ボエティウスのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ反逆罪の嫌疑をかけられた神学者・音楽理論家・数学者であったボエティウスが、死刑を待つ牢獄で書いたという「哲学の慰め」。悲しみと怒りに暮れるボエティウスと、哲学を擬人化した高貴な女性との対話という形の書物になっている。「なんで自分がこんな目に」と悲しみにさまよって哲学という「祖国」を離れてしまったボエティウスに、女性が哲学の見地からひとつひとつ物事の道理を解き明かしていくのである。
混乱と動揺の中で自分の陥った境遇を確認し、それらがどのように哲学的に肯定されうるのかを考え抜いていくその姿は死を眼前にしたボエティウスの思考をそのまま追っていくようで、凄みが感じられる。4章の最後には「一切の運命が全く善いものだということ」が確認され、哲学は「さらば行け、汝等勇敢なる者どもよ、この偉大な先例の気高き道へ!」と高らかに歌い上げるのだが、絶望から舞い上がった精神の高揚が美しく、尊い。
哲学とボエティウスが確認していく内容として、
・富や権力、名誉、快楽などでは幸福は得られない
・神=最高の善=一なるものが、すべてを支配し、悪をなすことはない
・運命によって善人が嫌な目にあい、悪人が良い目を見ているように見えても、神の摂理の中では巡り巡ってそれが善になるようになっている
・運命が肯定されると一見人間の自由意志がないように思えるが、自由意志と運命論は両立する
などがあり、純粋に哲学的な内容も濃い。最後の5章は自由意志について論じられており、難しくてあまりついていけなかったのだが、現代の決定論・両立論の議論にも通じるところがあって面白いと思った。また読み返したい。運命を恨む気分の時とかに(笑)。