キム・フンのレビュー一覧

  • ハルビン

    Posted by ブクログ

    最初に断っておくと、本書は小説だ。
    参考文献の記載も無く、ノンフィクションに分類されていない時点で、本書の歴史的事実に関する記述の正確さを考慮して評価を下すことは適切ではない。あくまで実際に起こった事件を土台として、当事者や関与した人間がどのように考えて行動したかを考える作家の想像力の方向性と、それを再現するための文章能力や演出方法に注意を向けて読むべきだ。当時の情勢や声を現代に届けてくれる資料として本書に目を通していくことはあまり意味がないように思う。それが作家の意図する全てではない。

    金薫は、安重根の若く力強いエネルギーと行動力を是が非でも取り上げ、作品として昇華させたいと長年思っていた

    0
    2025年11月22日
  • ハルビン

    Posted by ブクログ

    安重根の意識は戦争状態であり、暗殺は敵国のリーダーの影響がないものにしたということだった。当時、彼の行為は理解されることなく、信仰していたカトリックからも罪人扱いにされていた。テロ行為だからね。でも、戦後になって名誉回復になった。

    0
    2024年11月25日
  • ハルビン

    Posted by ブクログ

    前々から安重根の物語は読みたいと思っていた。この「ハルビン」は安重根に肩入れするために伊藤博文を貶めていることなどはなく、事実に多少の脚色を施しながら淡々と描かれている。寡黙ながらも毅然とした安重根の実行力とその正当性がよく伝わってきた。

    0
    2024年05月25日
  • ハルビン

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    安重根と伊藤博文それぞれの人生を交互に描きながら、暗殺シーンの見せ場までに読者の気持ちをジワジワ高めていく手腕がお見事。
    「暗殺はまだかな?」とドキドキワクワクしながら読み進めていました。
    2人が少しずつハルビンに近づいてくるのを追いかけるのがまた楽しい。地図がついてたら嬉しかった。

    乾いた硬質な文体で、どの人物にも特段肩入れすることなく淡々と描いているのだが、しかしどの人物にもやけに生々しい存在感があり、「実際こういう人間であったのだろう」と思わせるリアリティに満ちている。

    ただ、個人的に、理想を掲げて突っ走る英雄タイプの歴史上人物が苦手なので、「奥さんと子ども置いて金も送らんと何してん

    0
    2025年11月14日
  • ハルビン

    Posted by ブクログ

    歴史小説ということで読む前は身構えていたけれど、すごく読みやすくストーリーに没頭できた。今まで読んできた本と繋がるところもあり理解が深まり、だけどまだまだ知らないことが自分には沢山あって、知りたいことも増えた本でした。読んで良かった。

    0
    2025年06月04日
  • ハルビン

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ハルビンで日本の初代首相伊藤博文が暗殺されたことを、暗殺者安重根や韓国側からの目線で書いたノンフィクション(だと思う)。
    とはいえ、私自身は日本側からの視点でのこの事件の詳細はよく知らない。
    日本は韓国を併合しようとしていたのだから、当然多くの韓国人は日本に対して良く思っていなかっただろうと考えていたが、この本にはそのような韓国人の激しい感情はほとんど書かれていない。
    伊藤が暗殺された後の韓国人、少なくとも上層部の人たちは、日本に謝罪し、喪に服し、伊藤の死を悼んでいた。
    日本も同様、伊藤の暗殺に対して、激しい怒りに出ることもなく、裁判も当時の法律に則って静かにきちんと、安重根への取り調べを何度

    0
    2025年05月20日
  • ハルビン

    Posted by ブクログ

    世界史で安重根を学んだが、読後は安重根をより身近に感じることができた。
    この本を読む前は伊藤博文を暗殺した人物だという知識しかなかったが、安重根が何を感じ、自分の命を投げ捨ててでも何を訴えたかったのかを読後に何度も考えさせられた。
    特に暗殺後の裁判における安重根と検察官との駆け引きはリアルで非常に興味深かった。

    0
    2025年01月14日
  • ハルビン

    Posted by ブクログ

    日本は明治維新から駆け足で拡大し、日清、日露戦争の後〈列強〉といわれる陣取り合戦に名乗りを挙げる。
    高校で習う〈朝鮮半島併合〉は、単に地図の色が変わった程度。
    当然ではあるが人の血が流れていることを、この本は伝えている。

    「伊藤博文」は、幕末に吉田松陰の下で学んだ長州藩志士。維新後に初代内閣総理大臣(その後何度も再任)を勤め立憲政治を進めたことはもちろん、日清戦争の下関条約締結で清朝末期の西太后とも関わりが深く、昭和の千円札でも馴染み深い、明治の重要人物。彼を銃で暗殺した「安重根」という人物に光を当てた物語。

    恐らく膨大であったであろう資料をもとに、客観的な文章を心がけて綴られた物語は、淡

    0
    2024年11月13日
  • ハルビン

    Posted by ブクログ

    ハルビンの駅で伊藤博文を銃撃した安重根(안중근)を描いた小説。安家は黄海道の海州で代々暮らしてきた地主だ。安重根は安家の長男だった。一人で山に入り数か月も家に帰らず、時にはノロ鹿を銃で撃って持ち帰ってくるような青年だった。キリスト教の洗礼を受けていたが、神父には上海にいくとだけ話した。そして上海では思ったほど人に会えず一年して戻って来た。そして村で小さな学校を開いて子供に地理や国史などを教えていたが、もどかしさを感じていた。そしてしばらくして神父にあいさつに行った。ウラジオストクに行くと。神父は何故そこに行くのかと問うたが、安重根の答えを待たなかった。安重根という男を知っていたからだった。これ

    0
    2024年09月14日
  • ハルビン

    Posted by ブクログ

    韓国側からの見方により、安重根が一方的に正義だとは思わない。だからと言って日本側の朝鮮統治や安重根に対する裁判の経過と結論はまったく正しくないけれど、それぞれの立場で依拠する論理が理解できてしまう。どちらにも正しいと思わせるところがあるから難しい。そしてそういった国家の論理を超えて存すると思われる宗教の立場においても、これらを救うことはできないことをこの小説は示してしまう。その意味ではある意味絶望的である。ただ、作者は後記において、安重根の青春を描きたかったと述べており、その意図を鑑みると、この小説の描きたいところを理解することができる。

    0
    2024年08月30日
  • ハルビン

    Posted by ブクログ

    韓国側と日本側、それぞれの立場で正しさは変わってくる。この小説からのみ読み取るのであれば、どちら側も理解できる。作者はあとがきで安重根の青春を描きたかったと述べている。そういう意味ではこの小説の描きたかった事を理解することができる。


    Wikipediaでは以下のように記載されていた。
    開化派の流れを汲むカトリック教徒であるが、華夷秩序を主張した旧守派及び東学党や、後継たる天道教及び一進会とは終生敵対したため、民族主義者としての立場は不明確とされている。そのため、生前に本人が何を明確に主張していたのかは、はっきりとしていない。親露派との関係性は不明。1909年10月26日に韓国併合阻止のため

    0
    2024年11月25日