マークハッドンのレビュー一覧
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この小説は、少年の成長物語であり、普遍的な親の子どもへの愛を描いた小説だと思います。
さてこの作品は、作中では明言されていませんが”何らかの発達障害”を持った少年が書いた小説、という体裁の作品です。
とにかく発達障害をもった主人公の一人称の描き方がとても丁寧です。作中では文章だけでなく時には図も織り交ぜて、彼の思考や脳内での情報処理が描かれます。これが面白い。
近所の犬の刺殺事件を調べ始めるクリストファー。その過程で苦手な、人との対話に挑戦し証言を集め、そして理屈だけでは割り切れない、大人たちの世界に足を踏み入れざるを得なくなります。
個人的には中盤の思わぬ展開と、物語の大き -
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ネタバレ15歳3ヶ月のクリストファーはある真夜中、向かいの家の庭で犬のウエリントンが農作業用フォークに刺されて死んでいるのを発見。一人で数学の問題を解くのが好きで他人と関わるのは苦手なクリストファーだったが、犬を殺した犯人を突き止めようと聞き込みを開始する。父は調査を打ち切るよう言ってきたが、ルールの穴をついて近所の老婦人と話したクリストファーは病気で死んだ母にまつわる重大な隠し事を知ってしまう。
常に数学的で論理的な視点で世界を見ている少年が〈親〉という理不尽に直面する、一風変わったジュヴナイル・ミステリー。ふだん我々が"あるある"で済ませていることは論理的に考えると何も&q -
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子供向けの推理小説だろう、と、気軽な気持ちで選んだ本。
ところが、えそっち?となっていき、引き込まれた。
この家族が抱える家庭の問題に、共感するところがあって、自分がこの本を手に取った偶然に驚いた。そして、何度か身につまされて泣いた。
自閉症の子の目線や心の動きのまま(という設定で)書かれているので、読みにくいと感じることもあったけれど、それはそれで味わい深く、分厚い本でしたがあっという間に最後まで読みました。
息子を持つ親御さんにおすすめ。主人公の言動にハラハラしつつ応援しながら、親としての自分のことを振り返りながら、読んで、その状況を(物語なので当然ながら)立体的にかつ俯瞰して眺めることが -
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ネタバレ発達障害の少年が,夜中にお向かいの愛犬が殺されているのを発見することから生じる様々な騒動を描く.
主人公は,気に入らないこと,想定外のことが発生するとパニックを起こすが,我々と同じ意味での感情は持ち合わせない.その一方,我々とは視点が異なるものの見方をしており,普通の人がスルーするところに固執し,それが物事の進行の障害になることもあり,また,何かのブレイクポイントになることもある.
本書はこの少年が執筆した本という体裁となっており,したがって,上記の様な理由から,いわゆる「感情移入」は難しいのだが,この不思議なストーリーテラーのおかげで物語は紆余曲折しながら進行し,主人公は冒険を成し遂げ,また -
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タイトルの通り、夜中に犬が殺害された事件を解明していく物語。
犬殺害が一冊の物語として成立するのか、というところだが成立する。なぜねら、この作品は犬殺害事件の犯人が誰なのかというところが重要なのではなく、誰がこの物語を書いたのかが重要だからだ。
この作品はクリストファーという少年が書いている、という設定。このクリストファーはいわゆる発達障害の少年。
そのため、他人の心情を理解したり想像したりすることが困難である。自分の中にある規則を守って生活していたいクリストファーは、周囲の人々と円滑な関係が保てない。
こういうクリストファーがある夜に殺された犬の死体を発見するところから物語ははじまる。
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クリストファー少年はある夜、道を挟んで斜め向かいの家で飼われている友だち=ウェリントンという名の犬が、横たわっているのを見つける。家を抜け出して、傍まで行ってよく見てみるとウェリントンは大きなフォークのような道具で刺されて死んでいた。
クリストファーは素数が好きだが、黄色と茶色が嫌いで、赤色は好き。決められた時間に決められた行動をするのを好み、人ごみや、人に触られるのは大嫌い。言葉を使わないで喋る、つまり人の表情も理解するのが苦手。でも、数学は大好き。
そんなクリストファーはシボーン先生から「自分が読みたいと思うようなものを書きなさい」と言われたので、自分の好きなシャーロック・ホームズの小説の -
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こちらでフォローしている方の感想にひかれて読むことに。とても面白かった。わたしが知らないだけで、話題になっていたのだろうか。タイトルから軽いミステリかと思っていたが、こういうお話だったとは。
アスペルガー症候群の少年が書いたものという形をとっている。「普通の人」による妙な意味づけや解釈抜きに、彼の精神世界が開示される点がとてもいいと思った。傍目には奇妙だったり困惑させられたりする行動の一つ一つが、彼にとっては必然性のあることなのだ。読み進むにつれ、それが胸に落ちてくる。さらに、彼を深く混乱させる大量の情報に常にさらされて平気でいるわたしたち自身、ある意味では異常なのではないかという気がだんだ -
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海外ドラマ「グリー」にハマって以来、行く予定もまーったくないのにブロードウェイで今なにやってるか見てたり、トニー賞とか気にしてたりして、昨年そのトニー賞をとったってことでこの作品も気になっていて。(たしか、わがアイドル、ダレン・クリスも見にいっててブロードウェイ版で主演だったアレックス・シャープと仲よさげにしてたんじゃなかったっけ。どうでもいいが!)
で、予想以上にすごくおもしろかった!
発達障害のある少年が、隣家の犬が殺される事件に巻き込まれたり、ひとりでロンドンまで電車に乗っていったり、っていう、ミステリで、冒険モノで、成長物語で。わたしは途中で意外な展開に、下手なミステリなんかよりずっ