高杉忠明のレビュー一覧
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ネタバレ昨年読み終えた本だけど、改めて...
20年以上前の本だけど、第二次世界大戦後の日本人の姿が、残酷なほどリアルに描写されていました。
著者の冷静で深い考察がとても面白く、非常に興味深い内容でした。
・天皇は屈辱的な敗北宣言を日本の戦争行為の再肯定と天皇の超越的な道徳性の再確認へと転換しようとした。
・分割占領だったドイツとは異なり、日本は米国一国による占領のため日本が被害を与えたアジア諸国が日本占領において重要な役割を得られなかった。
・敗戦後の飢餓と虚脱状態によって日本人が自分自身の悲惨さに囚われてしまった。
→日本人の加害者意識より被害者意識が強まった。
・占領軍による植民地主 -
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第二次大戦後の連合国占領時代の日本および日本人についての記録の下巻。
本書のハイライトの一つは、第12章・13章の日本国憲法の制定にかかる部分だと思う。GHQ側が示した憲法草案(それは現在の日本国憲法に近いものである)に対して、当時の日本政府側が抵抗を示し、論争と駆け引きが行われる部分である。
本書によれば、日本政府側が最も抵抗を示したのは、「誰に主権があるのか」という部分であった。GHQ草案が「主権在民」とし、主権は国民にあるとした草案を示したのに対して、日本政府ははっきりと反対の姿勢を示す。現在の日本国憲法の前の憲法、すなわち、大日本帝国憲法においては、国民は天皇陛下の「臣民」であり、軍 -
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副題が「第二次大戦後の日本人」。
第二次大戦の敗戦後、アメリカを主体とする連合国の占領軍が日本に上陸した。1945年8月の終戦からさほどの日数は経っていない。本書は、占領下の日本および日本人のふるまいの記録である。
筆者のジョン・ダワーは本書発行当時、MITの教授。歴史学者と思うが、学者の著書らしく事実関係を丹念に整理し記録している。1945年からの数年間のことが主題ではあるが、発行は2001年と比較的新しい(それでも20年が経過しているが)。
本書の説明にも書かれているし、本文中の筆者の筆の運び方もそうだが、この時期の日本・日本人について、筆者は、「勝者による上からの革命に、敗北を抱きしめな -
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最期の1ページまで、貪るように読みました。
本当におもしろかった。
今の日本について、常々不思議に思っていたことの答え、というか、なぜそうなのか原因みたいなものがいくつか書かれてあって、「なるほど、そういうことか」と思った。
たとえば、多くの日本人の中に強くある、戦争の被害者意識。
大人から子供まで、どうしてこんなにも「被害者」としての意識が強いんだろう、と常々疑問だった。海外が日本を見る目と真逆なだけに。
私は、小林よしのりはじめ、「脱自虐」を唱える人たちのキャンペーンの結果かしらなどと思っていたけれど、さかのぼると、GHQと日本の関係、東京裁判のダブルスタンダード、そういったものの結果 -
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まだ下巻は読み終わっていないのだけれど、素晴らしい本です。★5つじゃ足りないかも。
多くの未知の歴史的事実にすっかり心奪われている。
ノンフィクションならではの驚きと、知性と理性の塊のような著者のフィルターによる新しい視点とをむさぼるように堪能し、何度も行きつ戻りつしているので、いまだ下巻の途中。いったいいつから読んでいるんだという感じですが・・・
上巻は、「増補版の序文」から始まり、「日本の読者へ」と続き、謝辞と目次を挟んで、さらに本来の「序」があるという構成で、本文が始まるまでに前書きのようなものがいくつもあって、ちょっと驚くのだけど、実のところ、この一連の序文が特に素晴らしかった。
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上巻を読み終わったとき、「どうして日本人にこういう戦後史が書けないのだろう?」と思っていたが、下巻の天皇制を扱った章を読んで、確かにこれは日本人には書きにくかろうと納得した。
天皇は、何らかの形で戦争責任を取るべきであったという筆者の主張は明確だ。そして、なぜ天皇の戦争責任が問われなかったのかということを丹念に検証している。今上天皇の慰霊の旅は、そうした経緯を踏まえてのことなのかもしれない。
日本国憲法の制定に関しても、この著作を読むことでかなり克明にその経緯を知ることができた。憲法改正の動きが活発になりつつある今だからこそ、これらの章の持つ意義は大きい。
「平成」と年号が代わって早29年。「 -
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ネタバレ敗戦直後の日本の状況を、アメリカ人日本史家がありありと描く作品。写真や資料が豊富で、上下合わせて800ページ以上になるけれども、飽きのこない構成になっています。
その時代を生きた人と接することだってある、わずか70年前のことなのに、自分はあまりに無知であることを実感。
天皇の戦争責任回避、虚脱、カストリ文化、逆コース、皇位継承者、極東軍事裁判過程、日本国憲法制定過程、などなど...
読み終えて、近年の自民党政権の動向に危うさをより感じるとともに、良くも悪くも日本人の国民性は戦中・戦後からあまり変わっていないのだなと感じる次第です。 -
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終戦のエンペラー観る前に読み終えたかった一冊 orz
アメリカ人の日本史家が、敗戦直後の日本の世相を描いた本。
将軍様の国並みにやさぐれた状態から、占領軍を受け入れ復興に向けて進んでいく当時の雰囲気が分かりやすく書かれています。違う国の人に自分の国の文化を教えてもらうってのはなんだか不思議な気分 w 読んでて一番びっくりしたんは赤線が当時の国策やったってこと。米軍の男から一般の日本人女性を守るための防波堤な位置付け(酷い話やけど)らしく、戦争に負けるってのはそういうことなのね、と思いやした。
下巻は戦争犯罪人、東京裁判、戦後の思想統制の話なので、こっちも面白そうやね(-_-) -
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戦後の成長の根幹にある「日本モデル」とは、日本独自の精神的、民族的な土壌より遥かに大きく、日米交配の「非軍事化と民主主義化」という理想を実現するためのシステムに拠する。制度的には30年代初期から52年のGHP廃止に至るまでの権威主義的構造を基盤とし、精神的にはその過程で生じた二律背反的な矛盾、国としての誇りを求める心情を抱えながら。これらの戦後「日本モデル」は89年のベルリンの壁崩壊、バブル崩壊、天皇崩御に終わりを迎えたと著者は結論づける。
戦時中、戦後の言動によっていわゆる日本人的精神のようなものが幻想であったことが明白に描き出される。学校でこうした戦後史を学ばないからこそ、現代人もこうした -
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『敗北を抱きしめて』1945年の終戦以降数年間の日本について書かれた本です。非常にソソられる、いいタイトルだと思うのですが、どうでしょう。意訳気味の邦題なのかと思ったら、原題も"Embracing Defeat"。センスのよさが感じられます。
そのタイトルだけではなく、内容も非常に質の高いものです。すでにピューリツァ賞受賞含めて、内外で高い評価を受けていますが、傑作という前に大変な労作といえます。デリケートなテーマを扱うこともあり、バランスを取るために学者として多大な努力をしていることが随所に伺えます。
また筆致は時に詩的であり、一方適切な抑制も利いていて、扱うテー -
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下巻は、天皇制の維持とアメリカの企図、新憲法制定、GHQによる検閲、東京裁判、など、いまだに議論の多いテーマが取り上げられています。ある意味、下巻は上巻よりもさらに読み応えがあります。
最後にエピローグという章がありますが、これも白眉です。ここで、著者がこの本で言いたかった主要なテーマが、本のタイトルにもした一節を使って明示されています。少し長いですが、引用します。
「21世紀への戸口にある日本を理解するためには、日本という国家が(注:古来より)あいも変わらず連続している面を探すよりも、1920年代後半に始まり、1989年(注:昭和の終わりと冷戦の終わり)に実質的に終わったひとつの周期