長谷川晶一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
伊藤智仁。ゴジラ松井と同じ年にヤクルトへ入団。ルーキーイヤーでは実働2ヶ月半だが、三振を奪いまくる高速スライダーと防御率0点台が評価されて新人王。その年、1試合奪三振の日本記録を達成しながらサヨナラホームランを打たれたことは、結果的に「悲運のエース」としての彼を象徴するシーンだ。
華々しい1年目だったが、その後はケガに苦しみ、短い現役生活のほとんどが手術とリハビリの繰り返しだった。しかし、本書の彼の発言には悲壮感や後悔は感じられない。あまりに柔軟で故障しやすい肩関節や新人時代に過酷な登板数を強いられたことも、そして「悲運のエース」と呼ばれたこともプロ野球で注目を浴びることができたと、前向きに考える。
だからこそ彼は「幸運な男」だった。
伊藤智仁は現役引退後、投手コーチに就任。今の彼が語る、ピッチャーに必要な素質は壊れないことだ。 -
Posted by ブクログ
鈴木忠平『嫌われた監督』の落合博満からの加藤弘士『砂まみれの名将』の野村克也と来て今度は『正しすぎた人』、それは広岡達朗です。最近のネットでの阿部慎之助辞任につてのコメントが「老害」として炎上したので存命を確認した名前ですが、1978年にヤクルトを球団創立29年目にして初めてセ・リーグ優勝、そして日本一にした監督です。それでも2019年の球団50周年記念イベントに呼ばれなかった男でもあります。現在94歳。おっ!著者の長谷川晶一って知ってるぞ!『最弱球団 高橋ユニオンズ青春記』『極貧球団 波瀾の福岡ライオンズ』読んでました。『プロ野球12球団ファンクラブ全部に10年間入会してみた』『プロ野球バカ本 まったく役に立たないブックレビュー! 』も「野球バカ」炸裂で面白かったのを覚えています。しかし彼の本当に愛しているのはスワローズ。セ・リーグで唯一ペナントを獲ったことのない球団が突然優勝した「1978年のヤクルトスワローズ」を「1978年の広岡達朗」としてオーラルヒストリーを書きする記した労作です。柳沢健の『1976年のアントニオ猪木』に通じる特異点イヤーの記録です。コロナ禍もあって電話での取材の積み重ね、それは耳が遠くなり記憶が薄れゆく老人への向き合いを心折れずに続けた著者の「スワローズ愛」と「野球バカ」がなければ成し遂げられなかった仕事です。この本が出たことで広岡は通説に抗う立場を残せたと思います。『正しすぎた人』、この書名は最初は揶揄に感じたのですが、読み終えてからは賞賛に思えました。なにより過去より今を見ている94歳、すごいです。「あの頃の私は説明が出来なかった…(中略)…今ならばそんな反省がある」言えないよ!
-
Posted by ブクログ
ネタバレプロ野球選手は、現役を終えた後どこへ行くのか。
本書はその問いに、14人の元選手への取材で答えようとするノンフィクション。
登場する選手たちの多くは、いわゆるスター選手ではない。
プロの世界で働きながらも、思い描いたキャリアを歩めたとは言えない者が多い。
引退後は「元プロ野球選手」という肩書きを重荷に感じる場面もあったという。
だが、新しい仕事と真剣に向き合う中で、やがてその過去を自分の力に変えていく姿が、この本の核心である。
派手な演出はなく、ひとりひとりの言葉をていねいに拾い上げる姿勢が一貫している。
転職を考えている人、キャリアの意味を問い直したい人、あるいは「自分の過去をどう使うか」で悩んでいる人に届く一冊。
野球ファンでなくとも、十分に読み応えがある。