サマンタ・シュウェブリンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
瀕死の女性がそこに至るまでの出来事を朦朧としながら話す形で進む本書。構成の新しさと、明確に書かれないままなのに引き込み続ける文章に驚きました。
作中何度も登場する「救出の距離」という言葉はかなり女性的な感覚かもしれず、根拠はないが当たっている「ピンときた」の表現の最高峰だと思います。いい意味で女性的な感覚に溢れている一方、読み終わってから冷静に考えてみれば、イラつく態度を取っていた夫たちにも正しさがあるな、と思えるところもまた面白さがあります。説明が難しいので、とりあえず読んで!となってしまう本です。
あとがきがかなり理解を進めてくれますので、意味がわからず閉じそうになった際にはぜひあとがきを -
Posted by ブクログ
ネタバレサマンタ・シュウェブリンの邦訳三作目。国書刊行会のスパニッシュ・ホラー文芸シリーズとしても三作目。
病院のベッドで横たわる女性と、少年との会話劇。どうやら少年は、女性に過去を思い出させ、何かのターニングポイントを見つけたいようで…
中編程度の長さで、サクッと読める。
全編に漂う不安感とむず痒さは、まるで虫が体を這うよう。そして地の文がなく二人の会話だけで話が進むため、熱にうなされるような、奇妙な酩酊感を味わうことができる。
題の「救出の距離」とは、母親が自分の子供の危機に対して、すぐに駆けつけることができる距離。このことの説明と、子供が遊ぶ描写が繰り返されることにより、子供の身に何か起こ -
Posted by ブクログ
わが子を愛おしく想う母性と社会問題への警告と呪い… アルゼンチンのサスペンスホラー #救出の距離
■きっと読みたくなるレビュー
アルゼンチンのサスペンスホラー、芸術性の高い文芸作品ですね。母娘の絆がメインのお話なんですが、なにやら忌まわしい雰囲気たっぷりで、さらには社会問題への怖い警告も含まれています。
本作の導入、いきなり意識があるのかないのか、何が起こっているのかさっぱりわからないところから始まる。得体のしれない恐ろしさに包まれながら、ひたすら少年の声との会話を下敷きにしながらストーリーが進行するんです。この二人の語り口調がまるで魔術や呪文のようで、非日常の世界に引きずりこまれていくこ