## ウェブアンケート調査の要点
本書は、ウェブアンケート調査の設計と分析について、マクロミルで培われた実践的な方法論を解説している。特に強調されているのは、**行動データだけでは「なぜ(WHY)」がわからない**ため、アンケートによる**意識データ**が不可欠であるという点だ。行動データが「誰が、いつ、どこで、何を」といった事実を明らかにするのに対し、アンケートは「なぜ」という顧客の意識や動機を深く理解するために重要とされている。
---
## 調査の失敗を避けるためのポイント
著者は、調査を成功させるために、いくつかの注意点を挙げている。
* **目的を明確にする**: 目的が不明確なアンケートは、ありきたりな結果に終わりがちである。調査目的を考える際には、「何がわかっていて、何がわかっていないか」を徹底的に考えることが重要だ。
* **「ゴミを入れれば、ゴミが出てくる(GIGO)」の原則**: 不適切な質問や調査設計は、無価値なデータを生み出す。
* **「善意のウソ」と「忖度」**: 回答者は無意識に「善意のウソ」をついたり、インタビューの場で忖度したりすることがあるため、これらのバイアスを考慮に入れる必要がある。
* **「安定性」を重視する**: 完璧な「代表性」を持つ調査は難しいため、常に同じ偏り方をする「安定性」を確保することで、過去の調査や競合との比較が可能になると述べられている。
---
## 調査設計の具体的な手法
本書では、効果的なアンケート設計のための具体的なフレームワークや考え方が示されている。
* **仮説を立てる**: 調査の最初のステップとして、マーケティング課題を整理し、仮説を立てることが推奨されている。良い仮説とは、「ビジネスを良い方向に動かす」ものであり、具体的で、アクションにつながりやすいものである。クリステンセン教授の「理論の詰まった道具箱」の考え方や、アブダクションといった推論法も引用されている。
* **定性調査と定量調査の組み合わせ**: 仮説の発見にはデプスインタビューやグループインタビューなどの**定性調査**が有効であり、その仮説を量的に検証するために**定量調査**を実施するという、マーケティングリサーチの王道ステップが示されている。
* **質問票の工夫**: 回答者の負担を軽減するため、質問数を20問程度に抑え、時系列に沿って質問を配置する「アンカリング効果」を意識することが重要とされている。また、「極端の回避」などの心理的バイアスを考慮した質問の作り方も解説されている。
* **分析の進め方**: データの「クリーニング・集計加工」が効率的な分析には不可欠であり、「全体集計で全体傾向を俯瞰し、クロス集計で詳細に深掘りする」ことが分析の鉄則とされている。
この本は、アンケート調査を通じて顧客の「なぜ」を深く理解し、ビジネスの成果につなげるための実践的な知恵が詰まった一冊と言えるだろう。