田原史起のレビュー一覧
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中国農村の姿
著者の豊富なフィールドワークを基にして中国農村の姿を描き出した好著である。一見似ているようで根本の考え方が異なる中国農村と日本農村に違い、共産党独裁下における中国社会の安定性、習近平政権の都市化計画など、初めて知り、なおかつ納得できるような解説が目白押しである。トピックス エピソードを並べることによって全体を推測させる という著者の手法にも納得感がある。
そして最後の「麦の花」の話で全体を締めくくる読み物としての技法にも非凡なものがある。 -
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中国は都市と農村の2つの社会があると言われる。かつてある日本企業の中国駐在員が中国は農村という植民地を抱える国だ、という発言を聞いたことがある。自分は中国に住んでいた経験があるにもかかわらず農村に足を踏み入れることはなかったが、本書を通じて実態の一端に触れることができた。
中国農村は企業や役所といった中間団体が希薄な地帯であり、血統による家族主義に基づいている。日本の村のような地縁に基づく社会とはまた違っている。重視されるのは血縁に由来する人的なつながりである。筆者は、大学などで縁者をリクルートして農村に滞在し調査を行っている。
本書はこうした農村を舞台に農民工の出稼ぎや一人っ子政策といった共 -
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中国では、農村戸籍と都市戸籍の区分、大都市における農民工の劣悪な労働環境、農村からの大学進学希望者の急増による大学の乱立による就職難、など、様々な中国の農村に関する情報を見たり聞いたりしてきている。1種の農奴性ではないかと思い、毛沢東がこの農民たちを取りまとめ、社会主義革命を達成するため、大動員したのではないかと考えていた。本書を読みながら、魯迅の阿Q 正伝を合わせて読んでいた。辛亥革命の前、魯迅は農民をどう考え、どういった方向に導こうとしていたのか?絶望的な環境の中で、狂人として振る舞う農民、故郷に出てくるルントウ、阿Q 正伝の阿Qこれが現在の農民の考え方と一続きではないだろうか?と考えてい
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中国農村の現在
「14億分の10億」のリアル
著:田原史起
中公新書 2791
中国人民公社は、1958年に毛沢東の肝いりで制度化され、中華人民共和国憲法の成立とともに1983年に消滅した
大量の餓死者を生み、一人っ子政策の遠因となった中国の農村政策を、人民公社の消滅を視野にいれて、社会学者の分析したのが本書になる
中国のアキレス腱は、食である。農村の生産性は低いままであり、農産物の安全性は低い。
都市部はスマートテックなどのIT振興政策で発展し、農村との格差は広がる一方である
家族制度や政治との関与について中心とされ、農作物の流通や、農業生産性をいった経済面にあまり触れられていないこと -
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本のタイトルを見て、読みたかった内容はなんだったろう。
偉大なる文明の復興という、ファンタジックな野望を掲げる指導者の下、その大半を占める「農村」民の実態はどうなのか。
全く判らなかった。
その文脈では。
上に政策あれば下に対策あり、はよくわかったけど。
著者によれば「改革前」は少なくとも、貧しくとも清く正しく力強い人々だったってことか。
だが、何度も「改革前」と言いながら改革後はどうなのよってところをあまり評価していない気がする。
農村保護に力を入れる中央って表現もあったやに記憶するが、それが上手くいってないってこと?
構造の説明はなるほどと思うところ多々あって、かの文明では春秋戦