熱帯の高原の湿り気と肌寒さが一体になったような雰囲気の文章が心地よく翻訳であることを感じさせない。まさに読書の楽しみ。
時間が行き来して戸惑いながらも読み進めると登場人物たちが生きることで失ったもの、無理やり失わされたものが浮き上がってくる。日本人の読者として読むのが辛い部分も多いし、入れ墨のくだり
...続きを読むはちょっと虚構がすぎるかなとも感じるけど、登場人物皆が少しづつ秘密を抱えて生きているのも事実。その記憶もいつかは失われていくけどこの世界は残り続ける。
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わたしたち人間もまた彼ら(蝙蝠)と同じだろうか?発した言葉と言葉の合間に横たわる沈黙の意味をくみ取ることで人生の進路を定め、記憶の反響を確かめながら今の立ち位置を知り、取り巻く世界の位置付けをしているのだろうか。