米本昌平のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ[ 内容 ]
人の命はいつ始まるのか―この問いがアメリカで大統領選挙の争点となり、ヨーロッパで法制化が急がれる原因となっているのはなぜか。
臓器移植や人体商品の売買が南北問題を激化させ、韓国で起きた科学史上稀に見るスキャンダルも、そうした動きの一例として位置づけられる。
今や生命倫理は政治問題となったのだ。
生命をめぐる急速な技術革新と人類の共通感情との間にあるギャップを埋めるために必要な視座を提示する。
[ 目次 ]
プロローグ ES細胞捏造事件
1 バイオポリティクス―身体政治革命
2 科学革命としてのヒトゲノム解読
3 バイオバンクとは何か
4 ヒト胚の政治学―クローンとES細胞研究
5 人体部分の商品化
6 欧州的秩序の確立
終章 人体保護庁の誕生
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
フーコーは「バイオ=ポリティクス」という言葉を、『性の歴史第1巻:知への意志』で用いており、そこでは人間の身体機能の利用に関する支配と対を成すものとして、生物学的な「種」の側面に介入し管理する権力の働きが考えられています。具体的には、繁殖や誕生、死亡率、健康の水準、寿命などの管理に関わる権力を意味しています。本書では、こうしたミクロな権力に関わる問題を念頭に置きながらも、先端医療や生物技術に関する政策論という意味で「バイオポリティクス」という言葉を用いると述べられています。
20世紀型の生命倫理学は、医療などにおける個別的な身体に対する働きかけが問題となっており、インフォームド・コンセントと自己決定権が基本的な原理となってきました。しかし20世紀末以降、生命科学の進展によって、個々の身体に対する働きかけを超えて、「ゲノム的自然」という領域への研究が進んでいったと著者は言います。これによって、さまざまな可能性を秘めた遺伝子検査が特許の対象となり、人生設計に必要な情報を提供するサーヴィス産業が生まれてきました。そして、こうした現象は、自己決定と自己責任に基づくインフォームド・コンセントの原理と大きく乖離する形で、新たな倫理的・政治的問題を生み出していると著者は指摘しています。
こうした「ゲノム的自然」に対する政策的・社会的問題を、具体的な事実の紹介に焦点を当てる仕方で明らかにしていこうというのが、本書の企図と言ってよいのではないかと思います。ただ、具体的な事実に付きすぎているのか、いまひとつ問題の全貌が見えてこないような印象を抱いてしまいました。 -
Posted by ブクログ
アカデミズムの外で生命科学や科学史の研究に取り組んできた著者が、みずからの知的変遷を語った本です。
大学紛争の経験を経て、アカデミズムの権威主義と、講壇生物学の知的硬直性に批判を抱いた著者は、京都大学で生物学史を教えていた白上謙一から知的刺激を受けます。さらに、生気論の立場を取ったためにほとんど禁書扱いされていたドリーシュの著作を入手したエピソードなどが語られています。
著者は、科学史家のクーンが提唱した「パラダイム」という概念には、「正パラダイム」と「逆パラダイム」の二つがあると考えます。正パラダイムが研究の範例なのに対して、逆パラダイムは「何をしてはいけないか」を示すことで、パラダイムの重要な一翼を担うことになると言います。そして、ドリーシュが完璧に黙殺されているのは、それが講壇生物学の「逆パラダイム」となっているためであり、そこから現在の生物学のパラダイムを相対化する視点をつかむことができるのではないかという考えが語られていきます。
証券会社で勤務しつつ、在野の研究者として生物学史の研究を進めていき、やがて三菱化成の生命科学研究所に採用されるまでの経緯も、興味深く読みました。