佐野和哉のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
タクシー運転手という職業ゆえに出くわしたことがある奇妙なこと怪異なことの体験を語っていくアンソロジーかと思いきや、それらは単に枝葉でメインになるのはそのタクシー運転手のヨシダさんのことを慕う主人公「僕」の目線で描かれる、ヨシダさんの呪われたファミリーヒストリーを描いていく長編だった。ヨシダさんと「僕」のわちゃわちゃしたやり取りや、マンガで使われるような擬音の多用、胸糞悪くなるような虐待場面の表現などが自分にはあまり好きではなかった。どっちかというと読もうと思った動機である「怪奇話集」で通して欲しかったが、終盤の怒涛の展開の熱量は凄まじく、これこそ著者は書きたかったんだろうなぁと思った。