三須祐介のレビュー一覧

  • 亡霊の地
    どこから感想を書けばいいかわからないくらい強烈な一作だった。アジアを舞台にしたマルケス的マジックリアリズム小説であり、主人公が一度は捨てた故郷に戻る帰郷小説であり、台湾の政治と社会の暗部を描いた社会派小説でもある。今までの人生で、こんな小説は読んだことがない。
    この小説では、人間も亡霊も一緒になって...続きを読む
  • 亡霊の地
    ちょっとこれはヤバいやつを読んでしまったのかもしれない。台湾出身の作者の描く、日本で言えば恐らく昭和後半から現代に至る(と思われる)台湾のとある地方における五女二男の子供とその父親、母親の“家族”とその周囲の人々による数十頁のモノローグが積み重なっていく形式で物語は進んでいく。
    まずとにかく誰一人と...続きを読む
  • 亡霊の地
    陳家七姉弟の今。
    それぞれにそれぞれの問題を抱え、そこに至る過去は腹をわって語りきれず、互いを羨み、妬み、それでいて実は相手への責任を感じながら、言葉にできない幸せを望む。

    家族って切っても切れず、嫌い!と言いながらも手をさしのべあってしまうよな。

    ピーピー口喧嘩を始めた姉妹をみて、
    「泣かない...続きを読む
  • 亡霊の地
    台湾の青年がドイツで殺人の刑期を終えて、故郷の村に帰ってくる所から物語は始まる。折しも中元節で死者の霊が帰ってくる、そこから生者や死者の語りが始まる。それぞれの語りの中から貧困、DV、あらゆる差別等が浮き彫りになる。超自然の手法で、青年の家族の歴史、日本統治やドイツの非人間的な歴史が明るみにでる。凄...続きを読む