ちょっと前にものすごく話題になった、儲かる経営、ビジネスの仕組みについて述べた本。一昔前に話題だったタピオカ屋がどういうビジネスをしていたのか、という例を切り口に、税理士兼中小企業の財務コンサルタントで、人気のYoutuberでもある著者が、とても分かりやすく解説している。
なんかすごい昔の新書(調べたら20年前!)で『さおだけ屋はなぜ潰れないのか』という新書がすごい話題になっていたが、結局読んでいないので内容は知らないのだけど、それとタイトルが似ているな、と思った(これも調べたら、この新書は「会計学」の本らしいから、内容はちょっと違うのかも)。確かにさおだけ屋の儲け方も気になるし(でもさおだけ屋って今もあるの?)、タピオカ屋が(その後の唐揚げ屋とか、今後のケバブ屋とか)どうなったのか気になる。で、この本を読むと、それはそういうビジネスモデルであって、ブームが去って店が潰れたことが残念、とか、そういうことではない、ということがこの本を読んで分かった。というか、本当にそのブームが続くと思って商売を始めたと言うなら、その人には商才がない、とも言える。
別に店を始めようとかはあんまり思わないけど(でも最近、中年の危機を迎えているから、スポーツ選手とかタレントが始める焼肉屋とか、あと脱サラした人が始める居酒屋とか、そういう道もアリかもしれない、とか安易に思ってしまうおれもいるのだけど)、商売の仕組みを知るということは賢い消費者であるために必須のことだと思うし、日常にも例が溢れているので読んでいて飽きなかった。
この本で勉強したことのメモ。商売とは全然関係のない文脈で、歴史を学ぶ大切さが大事だ、というのはおれが読む他の本でも書いてあることだけど、物事をもっと大きい文脈に位置付けて俯瞰して捉えるということの大事さ、という点では、「環境問題」だろうか。「社会変化という点で見ると、ブームよりも息が長いのがトレンドで、さらに長くなると変化が常識として定着します。環境問題はブームからトレンドになり、常識になった一例」(p.20)というのは、ちょっと驚いた。つまり環境問題は、もちろん高度成長期とかそんな昔の話をしなければ、わりと現代において常識のものかと思っていたが、「過去にはロハス、エコ、エシカルといった短いブームを繰り返し、SDGs時代になってようやく広く浸透した」(同)ということで、なんか本当に最近の話なのか、と思った。確かに、昔ロハスって言葉流行ってたよな。でもSDGsが一過性のものでない、というのはどうやって分かるのだろうか。これもまた新たな言葉に取って代わったりしないのか、とか、一周回って環境を破壊する方向に進む、とかそういう歴史は今後生まれないのか、とかチラッと考えた部分だった。あと、客のニーズに応える話のところで、確かに2階にある大戸屋ってあるよな、って思ってたが、「女性は1人で入っていくところや1人で食べている様子を見られたり、料理をしない人だと思われたりすることを嫌がる傾向があります。そういう不安を、外から見えない店づくりによって解消しようとしている」(p.24)ということがあるらしい。なるほど。と言ってもこの考えも古いのだろうけど。色々なビジネスが紹介されているが、おれは絶対やらないようにしているスマホの無料ゲーム。課金させて儲けるんでしょ、というのは分かるが、「スマホゲームなどのウェブコンテンツでは、ユーザーの5%が有料サービスを利用すると収支面で事業が成立するといわれます(5%ルール)。」(p.102)って、100人に5人だけでいいのか、というのは驚き。逆にその5%の人が、他の大勢の無料ユーザーの便宜を図っているのかと思えば、やっぱり自分は絶対にその5%にならないようにしよ、という気になる(って実際にやったことないから分からないのだけど)。でも、実は、最近今使っている格安スマホのギガが足りなくなる時があって、低速が我慢できずに1ギガずつ課金して購入する、ということをやってしまっているが、それと変わらない気もする(なんのための格安なのか。だからついに家にwifiを設置しようとしている。今までなかったのか、って感じだけど)。
それから、いろいろな現象が概念として与えられていることも知った。例えば「フードダイバーシティ」(p.33)は、ラーメンやコーヒーなど自分好みにカスタマイズして多様な客のニーズに対応することらしい。逆に、ある企業の紹介で「パーパス」という言葉が使われているのを最近見て、なんて特殊な言葉を使うんだと思ったけど(前に出てきた「エシカル」を実際に見た時もものすごい違和感)、その言葉もこの業界ではちゃんとある概念らしい。「パーパス経営」(p.42)をすることで、社会や従業員を味方につけて事業を成長させていく、という理念があるらしい。あと、この業界では常識的な言葉も、素人は初めて知った、という言葉を整理すると、「ESG(環境、社会、ガバナンス)」(p.50)とか。コンプライアンス的なこと?他には、「店舗で商品を見てネットで注文する」ことを「ショールーミング」(p.77)。これは実店舗には申し訳ないけど、正直値段が安い方を選びたいとか、ポイントが貯まる方がいいなと思ってこれをやってしまうことがある。あと分かりやすいのは、普段は節約しているのに旅先だと財布の紐が緩む現象の背景にあるのが「メンタル・アカウンティング」(p.126)。「人の判断は合理的ではない」(同)とか、「仕事で得た1万円とギャンブルで儲けた1万円は(略)感覚的には価値に差が生まれる。散財するときは散財しやすい環境が整っていることが多い」(p.127)とか。こういうのは一昔前に流行った(今も流行ってる?)「行動経済学」的な話。あとは「B to C事業」とか「B to B事業」とか、「レッドオーシャン」とか「ブルーオーシャン」とか。
あとは、借金をして資金を得て機会を逃さないようにすることの重要性とか、おれにとってはそこが一番難しいというか、そういう、ギャンブルじゃないけど、リスクを背負って、みたいなことにどうしても抵抗を感じるので、おれには経営とか商売ってやっぱり向いてないわ、と思った。「じつは儲かっている企業は日本に4割弱しかありません。もう一歩踏み込むと、経営の支援や再生を使命とするコンサルティングファームですら、その4割近くが赤字」(p.188)というから、これが本当に驚きだ。
商売や経営のたくさんのアイデアが分かりやすく紹介されて、世の中の勉強をした感じになれる本だった。やっぱりYoutuberとかで再生数を稼ぐ人というのは本質的には頭の回転も早いだろうし(この著者自身は「スポーツは得意だけど学歴がない落ちこぼれだ」ということがコラム的な部分に書いてあるあたりはちょっと鼻につくのだけど)、見せ方がうまいというのが圧倒的で、おれは結構良い本だと思った。(26/01/09)