事実は不透明。
都市伝説とは、出どころ不明な噂話が、他人に影響を与えるまでに力を増した存在である。実際に存在するかは重要ではない。火のないところに煙は立たぬという言葉があるが、煙こそが重要なのだ。火は過程でしかなく、煙が目的であり結果だ。煙が人為的なものであれば、そこに必ず意図がある。助けを求める意思なのか、獣避けなのか、はたまた悪意なのか。都市伝説という結果を解体し、悪意を取り出す。それこそが都市伝説解体センターである。
本作は所謂スピンオフというものだ。原作はゲームであり、ジャンルはミステリーアドベンチャーである。怪異を特定し、都市伝説を解体する都市伝説解体センター。そこで働く職員が都市伝説を解体しながら、大きな悪意に巻き込まれてゆくという作品だ。原作のファンとして、本作は非常にお薦めである。原作で登場する怪異の特定と解体の要素が盛り込まれつつ、原作でも重要な要素であった悪意も散りばめられている。原作が好きな人であれば、必ず好きになるだろう。しかし、原作の知識が無ければ十全には楽しめないとも感じる。しかしそれは悪いことではないとも思う。原作は性質上ネタバレ厳禁であり、ラストの破壊力は高いものであった。しかし、ネタバレ厳禁だからこそ誰とも感想を伝え合うことができないのである。私は誰かに感想を言うのが好きだ。誰かの感想を聞いて共感するのも好きだ。多くの人も心が震える作品に出会った時は、その気持ちを誰かに伝え、共感したいと思うだろう。その気持ちを本作では少し解消できた。登場人物たちの心情が、小説なら直に伝わってくるためだ。本作を読んで。1人で都市伝説を解体していた自分に、1人ではないと慰めることができた。