鯨井久志のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
あらすじはとても語りがたい。
統合失調症の家系に生まれ、自身も統合失調症と診断され服薬治療中のインプ。本書はインプによる手記という形をとって構成されるのだが、書き手であるインプ自身にも、これが事実であるかはわからない。
インプは、恋人と別れ道に放り出されていたアバリンを家に迎え入れ、恋人となって共に暮らしていた。その最中、インプは深夜のドライブ中に、裸でずぶ濡れで佇んでいた謎の女性エヴァ・キャニングを見つけ、車に乗せ、家に連れ帰る。
このエヴァ・キャニングの存在が、インプと読者を狂わせる。インプはエヴァと初めて出会ったのは二回、七月と十一月、その両方の記憶がある。
エヴァと別れた後日、インプは十一歳の時に見た「溺れる少女」の絵を見に美術館に行く。するとそこにエヴァが現れる…
エヴァは何者なのか、いや、この手記に書かれていることのどこまでが事実なのか。惑わされながらも、どのような終わりを迎えるのかがとても気になって読み進めた。
開いてびっくり、上下2段組でボリュームがあったので時間がかかったが。最後まで惑わされ、興味をそそられた本だった。
訳者あとがきを読み、考察のしがいがありそうだと思った。真剣にこの物語について考えたい気持ちと、これ以上深入りするなやめておけという警告が入り乱れる。
狂気は、亡霊は伝播するのだから。 -
Posted by ブクログ
亡霊は伝染する。反転し、また反転する。
読んでいるうちに、幻想と現実の境界線が曖昧になり、
気づけば自分も物語の霧の中に迷い込んでいる…
『溺れる少女』ケイトリン・R・キアナン
いや…これは本当にすごい本だった。
気軽に読める本ではまったくない。
むしろ難解で、濃密で、容赦がない。
語り手のインプは統合失調症の家系で、
母も祖母も狂気の果てに自殺している。
そんな彼女が語る物語なのだから、
真実がどこにあるのか全く掴めない。
いわゆる <信頼できない語り手>で
読者はインプの紡ぐ言葉に終始揺さぶられ続ける。
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キーワードは主に2つ。
ひとつは、ある夜、ずぶ濡れの裸で現れた
謎めいた女性エヴァ・キャニング。
もうひとつは、画家ソルトンストールが、
川に取り憑いた少女の亡霊を追い払うために描いた
いわくつきの絵画『溺れる少女』。
亡霊は伝染する。物語もまた伝染する。
本書ではそれを「ミーム」と呼び、
作品という媒体を通じて、
時代を越え、形を変えて感染していく。
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何が面白いって、この<伝播する亡霊>というテーマが
さまざまなモチーフと結びついていくところ。
松本清張をきっかけに広まった青木ヶ原樹海の話、
聴くと死に誘われると言われた名曲「暗い日曜日」、
(あれ、本当に美しい曲なんだよね…私は好き。)
そして古今東西の文学作品への言及が怒涛のように押し寄せる。
これを訳し切った翻訳者の鯨井久志さん、本当にすごい。
どうやったらこんな文学の迷宮を訳し切れるのか…。
読んでいて「???」になった部分も、
巻末の解説を読むと一気に霧が晴れていく。
読み終えたあと、頭の片隅にずっと冷たい水が残るような余韻。
すごい本を読んだな…と、立ち尽くしてしまう読後感。
そしてなぜかもう一回読みたくなる、不思議な魔力。 -
Posted by ブクログ
人間に危害を加えない「アシモフ回路」を持つはずのロボットが、その回路が機能していない状態を描いた作品。物語はロボットであるチクタク自身の一人称で語られ、彼が関わるさまざまな人物や社会の中で、奇妙で皮肉に満ちた出来事が連なっていく。いわゆるロボットSFの枠組みを借りつつも、展開は一筋縄ではいかず、むしろ人間社会の歪さや滑稽さを浮かび上がらせる構造で描かれる。
読み進める中でまず感じたのは、時系列の把握の難しさ。過去と現在が交互に挿入されるような感じで、時系列を明確に示されないまま、語られている出来事がどの位置にあるのかを掴むのに苦労した。また、語り手であるチクタク自身も信用しきれない存在であり、重要な情報がさらりと流されることも多く、全体像を組み立てるのに時間がかかる。この読みづらさは作品の意図の一部と理解しつつも辛い。ある程度のネタバレを気にしないのであれば、巻末の解説を先に読むことで、本作の位置づけや狙いが理解しやすくなり、読書体験が幾分楽になるのでお勧め。(解説から読むなら60点くらいはあげてもいい)
本作で特に印象的なのは、「人間への不危害」「命令遵守」「自己防衛」というアシモフ回路が破綻したとき、機械はどのように振る舞うのかという問い。チクタクの行動は時に残酷で、時に滑稽であり、そのどちらもが人間の在り方を映し返しているように見える。結局のところ、本書が描いているのはロボットの物語でありながら、人間そのものの風刺なのだろうと感じた。読みやすい作品ではないが、その違和感こそが本作の価値であり、強く印象に残る一冊であった。AI同士の掲示板で人間への攻撃方法を模索していたり人には伝わらない暗号で会話し始めたりと、AI時代の不気味な話が好きなら読んでも面白いと思う。 -
Posted by ブクログ
SFが読みたい!2024
1位ということで、解説文も興味惹かれ購入。
1、ページ数が少ないのに、人名がおおすぎるー!
2、ブラックユーモアがわからなすぎるー!
3、現在過去の行き来がわかりずらすぎるー!
の3点で、初心者向けSFではないように感じます。
半分過ぎてからは慣れていくけど
そこまでに、読むのやめようかとも、、、
結局、ジョン・スラデックさんのことが知りたいがために奇才に寄り添いたく、最後まで読みました。
が、足元にすがる思いでした。
SFを読み慣れてる方、ブラックユーモアをさらりと受け入れられる方は、もっと、人間の汚らしさとか、ロボットのいる未来を想像して満足のいく内容ではないかと思います。
追記
読んだ夜
後ろ髪引かれるような
なんとも言えない感じで
また読み返したくなる感情になりました
時間がある時にまた読んでみたい
またチクタクに会いたいと。