「宇都宮」といったら、「餃子」というイメージに今では何の違和感もありません。これが、「宇都宮の名前が知られていない」という悩みを抱えた宇都宮市役所の職員研修をきっかけとして、20年にも満たない間に定着したものだとは思いもしませんでした。宇都宮市の職員が総務庁(現総務省)の家計調査データ「餃子消費量日
...続きを読む本一」を見つけ、「餃子で宇都宮をPRする」という町おこしをスタートさせたわけです。
しかし、決して順調に進んだわけではなく、そもそもの宇都宮餃子会の立ち上げすら、異論が続出し、賛同者は5名にすぎなかったそうです。その後の、ニセ宇都宮餃子問題、協同組合化、実験店舗の営業譲渡などさまざまな困難に立ち向かった過程が詳細に書かれています。単なる成功物語ではなく、町おこしから離れていった餃子店の存在やテーマパーク「宇都宮餃子共和国」の失敗などについても正直に書かれており、プロジェクトの大変さが伝わってきます。
なぜ、町おこしが成功したかというと、タイトル通り「官民一体」の活動に行き着きます。「餃子のまち」を売りたい官と「宇都宮餃子」を売りたい民が一体になったからこそである。官民一体で取り組むことができた背景には、「日本一の餃子の町」という誇りと「餃子で宇都宮を活性化する」という熱意を当事者が常に持ち続けていたことが大きな要因としてあげられます。
ただ、官民の熱意やモチベーションだけで成し遂げられたわけではなく、硬直しない組織、ルールの遵守、徹底した議論を通じての問題解決プロセスといったプロジェクトマネジメントの観点からも学ぶことの多い一冊です。