見えない、しかし年齢は90歳を超えていたのだ。
「タイタン」と呼ばれている彼らは、富裕層が永遠の命を手に入れるために薬剤を開発した結果であり、そのひとりだった。キャルは誰が殺害したのか捜査するうち暗黒街の闇にのみ込まれていく…
■きっと読みたくなるレビュー
★5 これまたスゴイ小説を読んだ。まさにタイトルとおりの「タイタン」と「ノワール」な物語。
金持ちが不死身を背景に世界を牛耳っているんですが、暗黒街の大物を相手に私立探偵か命を懸けて謎を解いていくという、ハードボイルド&ディストピアSFです。
トンデモな裏社会にイチ個人の探偵が乗り込む王道のような展開ではあるんですが、相対するのはタイタンという突飛なキャラクターなんです。ハードボイルドの言葉とおりガチンコ勝負にはなるものの、革新的な設定すぎてストーリーが完全に異質なソレになってるのよね。SFとノワールの掛け合わせなんて、これまで自分の発想にないからホントびっくりしました。
そしでどんな話なんだ?進撃の巨人みたいなアクションなのか?サスペンス?と思いながら読み進めるんですが、これがなんと「人間ドラマ」なんですよ。いわゆる怪物化した人間の主義思想、関係性がメインの読みどころ。
探偵キャルは、ぼろぼろになりながらタイタンの闇社会に切り込んでいく。ギリギリの駆け引きや死の瀬戸際をいくアクションで目が離せなくなるんすよね。ロマンスシーンもあって、やたら艶っぽいのよ。終盤はタイタンや闇の人間たちによる、まさにあり得ない展開になってくるんですが… あとは読んでのお楽しみ。
そして本作はタイタンを取り巻く社会を描きながら、神に近づこうとする人間の汚い欲望も描いているんですよね。人間の欲望は金と女から始まるんですが、その欲望は死ぬまで変わることない。さらに際限なく増長していく怖さを感じましたね… そりゃ戦争なんてなくならないわな。
SF、ミステリー、ハードボイルドの良いとこ取りをしたエグ味のある優秀作。続編もあるとのことなので、翻訳を期待しています!
■ぜっさん推しポイント
本作はなにより書きっぷりがカッコイイんですよ。疾走感のあるストーリー運び、惹かれるセリフ、洗練された地の文章など、クールな小説ってまさにこういうのだと思うんですよね。
映画やドラマなどの映像では味わえない、小説がもつ魅力だと思うんですよ。こういう本こそ読書に興味ない人に読んで欲しいな~。ただ、読む力や想像力も必要だったりするから、ちと難しい。ぜひチャレンジして欲しいです! -
Posted by ブクログ
ベルリンの壁を挟んだ熾烈な諜報戦での悲劇的な結果を受け、ジョージ・スマイリーは英国情報部を去った。今は妻アンとの穏やかな引退生活を送っている。そんなある日、ロンドンでソ連の暗殺者が突如として任務を放棄した。同時に、暗殺者の標的だった文芸エージェントのバーナーティもロンドンから姿を消した。情報部を指揮するコントロールは暗殺者の身柄を確保し、スマイリーを呼び戻す。スマイリーはコントロールの要請で、消えたバーナーティの行方を追いはじめた。スマイリーら情報部の懸命な調査により、バーナーティの過去が明らかになっていくが、その裏でモスクワも邪悪な手をのばしていた。やがて迎える衝撃の結末とは?
サーカスふたたび。 -
Posted by ブクログ
スパイ小説の大家、ジョン・ル・カレの息子という紹介はもうニック・ハーカウェイにはいらないと本作『タイタン・ノワール』を読んで確信した。
2015年に読んだ『エンジェル・メイカー』が大傑作だったので、本作『タイタン・ノワール』も期待していた。それにしても『エンジェル・メイカー』から大分、時間空いたな、翻訳されてないのかな、なんて思っていたらこの人、エイダン・トゥルーヘンって名義変えて『七人の暗殺者』って作品が出てた。そういうの気が付かないからやめてよ笑
本作『タイタン・ノワール』はハードボイルドSFといったタイプの作品。
探偵兼警察のコンサルタントをしているキャル・サウンダーは高級アパートメントに住む研究者であるロディ・デイビットの死体の調査を依頼される。ロディは年齢は90代を超えていながら若々しい肉体を保っており、タイタン化の薬物投与を受けていたことがわかる。
タイタン化は薬物投与によって身体の若返りを得られる技術だ。受けることで驚くべき治癒力を得られるが、身体が成長し、巨人化する。複数回投与すればほとんど死を克服することが出来る。
しかし、タイタン化にはあまりにも莫大なお金がかかるため超超超富裕層か、タイタン技術を牛耳るトンファミカスカ・ファミリーの関係者かに限られていた。
キャルはロディの死の調査をする上で当然トンファミカスカ・ファミリーに行き着く。しかし、キャル自身もトンファミカスカ・ファミリーと浅からぬ関係があった。ある事情で別れたかつての恋人アテナがトンファミカスカ・ファミリーの娘で次のトンファミカスカを引き継ぐ有力者だった。
アテナの協力を得てトンファミカスカ内部を探るキャル。
更に裏社会の顔役であるライマン・ニュージェントなる人物からの接触も測られ、事件は意外な展開を見せていく。
プロットのイメージほど文章は重くなくて、リーダビリティが高くて切れ味が良い。500ページ近い本ではあるのだが、かなり読みやすかった。
事件自体はプロットは二転三転するが、意外とシンプルな結末に落ち着く感じはある。だがそこまで出会うキャラクターたちがタイタン含め魅力的なので、個人的にはかなり満足できた。
特にライマン・ニュージェントは一体どんな外見しているのか見てみたくなった。
タイタンという技術は一見良いことずくめに見えるのだが、複数回の投与をすることで人間から神的存在に近づいていくような、人間性が失われていく部分もあるのだが、そういうアイデアも含めて面白かった。
主人公の結末的にこれなら続編が読みたいなって思ってたら、2025年の春に続編が刊行されているらしい。こちらも評判が良いので今から楽しみ。 -
Posted by ブクログ
SFハードボイルドミステリとでも言うべきか。背景にSF設定があるのだ。この物語世界は、薬物によるタイタン(巨人化)化技術により、ひとにぎりの人間だけが長寿を享受できる世界である。タイタン化すると、身体が若返り、成長が止まらないので巨大化する。この技術は、もともと不治の病や瀕死の重傷の治療のために開発された。この技術を独占する〈トンファミカスカ・カンパニー〉の血縁者やコネのあるものだけが、タイタン化しているのだ。
物語は、近未来の架空の都市が舞台。ロディ・デビットという生物学者が、彼のアパートで遺体で発見されるところから始まる。頭部への銃撃の跡があり、他殺か、自殺か、あるいは事故なのか。警察は私立探偵のキャル・サウンダーに、捜査への協力を要請する。キャルのところに持ちこまれるのは、訳ありの案件と決まっている。ロディはタイタンだった。
SFとういうよりは、バードボイルドミステリだろう。タフな私立探偵が登場。そして〈トンファミカスカ・カンパニー〉のトップであるステファンと、その家族たちのドロドロした愛憎関係。スピード感のある展開で、非常に面白い。続編もあるので期待したい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ不老長寿の薬、T7。
これを投与されると体は若返り、寿命も延びるが、副作用として体全体が巨大化し、強靭になる。
投与された人間は通称「タイタン」と呼ばれ、その投薬には莫大な費用がかかるため、利用できるのは一部の富裕層に限られている。
主人公キャル・サウンダーは、警察に雇われている捜査コンサルタント。 ある一人のタイタンが殺されたところから物語は始まる。
現代も格差社会と言われて久しいが、本書ではその格差がタイタンによってさらに拡大される。
命も、時間も、お金で買える。 そして富を持つ者は、より長い時間を生き、その時間によってさらに富と権力を蓄積していく。
すべてがタイタン側に集まっていく世界だ。
主人公キャルの立ち位置が絶妙である。 警察のコンサルタントでありながら、タイタン側にも顔が利く。
かつての恋人アテナが、タイタンの中でも大物中の大物であるステファンの娘であり、アテナ自身もタイタンだからだ。
普通の人間とタイタン。 その両方の世界に足をかけているキャルを通して、この社会の格差が浮き彫りになっていく。
キャルのキャラクターもいい。 シニカルだが筋を通す。
普通の人間より喧嘩は強いが、本作では人間にもタイタンにも徹底的にボコられる。
主人公が圧倒的に強い物語もいいが、弱い主人公には弱い主人公の魅力がある。 傷つくからこそ、それでも前に進む覚悟が見える。
そして、自分たちと同じ「普通の人間」として身近に感じられる。
しかし、タイタンには勝てない。
主人公だけでなく、この世界の普通の人間はタイタンには勝てない。
タイタンは神ではないが、限りなく神に近い存在になっている。
彼らの長大な時間の前では、真実も、人が大事に紡いできた物語も、テレビドラマの一話のように薄っぺらく見えてしまう。
ラストは予想した通りの結果だった。 これでは普通の人たちは救われない。
次作はすでに英国で発売されているという。
その答えは、もう少し先にあるのだろうか。