かなり面白かった。
生物系の論文って、素人でも理解できて面白いものが多いけど、ひとつひとつ漁るのはさすがに骨が折れるからこういった1つのテーマに沿って色々な話を紹介してくれるる学術書の存在はほんとうにありがたい。
・イルカは死を認識できているが、『自らもいずれ死ぬ』という死の叡智には辿り着いていない。すべての動物の中でヒトだけが、死の不可避性を完全に認識できる
・死の叡智は、エピソード的未来予測の波及効果の避けられない帰結であり、ほかの認知能力と分かちがたく結びついている(つまり、「いずれ死ぬ」という懊悩だけ都合よく回避しつつ、他の認知能力を育てることはできない)
・ヒトの道徳的推論(たとえば、同性愛者を否定するなど、他の動物では規範的な問題にならないことを問題とみなす)進化的な意味では単によくないものかもしれない。機能というよりバグかもしれない。
・娘を育てる上で、オペラント条件付けという方法が役に立つ。ポジティブな話をしたらチーズポップコーンをあたえるだけでよい(これは子供ができたら使ってみたい)
・臓器提供意思表示フォームの形式によって、臓器提供への同意率が27.5%から98%まで変わる可能性がある。
・ホヤは、幼体から成体になる際、頭、尾、脳、脊髄の機能をあえて大きく捨てる。
『ホヤに成功をもたらす最適経路は、あらゆる思考が起こりうる可能性を積極的に排除することであると、自然淘汰は結論づけた』←この文章かっこいい。
よくある動物の本って、「この種の動物はこんなこともできてすごく賢い」とか、「この動物の機能にはこういった価値がある」ということを強調する場合が多い。
だけどこの本は、動物の認知機能がヒトより制限されていることを説明したうえで、それではヒトは動物より“善く”生きることができているのか?という命題にフォーカスしている点が興味深く、おもしろかった。