京都が舞台の高校野球のお話しなんて…
読まないわけがない!!
自分の推しの地×推しのスポーツを織り込んだ青春小説は人の脆さ、儚さ…そしてそれに負けない強さ、煌めきが描写されていた。
夏の甲子園出場をかけた京都府大会決勝。
木暮東工業と境風学園は、7回裏まで0-0で互いに譲らず接戦を繰り広げていた、
その悲劇が起こるまではー。
その悲劇とは、「危険球」だった。
しかもそれは、ただの危険球ではなかったのだ。
その一球が高校生たちにもらたした、
言葉にできない痛みや想い…
こんなに胸が苦しくなる話は久々だった。
そしてここまで救われた作品は
なかなか出会えないと心から思う。
ちゃんと人と人が心からぶつかって、考えて、苦しんで…だからラストシーンでは、温かい涙に誘われる。
さらに本作の見どころは、人との繋がりと「言葉」に対する向き合い方が誠実に描写されている。
私は本作の言葉たちにも、
数え切れないほど救われた。
やっぱり高校野球って、京都っていいな。
それにしても京都と野球という大テーマを扱いながら、それに負けないストーリー展開を紡ぎ出した「木住鷹人」に、ただただ頭が下がるおもいだ。
またまたすごい天才作家に出会ってしまった…
次作が楽しみである
⟡.·言葉に対する向き合い方
p.100
「人に何かを伝えるとか、人を理解するということは、きっともっと深い、生半可でないことなのだろう。簡単にできると考えること自体、謙虚さを欠いているのかもしれない。」
p.180
「確かに、他人にものを伝えるというのは大変なことだ。すごく難しくて、上手くいかないことも多い。だが、それは言葉に大きな力があるからだと、俺は思う」
「一生懸命に相手のことを思えば、言葉を使わなきゃいけない時もある」
p.206
「これからもぶつかったり、言い合ったり、いろいろあるだろうが、とにかく躊躇わず話をしよう。投げかける言葉を選びながら、受け止める言葉の意味を一生懸命考えながら。」